実施 2025.01 ・ 更新 2026.08.13
カプコン、数十万件に及ぶゲーム開発のアイデア出しを生成AIで自動化する試験運用
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 企画のアイデア出しに時間を取られている
- 案の数をそろえるだけで手一杯
- 文章だけでは制作側にイメージが伝わらない
どのようなAIの取り組み?
テキストや画像を含む設定資料を生成AIに読み込ませ、数十万件規模のアイデア出しを自動化する仕組みを試験運用しているAI取り組み
業種
ゲームソフト開発(メディア・コンテンツ)
取り組み領域
ゲーム開発/設定資料からのアイデア出し
使ったAI
マルチモーダル生成AI(Gemini、Imagen 2 / Vertex AI)
主な成果
アイデア出しコストの大幅低減を試算で見込む(試験運用中)
家庭用ゲームソフトを手がけるカプコンが、ゲームの世界観を作り込む工程で必要になるアイデア出しを生成AIに任せる仕組みを、社内で組み上げました。テキストや画像、表が混在するゲームの設定資料を、複数の形式を同時に扱えるマルチモーダルな生成AIに読み込ませ、必要なアイデアを文章と画像の両方で自動出力させる構成です。実行基盤にはGoogle CloudのVertex AIを採用し、テキスト生成、画像生成、そのためのプロンプト作成、出力されたアイデアが要件に合っているかの評価までを一つの枠組みで扱っています。要件を満たさない出力に対しては、修正プロンプトを自動で作り直して出し直させる仕組みも組み込まれました。開発は担当者ひとりで着手され、1か月弱で性能評価ができる段階に到達。現在は試験運用の段階にあり、現場のメンバーが使いやすいインターフェースの開発が進んでいます。
出典:株式会社カプコン の導入事例 | Google Cloud 発行元:Google Cloud
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
ゲーム1タイトルの開発にかかる費用と工数は増え続けており、ゲームメーカーに共通する悩みになっています。中でも手間と時間が集中していたのが、ゲーム空間に置かれる小道具のような「オブジェクト」のアイデア出しでした。現実の商品をそのまま使うわけにはいかないため、形状もメーカーのロゴも自分たちで考えて作り込む必要があり、対象は1タイトルあたり数千から万単位。比較検討のために複数案を用意するため、使われないものも含めれば数十万件のアイデアが必要になります。しかも各アイデアには説明のテキストだけでなく、アートディレクターやアーティストに誤解なくイメージを伝えるための図版も欠かせませんでした。
編集部の見立てでは、ここでの負担の本質は「良い案を思いつくこと」ではなく、採用されないと分かっている案まで含めて、他人に伝わる形に整え続けなければならない点にありました。大半は捨てられる前提の案であるにもかかわらず、一件ごとに文章と図版という仕上げを求められる。創造そのものの難しさというより、伝達にかかるコストの総量が現場を圧迫していたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
出力されたアイデアを生成AI自身に評価させ、要件を満たさない場合には修正プロンプトを自動で作り直して出し直させる。この折り返しを最初から組み込んだ設計が、この仕組みの中核です。大量に出せるだけの仕組みであれば、玉石混交の出力を選り分けるという新しい作業が人間の側に発生します。品質の足切りを自動化したことで、人力のトライ&エラーを挟まずに、水準を満たした案だけが手元に届く流れが成り立ちました。
テキスト出力、画像出力、プロンプト生成、要件評価という性格の異なる処理を、Vertex AIという一つの枠組みに寄せた構成も、立ち上げを速めた要因といえます。管理すべき対象が散らばらないぶん、ひとりで着手した開発でも十分に手が回りました。応答速度も選定の判断材料に入っており、設定資料の解析結果をプロンプトに渡してから出力が返るまでが他社サービスでは数分、Geminiでは数秒という差は、スピードが重視されるゲーム開発の性質に噛み合っています。高精度なGemini Proと高速なGemini Flashを用途で使い分ける設計も、この基盤選択と地続きの判断でしょう。
生成されたアイデアを、そのまま次の入力資料として使い回す発想も見逃せません。映画のポスター案を出力させたうえで、その世界観を引き継いだステッカーを提案させる。お菓子のアイデアを起点に、そのパッケージのデザインへ降りていく。一度の生成で完成形を狙うのではなく、粗い案を素材に変換しながら段階的に具体化していく組み立て方が、世界観の一貫性を問われる制作物と相性よく働いたと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現在は試験運用の段階ですが、大量かつ多様なアイデアを高速に出力できるようになった点に手応えが得られており、試用した開発メンバーからの評価も良好です。生成AIとブレインストーミングをするような感覚で作業が進むため、これまで複数名で回していたアイデア出しと議論のサイクルを個人で回せるようになった、という変化も生まれています。コスト面は、すべて人力で行っていた頃と比べて大幅に低減できる見込みという試算の段階にあり、そこで生まれた余裕は作品の品質向上に振り向けられる想定です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、案を大量に出して大半を捨てることが前提になっている業務です。デザインのたたき台、商品のネーミング、売り場の演出案のように、数をそろえること自体が負担になっている仕事であれば、同じ組み立てが効く余地があります。鍵になるのは、出力が使えるかどうかを機械的に判定する条件を言葉にできるかどうか。そこが曖昧なままだと、生成量が増えるほど人が選別に追われる状態になりかねません。
一方で、この事例が成立している前提には、読み込ませるだけの設定資料が社内に蓄積されているという条件があります。判断のよりどころが個人の頭の中にしか存在しない場合や、そもそも案を早い段階で一つに絞り、それを深く練り上げるタイプの仕事では、この進め方は噛み合いにくいでしょう。試すなら、手持ちの資料を1本だけAIに読ませて案を10個出させ、そのうち「これは使える」と言えたものが何個あったかを数えてみる。その歩留まりが、評価と選別のどこまでを自動化に任せられるかの目安になります。
この事例は2025年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:経営・企画
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社カプコン
1983 年の創業以来、ゲーム エンターテインメント分野において数多くのヒット商品を創出するリーディング カンパニー。『バイオハザード』『モンスターハンター』『ストリートファイター』『ロックマン』『デビル メイ クライ』などのシリーズ タイトルを保有。本社は大阪にあり、米国、イギリス、ドイツ、フランス、香港、台湾およびシンガポールに海外子会社がある。内製ゲームエンジン「RE ENGINE」の開発など生産性向上に取り組む。
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
