実施 2025.06 ・ 更新 2026.08.13
AI需要予測で発注を自動化、食品スーパー49店舗の残業を7.9%削減
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 発注がベテランの勘に頼りきり
- 欠品が怖くて多めに仕入れてしまう
- 店舗ごとに売場が違い標準化できない
どのようなAIの取り組み?
店舗ごとに異なる売場条件に合わせてAIが需要を予測し、発注業務の標準化と残業時間の削減につなげたAI取り組み
業種
食品スーパーマーケット(小売・流通)
取り組み領域
店舗の発注・在庫管理
使ったAI
需要予測型自動発注システム(機械学習)
主な成果
全49店舗で残業時間を7.9%削減、人時生産性は8.4%向上
福岡県を中心に食品スーパー「ハローデイ」「ボンラパス」を展開するハローデイが、日立製作所および日立ソリューションズ西日本と協創し、AIを使った需要予測型の自動発注システムを全49店舗・全フロアに導入しました。対象は日配品やグロサリー、冷凍食品など1店舗平均7,000アイテムで、過去の販売実績に天候や曜日、イベントを掛け合わせて店舗ごとの需要を予測し、発注数を提案します。2023年に検討を始め、2024年1月の5店舗でのパイロット導入と検証を経て、2025年6月に全店で稼働を開始。日立が導入設計と運用検証、全体マネジメントを担い、日立ソリューションズ西日本が現地の導入サポートとインターフェイス構築を受け持ちました。属人的になりがちだった発注業務が標準化され、労働時間の削減にもつながっています。
出典:ハローデイと日立が協創、AI活用でスーパー店舗の残業時間約1割削減して働き方改革推進:日立 発行元:株式会社日立製作所
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
背景にあるのは、少子高齢化による生産年齢人口の減少で小売業界全体が直面している労働力不足です。ハローデイでも店舗人員の不足に加え、人財の育成、店舗の生産性向上、物流センターの業務効率といった課題が並んでいました。
編集部の見立てでは、ここで解くべき本質は「人手が足りない」という数の問題ではなく、発注の判断が担当者個人の経験の中に閉じ込められていた点にあります。ハローデイは「アミューズメントフードホール」という独自のコンセプトを掲げ、売場のレイアウトも商品配置も陳列方法も店舗ごとに変えています。売場が均一でないということは、何をいくつ頼めば適正かという答えも店舗ごとに違うということ。その判断を支える共通の基準が数値として存在しなければ、経験の浅い担当者ほど欠品を恐れて多めに頼み、在庫が膨らみます。導入後に発注担当者から出た「心配性発注(過剰発注)が減った」という言葉は、この構造を裏側から言い当てているように見えます。
どうやって、うまくいったのか
店舗ごとに発注ロジックを個別調整できる柔軟性を土台に据えた設計が、この取り組みの起点になっています。売場が均一であることを前提にした一般的な発注システムでは、顧客の個別状況に合わせてロジックを修正・構築することが難しく、店舗ごとに陳列も配置も異なるハローデイの売場には対応が困難でした。売場スペースや商品配置の違いに加え、取引先ごとに異なる注文ロットや納品条件まで条件として取り込み、ロジックを自動調整する方針は、店舗の個性を標準化して消す対象ではなく、計算の前提として受け入れた判断だと考えられます。
予測の精度を運用の中で育て続ける仕組みも、効き方としては大きいのではないでしょうか。AIは過去の販売実績だけでなく、天候・曜日・イベントという売れ行きを左右する外部要因を学習して店舗ごとの需要を予測します。そのうえで実際の販売データを全店舗のデータベースへ蓄積し、次回の需要予測に戻す。毎日更新されるデータで予測と提案を繰り返す循環があるため、稼働開始時点の精度が到達点として固定されずに済んでいます。
慎重に段階を踏んだ進め方も見逃せません。2023年の検討開始から、2024年1月の5店舗でのパイロット導入、実店舗での検証とアジャイル開発を経て、全店稼働は2025年6月でした。売場が店舗ごとに違う以上、机上の要件定義だけでロジックを固めるのは難しく、実店舗で動かしながら直す以外に確かめようがなかったと見るのが自然です。加えて、日立が導入設計・運用検証・全体マネジメントを引き受け、日立ソリューションズ西日本が現地での導入サポートとインターフェイス構築を担うという役割の分け方は、全社共通の設計と各店舗の事情への対応という性質の違う仕事を、それぞれの近さに応じて配置したものと読み取れます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
全49店舗・全フロアで、従業員の1カ月間の総労働時間は前年比6,837時間減り、残業時間は7.9%削減されました(2025年8月と2024年8月の単月比較)。労働時間に対する粗利比率である人時生産性は8.4%向上し、発注提案数どおりに発注数が確定した比率を示す自動発注率は90%以上に達しています。欠品率も6.99%減少し、発注ミスの防止や販売機会損失の削減にも寄与しました。発注担当者からは「心配性発注(過剰発注)が減った」というコメントが出ており、心理的負担の軽減も確認されています。
うちでも使える?
拠点や売場ごとに条件が異なり、かつ売れ行きが天候や曜日に左右される発注・補充の業務であれば、この手法とは相性がよさそうです。判断の根拠が担当者の頭の中にしかなく、引き継ぎのたびに精度が落ちる業務なら、なおさら検討する価値があります。一方で、条件が揃わない場面もあります。この仕組みは毎日の販売実績が確実に蓄積されることを前提としており、取引先ごとの注文ロットや納品条件が整理されていなければ、ロジックを組む手前の条件整理に相応の時間がかかります。対象が日配品・グロサリー・冷凍食品である点も見落とせません。1店舗平均7,000アイテムという品目数だからこそ自動化の効果が大きいのであって、担当者が一目で在庫を見渡せる品目数であれば、投資に見合う差は生まれにくいでしょう。
試すなら、5店舗から始めたパイロットの進め方が参考になります。1拠点・1カテゴリに絞り、担当者が実際に発注した数と、過去の実績から機械的に計算した数のズレを数週間分だけ並べてみる。そのズレの理由を担当者が言葉にできるなら、その説明こそが自動化するロジックの原型です。
この事例は2025年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立製作所
IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を展開。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターと戦略SIBビジネスユニットの体制でグローバルに事業を行い、Lumadaをコアにデータから価値を創出して顧客と社会の課題を解決する。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社618社。
株式会社ハローデイ
出典・参考情報
ハローデイと日立が協創、AI活用でスーパー店舗の残業時間約1割削減して働き方改革推進:日立
発行元:株式会社日立製作所
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