実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.16
生成AIの擬似人格で1,000人分の調査を45分に、日本ハムの生活者分析
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- お客様の声を集めるのに時間がかかる
- 調査費用がかさんで何度も試せない
- 提案の根拠を短期間で用意したい
どのようなAIの取り組み?
自社が保有する約2万人分の生活者データを生成AIに読み込ませ、1,000人規模のアンケート調査を45分で実施できるようにしたAI取り組み
業種
食肉加工・食品製造(製造業)
取り組み領域
商品開発の生活者調査/提案業務
使ったAI
Azure OpenAI Service(GPT-4o mini)による生成AI
主な成果
1,000人分のアンケート調査を45分・100円強で実施
日本ハムは、大手コンビニチェーン向けのプライベートブランド商品を提案・開発する過程で、生活者の調査分析と仮説構築に多くの時間を割いてきました。ここに生成AIを組み込んだのが、2024年4月に始まった「GC(Generated-Customer、生成された顧客)分析」です。自社が持つ約2万人分の生活者プロファイリングデータから対象セグメントに該当する人を抜き出し、1人分のプロフィールとアンケート設問をセットにしてAzure OpenAI Service(GPT-4o mini)へ渡し、擬似人格として回答させる仕組みが組まれました。UIアプリはIT戦略部がPythonで内製してクライアントPC上で動かし、全社の生成AI環境を構築した株式会社システムサポートが、GC分析の開発でも技術支援に入っています。
出典:日本ハムが Azure OpenAI Service を活用し「生成された顧客」分析を実現、生活者 1,000 人へのアンケート調査がわずか 45 分で実施可能に | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
プライベートブランド商品の提案では、ターゲットとするセグメントごとに2〜3名へインタビューを行い、そこで得た意見を500〜1,000人規模のインターネット調査で検定する手順が踏まれてきました。この工程だけで半月から1か月、調査分析と仮説構築を合わせると1〜2か月というのが従来の姿です。
困っていたのは作業量そのものというより、深さと広さを同時に満たそうとすると必ず時間が膨らむ、調査設計の構造だったのではないでしょうか。1人を深く掘るN1分析は解像度が高い代わりに母数が足りず、母数を確保するネット調査は時間と費用がかさむ。この二者を直列につないでいる限り、得意先の商談スピードに調査が追いつく余地はありません。
どうやって、うまくいったのか
約2万人分、70〜80のデータ項目という自社の生活者プロファイリングデータを、集団の平均像に丸めずに1人分ずつ生成AIへ渡した設計が、この取り組みの土台になっています。セグメントに該当する生活者を抽出し、そのプロフィールと設問を一組にして投げ、返ってきた回答を積み上げてレポート化する流れです。個票を処理の単位に置いたことで、出力は「平均的な消費者像」ではなく、属性の異なる回答の束になります。既存のN1分析と地続きの形を選んだ判断だと考えられます。
回答のばらつきをあえて作りにいった点も見逃せません。出力の散らばり方を決めるTop PやTemperatureといったパラメーターを調整し、回答者の多様性を担保しています。生成AIの業務利用では出力を安定させる方向に寄せがちですが、生活者調査の再現という目的では、意見が割れること自体が情報です。用途から逆算してAIの振る舞いを決めた設計と言えます。
業務側と作り手の距離を詰めた進め方も、短期間で完成度を高めた要因でしょう。アプリを内製したことで提案現場の要望をIT戦略部がすぐ反映でき、自由記述と選択肢の両方で設問を入力できる画面、進捗率の表示、選択式回答や類似ニーズを集計するツールといった実務寄りの機能が積み上がっています。土台には、全社で使うMicrosoft 365のセキュリティ機能をそのまま生かせるAzure OpenAI Service上の生成AI環境があり、その構築を担った株式会社システムサポートが技術面を支えています。基盤をゼロから用意せず、既にある全社環境の上に業務専用のアプリだけを載せる切り分けが、改善サイクルを速く回せる条件になったのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
1,000人分のアンケート調査にかかる時間は45分、1回あたりの費用は100円強となり、得意先から依頼を受けた翌日に分析結果を提示できるようになりました。設問が煩雑でも途中離脱がなく、厳しめの回答も得られています。5,000人分のGC分析を用いた提案では「より客観的で説得性が高い」と得意先から評価され、商談化率も向上。2024年8月からの本格活用は複数の商談成立に寄与しており、今後はアプリのWeb化や、スーパー・外食業界への展開が視野に入っています。
うちでも使える?
応用できるかどうかを分けるのは、自社に顧客や利用者の属性データがどれだけ残っているかです。この手法の回答の質は、70〜80項目という入力の細かさに支えられています。名簿に氏名と購入履歴しかない状態で同じことを試しても、擬似人格の答えは誰にでも当てはまる平均的な内容に寄ってしまう可能性が高いでしょう。
一方で、生身の相手に会わなければ得られない情報もあります。日本ハムでも1人を対象にしたN1分析は継続されており、擬似人格による調査はそれを置き換えるのではなく、広さを足す役割に置かれています。表情や言いよどみから仮説を組み立てたい場面、実際に口にしたときの反応を確かめたい場面では、この手法だけで結論を出すのは難しいはずです。
試すなら、過去に実施した調査を1本選び、まったく同じ設問を擬似人格に答えさせて実際の回答と突き合わせるところから。どこがどうずれるかが見えれば、自社の業務でAIに任せられる範囲の見当がつきます。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本ハム株式会社
食の新たな価値を創造する企業。大手コンビニ チェーンなどに向けたプライベート ブランド商品の提案と開発も手掛ける。IT戦略部と加工事業本部 営業統括事業部 CVS開発営業部が連携し、生成 AI を活用した「GC (Generated-Customer) 分析」を内製で開発・活用している。
出典・参考情報
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