実施 2024.03 ・ 更新 2026.08.13
TBSテレビが生成AIで映像の内容説明を自動生成、作業時間を約3分の1に
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 映像や音声の中身を手作業で文字にしている
- 撮った素材が必要なときに探し出せない
- 説明文の書き方が担当者ごとにバラバラ
どのようなAIの取り組み?
生成AIで映像素材の内容説明(メタデータ)を自動生成し、付与作業の所要時間を約3分の1に短縮したAI取り組み
業種
テレビ放送(メディア・エンターテインメント)
取り組み領域
映像素材の管理・メタデータ付与
使ったAI
Gemini 1.5 Pro / 2.0 Flash(生成AIによるマルチモーダル映像解析)
主な成果
説明文の作成時間が10分の1、工程全体でも約3分の1に短縮
TBSテレビは、撮影した映像素材や放送後の番組に内容説明のテキスト(メタデータ)を付ける作業を、Google Cloudの生成AI「Gemini 1.5 Pro」で自動化する仕組みを自社で開発しました。この作業はこれまで完全に人手で行われ、各部門を合わせて100名近い人員が投入されてきた領域です。同社はGoogle Cloud上に映像素材を統合管理・編集する「ファイルベース」を構築しており、その延長として2024年3月からGoogle Cloudのチームとともに検証を開始。1つの映像を映像のみ・文字情報のみ・音声のみに分けて解析し、最後に統合する方式にたどり着き、まず報道のカテゴリーで精度の高い自動生成を成立させました。2025年3月にはGemini 2.0 Flashへの更新も行われています。
出典:株式会社 TBSテレビ の導入事例 | Google Cloud 発行元:Google Cloud
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
映像素材の説明文づくりは、専従のスタッフが一本ずつ目で見てテキストを打ち込む仕事でした。3分間の素材でも基礎的な作業に約40分、別のスタッフによるチェックに15分と、1時間近くを要します。各部門で100名近い人員を投入してもなお作業の遅れは慢性化し、収録から2〜3週間かかるケースも生じていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの中心にあったのは作業量そのものではなく、素材が最も必要とされる時期と、それが検索できるようになる時期のずれです。ニュース映像のニーズが高いのは撮影直後から1週間程度で、そこに間に合わなければ、素材はあるのに使えないという状態が生まれます。人を増やして処理速度を上げても、映像が増え続ける限り同じ構図が繰り返される。人海戦術では届かない性質の課題だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
1つの映像を映像のみ、文字情報のみ、音声のみに分けて解析し、最終的に統合するという切り分けが、この手法の中核にあります。検証段階では、テロップや音声に引きずられて、映像そのものとは異なる解釈が出力される現象が確認されました。情報を多く与えるほど解析が正確になるとは限らないという発見に対して、入力の種類を混ぜないという設計で応じたことになります。生成AIに精通したGoogle Cloudのメンバーが伴走し、議論と試行錯誤を重ねた末に定まった方式である点も、この判断の性格をよく表しています。
自社に蓄積された過去の記述を、AIに真似させる手本として使った点も見逃せません。過去の画像とメタデータを読み込ませて書き方を学習させるFew-Shot Learning(いくつかの実例を示して出力の型をまねさせる手法)により、インタビュー映像を「男性が話している」ではなく「男性へのインタビュー」と表現させる方向へ寄せています。Gemini 1.5 Proが扱える200万トークンという長い入力枠が、過去の膨大な蓄積を一度に渡す前提として機能しました。ここで効いているのは汎用的な説明能力ではなく、その放送局が長年書いてきた記述の型を再現させるという狙いの定め方です。
出力の言葉づかいを、現場の検索行動から逆算して設計している点も特徴的です。番組制作スタッフが「◯◯党本部外観」といった語で素材を探す以上、生成される説明文も同じ単語でなければ検索に引っかからないため、いつ、どこで、誰が、何をしたかという基礎情報を明記し、常に同じ形式で出力される工夫が組み込まれました。適用範囲をまず報道カテゴリーに絞ったことも、評価軸を定めやすくする現実的な進め方だったと言えます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
説明文の作成時間は10分の1にまで縮み、チェックは引き続き人が担うものの、工程全体では約3分の1に短縮されました。収録後に2〜3週間かかっていた作業は5日ほどまで縮められる見込みが立った段階です。手作業では難しかったタイムスタンプの自動付与や、記述内容の均質化も実現しています。2025年3月のGemini 2.0 Flashへの更新も滞りなく進み、運用は継続中。担当者は、経験豊富なスタッフがよりクリエイティブな仕事に携われること、そして埋もれた過去の映像資産を発掘できるようになることに期待を寄せています。
うちでも使える?
参考になりやすいのは、素材そのものは大量にあるのに、中身を説明するテキストがないために探せなくなっている業務です。会議の録画、点検時の撮影記録、講習の映像など、人が見て要約するしかなかった資料を抱える組織なら、考え方はそのまま応用できます。特に、過去に人が書いた説明文が残っていること、そして探す側の言葉づかいがある程度決まっていることの2つが揃っていれば、出力の型を寄せる余地が大きくなります。
一方で、そのまま持ち込みにくい条件もあります。この事例でもチェック工程は人が担い続けており、出力を無検証で流せるわけではありません。ストーリーの流れが読み取りにくい定点的な映像や、画面の文字と実際の中身が食い違う素材では品質が安定しにくく、報道のように解析しやすい領域から着手した判断はそこに関わっています。扱う映像に社外に出せない情報が含まれる場合は、保管と解析の環境要件を先に固める必要もあるでしょう。
まず試すなら、過去に人が書いた説明文を数十件そろえ、同じ素材をAIにも説明させて、単語の選び方がどれだけずれるかを並べて見比べてみてはいかがでしょうか。
この事例は2024年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社TBSテレビ
1951年に創立され、1955年にテレビ開局。1959年に日本で初めて明確に形成されたテレビ・ネットワークJNNのキー局を務める。視聴率調査開始以来、ほぼ20年にわたり年間平均視聴率首位の座を維持した。2000年前後からデジタル技術開発、他メディア・多チャンネル化を推進。現在はコンテンツ価値の最大化を目指す拡張戦略「EDGE(Expand Digital Global Experience)」を掲げ、幅広い分野のコンテンツを制作し、グローバルコンテンツブランドへの成長を目指している。業種はメディア、エンターテイメント。
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