実施 2025.05 ・ 更新 2026.08.13
都立学校256校・16万人が使う生成AI、東京都教育委員会が築いた専用環境
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 組織全体で安全に使えるAI環境がない
- 情報漏えいが心配でAIを解禁できない
- うまい使い方が一部の人で止まっている
どのようなAIの取り組み?
Azure OpenAI を基盤に、全都立学校256校・約16万人が使う専用の生成AI環境を構築したAI取り組み
業種
教育行政・公立学校(教育サービス)
取り組み領域
学校の授業/教職員の校務
使ったAI
Azure OpenAI による生成AIサービス(都立AI)
主な成果
全都立学校256校・約16万人が使う環境として展開
東京都教育委員会は、全都立学校256校の児童・生徒・教職員、約16万人が利用する「都立学校向け生成AI利用サービス(都立AI)」を整備しました。基盤となったのは Azure OpenAI で、一般公開入札を経てコニカミノルタジャパン株式会社の提案が選ばれています。東京都専用のテナント上に環境を置き、不適切な言葉には応じないフィルター、児童・生徒が入力した内容を再学習させない保護、教科書など都が管理する信頼できるデータを参照・追加できる仕組みを備えました。あわせて、教職員が自分で考えたプロンプトを目的別にポータルへ投稿し、共有できる機能も実装しています。2023年9月に始めた「生成AI研究校事業」の蓄積を土台に、2025年5月から全都立学校で本格的な活用が始まりました。
出典:東京都教育委員会は、新たな教育の実践と校務の効率化に向けて都立学校 16 万人が活用する安心・安全な「都立 AI 」を Azure OpenAI で構築 | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
東京都教育委員会が生成AIの検討に着手したのは、GPT-3.5 が無料公開された2022年11月です。翌2023年6月には、夏休みの課題に生成AIの回答をそのまま提出しないよう注意喚起する資料を全都立学校へ通知しており、これは文部科学省がガイドラインを策定するより1か月早い動きでした。
ここから読み取れる困りごとは、「生成AIを使うか使わないか」という選択の問題ではなかったと考えられます。児童・生徒は、学校が方針を決める前に学校の外で生成AIに触れてしまう。だとすれば、教育現場が抱えていた本当の課題は、危ないから遠ざけることでも野放しにすることでもなく、大人が説明できる形で使わせられる場所を自前で持てるかどうかだったのではないでしょうか。256校・約16万人という規模、閉域ネットワークの端末約1,300台とBYODによる接続端末約25万台という条件が、その難しさをそのまま物語っています。
どうやって、うまくいったのか
安全性の制御点を既製サービス側ではなく自分たちの手元に置いた設計が、この規模での全面展開を成り立たせた要因と考えられます。東京都専用のテナント上に生成AI環境を構築したうえで、児童・生徒が不適切な言葉を引き出そうとしても応じないフィルターを掛け、授業中に入力されたプロンプトや学習内容を再学習させないよう保護し、教科書のような信頼できるデータを都の手で追加・管理できるようにしています。「ありものではない、都独自の生成AI体験の設計」という要件が最初に掲げられていた点が象徴的で、汎用サービスをそのまま配るのではなく、誰が何を制御できるかを先に決めてから配る順序を選んだことになります。
いきなり全校展開へ進まず、2023年9月に9校、翌年度に11校を加えた20校で1年半かけて授業での使い方を試した進め方も、見過ごせない要素です。この期間に積み上がった実践は35件(2025年6月時点)の事例として公開され、さらに「都立学校生成AI利活用ガイドラインVer.1.0」「生成AI研究校初回授業モデル指導案」「生成AIについて学ぼう!」という3種の資料へ落とし込まれました。試した結果を、次に使う人が読める形の教材とルールに変換する工程を挟んだからこそ、機能説明2回と初級・上級それぞれ3回の研修という限られた回数でも、現場に渡せる状態がつくれたと見ています。
定着の条件を「教職員にとっての利便性」に求め、それを機能として実装した判断も効いています。都の教育に特化したプロンプトを校務効率化や各教科の授業用といった目的別に分類してポータルへ投稿でき、ダウンロードした側は自分用に改良し、改良版をまた投稿できる。使い方の巧拙を研修だけで埋めようとせず、うまくいったプロンプトが人から人へ流れる経路をサービスの中に用意した点は、ガイドライン配布だけでは十分ではないという現場認識と一貫しています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
都立AIは2025年5月に全都立学校へ展開され、256校の児童・生徒・教職員 約16万人が利用できる環境として本格活用が始まっています。この取り組みは、都庁DXアワード2025「サービス部門」で知事賞を受賞しました。今後については、Azure OpenAI の拡張性を活かして年度途中でも最新のGPTモデルへ切り替えていくこと、現場の教員の声を踏まえた機能追加・改善、2024年から一部の都立校で運用されている「東京都教育ダッシュボード」とのデータ連携が、いずれも計画・検討の段階として示されています。
うちでも使える?
この事例の応用がききやすいのは、利用者の数が多く、しかも入力される内容に配慮が必要な組織です。専用のテナントに環境を置き、参照させる資料と応答の制限を自分たちで管理するという構えは、規模の大小にかかわらず設計として真似できます。使う人の裾野が広く、AIに慣れた人と不慣れな人の差が大きい組織ほど、プロンプトを共有して改良を回す仕組みの効き目も出やすいでしょう。
一方で、そのまま持ち込むのが難しい面もあります。都立AIは、教科書という参照してよい正解資料が明確に存在し、教科ごとに使い方の型をつくれる領域だからこそ、限られた研修回数で現場へ渡せた側面があります。参照させるべき資料が担当者ごとにばらばらで、何を正しい情報とするかの合意すらない業務では、環境を用意しただけでは同じようには進みません。予算の桁も、一般公開入札を経た都の規模と自社とでは当然異なります。
小さく試すなら、すでにAIを使い始めている数人に、実際に打ち込んだプロンプトを手直しせずそのまま提出してもらうところから。共有する価値があるのはどんな指示文なのかが、机上の議論より早く見えてくるはずです。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
コニカミノルタジャパン株式会社
東京都教育委員会の一般公開入札において、Azure OpenAI を活用した「都立学校向け生成 AI 利用サービス」の提案が総合的に最も高く評価され落札した事業者。
東京都教育委員会
出典・参考情報
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