実施 2025.05 ・ 更新 2026.08.13
東京都港区が全庁で生成AI活用、独自プロンプトとRAGで職員8割超が継続希望
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 資料の読み込みと要点整理に時間が消える
- 通知文書や議事録の処理が追いつかない
- セキュリティ要件が厳しくAIを試せない
どのようなAIの取り組み?
自治体向けの生成AIサービスに独自の指示文テンプレートとRAGを組み合わせ、全庁で文書作成や情報収集の効率化に取り組んだ事例
業種
地方自治体(公共・行政)
取り組み領域
全庁の文書作成・情報収集業務
使ったAI
exaBase 生成AI for 自治体(生成AI・RAG)
主な成果
職員アンケートで8割以上が継続利用を希望
東京都港区は2025年5月から、庁内の全部署で生成AIの活用を始めています。使われているのは株式会社Exa Enterprise AIが提供する自治体向けサービス「exaBase 生成AI for 自治体」で、自治体専用のネットワーク環境であるLGWANに対応している点が土台になっています。港区はこのサービスに、業務に合わせて用意した10種類以上の独自プロンプトテンプレート(AIへの指示文のひな形)を組み合わせ、さらに庁内の規定や各種資料をAIが検索して回答に使うRAGという仕組みも動かしています。実際の使い道は、会議議事録や国・東京都からの通知文書の要点整理、専門資料の概要作成、区の魅力発信に向けたキャッチコピー案づくり、イベントや地域活性化施策の企画アイデア出しなどです。提供元のExa Enterprise AIとグループ会社の株式会社エクサウィザーズは、サービス提供に加えて、港区の特性に応じた活用事例の創出支援も担っています。
出典:東京都港区が「exaBase 生成AI for 自治体」を全庁に導入 ~独自プロンプトテンプレートやRAGを活用し、自治体業務の質と効率の向上を目指す〜 - 株式会社エクサウィザーズ 発行元:株式会社エクサウィザーズ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
港区が生成AIに向かった出発点は、文章作成や情報収集といった定型業務にかかる時間でした。国や東京都から届く通知文書、会議の議事録、専門的な資料。読んで内容をつかみ、要点を整理する作業はどの部署でも日常的に発生します。区が掲げたのは、職員一人ひとりの生産性を高め、多様化する区民ニーズに迅速かつ的確に応えられる状態をつくることでした。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は仕事の絶対量ではなく、企画立案や区民サービスの検討に充てられるはずの時間が、読み込みと整理という前工程に先に吸い取られてしまう構造にあります。しかも自治体にはLGWANという閉じたネットワークの制約があり、民間で広く使われている生成AIサービスをそのまま持ち込むことはできません。使いたい理由がはっきりしていても入口が開かない、という状態が続いていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
10種類以上の独自プロンプトテンプレートを標準で使える形にした設計が、全庁展開の現実味を大きく引き上げたと考えられます。生成AIは指示文の書き方で出力の質が大きく変わりますが、その習熟を職員全員に求めれば、うまく使える人と使えない人の差がそのまま業務品質の差になります。あらかじめAIの専門家が作成したテンプレートを備えたうえで、港区の業務に合わせた独自版を用意するというやり方は、個人の慣れに依存しない出発点を配ったことに等しい。誰が触っても一定水準に届く入口を先に整える発想が効いています。
庁内の規定や各種資料をAIに参照させるRAGの組み方も、行政の文書仕事と相性のよい選択です。行政文書の要点整理では、一般的な知識ではなく庁内の根拠や過去の書き方に沿っているかどうかが問われます。PowerPoint、Word、PDF、CSV、txtという、実務でそのまま溜まっている形式を参照対象に含めた構成は、資料を作り直してから使い始めるという重い前提を置かずに済ませる工夫と読めます。
セキュリティを機能追加ではなく前提条件として先に満たした構成が、全庁という規模の合意を可能にしたのではないでしょうか。LGWAN対応、国内リージョンでのモデル利用、会話内容を学習に使わないオプトアウト設定、禁止ワード登録や機密情報ブロック、ログの蓄積とレポート。これらは職員の利便を直接高める機能ではありませんが、情報漏えいの懸念を理由に利用を止めない状態をつくります。加えて生産性向上の時間効果を画面上で確認できる仕組みは、効果があいまいなまま利用が細っていくことを防ぐ役割を果たします。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年5月に全庁での活用が始まり、直近の職員アンケートでは8割以上が生成AIの継続利用を希望しています。使われ方も、議事録や通知文書の要点整理、専門資料の概要作成から、区の魅力を伝えるキャッチコピー案、イベントや地域活性化施策の企画アイデア、業務プロセス改善の検討まで広がっています。削減時間などの数値は公表されていませんが、継続希望が8割を超えるという比率は、試用の段階を越えて日常業務の中に置かれ始めた手応えを示す指標として読めます。職員がより付加価値の高い企画立案や区民サービス向上に注力できる環境づくりは、現時点では目指す段階にあります。
うちでも使える?
応用しやすいのは、通知や依頼文の読み込み、議事録の整理、資料の概要作成といった文書仕事が部署をまたいで発生している組織です。手元の規定やマニュアルが電子ファイルとして残っているなら、RAGで参照させる下地はすでにあると考えてよいでしょう。外部サービスの利用に制約がある業種でも、閉じたネットワークや国内での処理に対応した選択肢が用意されている点は、判断材料になります。
一方で、参照させたい資料が紙のままだったり、同じ種類の文書でも部署ごとに様式や用語がばらばらな場合、RAGの回答は安定しません。判断の根拠が担当者の記憶の中にしかない業務も、テンプレート化の対象になりにくい領域です。全庁一律で配るより、文書の型が決まっている業務から順に広げるほうが現実的でしょう。
最初の一歩としては、自分の部署でよく書く依頼文や照会文を一つ選び、それをAIへの指示文の形に書き換えて同僚に回してみるところから。誰が使っても同じ結果になるかを確かめる作業が、テンプレートづくりの練習そのものになります。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社エクサウィザーズ
AIを利活用したサービス開発による産業革新と社会課題の解決を行う企業(証券コード4259)。グループ会社の株式会社Exa Enterprise AIが「exaBase 生成AI for 自治体」を提供している。
東京都港区
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
