実施 2025.12 ・ 更新 2026.08.13
オルビスが需要予測の誤差を組織の学びに変える月次レビューの仕組み
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- SNSで急に売れて在庫が足りなくなる
- 需要予測が担当者の勘に頼りがち
- 外れた理由を振り返れていない
どのようなAIの取り組み?
需要予測の誤差を指標で可視化し、月次のレビュー会で組織の学びに変えていったSCM改善の取り組み
業種
化粧品ブランド(小売・流通・EC)
取り組み領域
SCM/需要予測・在庫適正化
使ったAI
予測精度分析(MAPE・トラッキングシグナル)/AI分析基盤の活用検討
主な成果
誤差要因の可視化により生産調整・販促修正など具体的な対応へ転換
スキンケアを中心に販売の約85%を通販・直営店が占めるオルビスは、SNSの口コミによる急な需要増や、パンデミック前後の在庫過多と欠品を経験し、在庫の適正化に向けて「予測精度分析」の立ち上げに着手しました。NECが指標の検討や算出結果の解釈、管理プロセスの設計まで伴走支援し、評価の物差しとしてMAPE(平均絶対誤差率)とトラッキングシグナルの2つを採用。月初のデータ集計、マネジメントによる一次レビュー、担当者が誤差の理由を説明する予測レビュー会、月末の在庫見通し確認会という月次サイクルを回す形にまとめています。誤差を責めるのではなく改善の材料として扱う運用によって、SCMの精度向上と担当者育成の両方をねらう設計です。
出典:需要予測の「誤差」を学びに変えるオルビス SCM最適化に加えチーム育成にもつながる「予測精度分析」 発行元:NEC(wisdom)
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
数年前に発売したスキンケア商品がSNSで話題になった際には受注が急伸して品薄となり、パンデミック期には在庫が過去最大級に膨らんだ後、需要が戻る局面では供給が追いつかず大きな機会損失も発生しています。直販比率が高く、まとめ買い層や定期購入層といった購買パターンを細かく把握できる環境がありながら、それでも需要の振れに追随しきれない状態でした。
ここで注目したいのは、困りごとの本質が「予測の当て方」ではなかった点です。編集部の見立てでは、真の課題は、外れた予測がその後どう扱われるかが決まっていなかったことにあります。外れた事実は在庫や欠品という形で必ず現れるのに、なぜ外れたのかを共通の物差しで測り、次の判断に渡す経路がなければ、同じ振れ幅が繰り返される。予測を当てにいく前に、外れを処理する仕組みを持つかどうかが分かれ目だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
評価指標をMAPEとトラッキングシグナルの2つに絞った点が、この仕組みの起点になっています。MAPEは実績からどれだけ外れたかという大きさを、トラッキングシグナルは偏った外れ方が続いていないかという方向性を捉えるもので、性質の異なる2軸を組み合わせることで「たまたま大きく外した」のか「構造的に同じ方向へずれ続けている」のかを切り分けられます。指標を増やせば精緻にはなりますが、毎月全員で議論する運用に乗せるには、解釈が共有できる少数に絞る判断が効いたと考えられます。
誤差の分析を月次の管理プロセスとして固定した設計も見逃せません。月初にデータを突き合わせて対象商品を洗い出し、マネジメントが重点商品を選び、月中の予測レビュー会で担当者が誤差の理由を発表して全員で議論し、月末の在庫見通し確認会で生産や調整の方針を決める。分析で終わらせず、その月のうちに生産量の調整や販促計画の修正といった打ち手まで到達する導線が引かれているため、誤差が「発見」で止まりません。
「誤差は失敗ではなく改善の材料」という位置づけを明示した運用は、分析の仕組み以上に重要な役割を果たしているように見えます。誤差の数値は、控えめに見積もる人と強気に構える人という担当者ごとの癖まで映し出してしまうため、評価の道具として扱われた瞬間に発表は防衛的になり、本当の要因は語られなくなる。レビュー会をSECIモデルの「共同化」、つまり個々の暗黙知を持ち寄って共有する場と位置づけたことが、新商品が計画ほど売れなかった際に既存商品とのカニバリゼーションを見落としていたのではないかといった踏み込んだ議論を可能にしたと考えられます。なお、指標の選定や算出結果の解釈、管理プロセスの検討にはNECが伴走しており、立ち上げ時に外部の視点を入れて設計を固めた点も、この仕組みの成り立ちを支えています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
この一連の仕組みによって、欠品や在庫の過剰リスクを未然に察知できるようになり、組織全体の予測力が一段上がったという手応えが語られています。誤差を「発見」から「アクション」へ転換できるようになり、生産量の調整、販促計画の修正、在庫水準の見直しといった具体的な対応に結びつくようになりました。あわせて、これまで属人的だった予測活動が透明化され、担当者ごとの見積もりの癖やバイアスが数値で見えるようになった点も変化として挙げられています。議論を通じて蓄積された要因の学びは、次の予測に活かされています。
うちでも使える?
この手法が応用しやすいのは、予測値と実績を商品やチャネル単位で突き合わせられるデータがあり、月に一度、関係者が集まって振り返る場を確保できる組織です。指標そのものはMAPEとトラッキングシグナルという計算しやすいもので、高度なAI基盤がなくても着手できる点は、規模の小さい会社にとって現実的でしょう。逆に、そもそも誰がどの単位で予測しているのかが曖昧な場合や、レビューの場が誤差を出した担当者への追及になってしまう場合は、数値が揃っても学びは蓄積されません。オルビスの事例でも、AIで新商品の需要予測モデルを組もうとしたものの、人が因果関係を理解しないままでは精度が上がらなかった経験が語られており、仕組みを飛ばしてツールから入る進め方には注意が要ります。
小さく始めるなら、直近数か月の予測と実績を主要商品だけ並べ、ズレが毎月同じ方向に偏っている商品がないかを確かめるところから。偏りが見つかった商品が一つでもあれば、それが最初の議題になります。
この事例は2025年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:経営・企画
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
NEC
SCMや需要予測をテーマにしたウェビナー「山口雄大の需要予測サロン『デマサロ!』」を開催。アナリティクスコンサルティング統括部に需要予測エヴァンジェリストを擁し、予測精度分析の指標検討・解釈・管理プロセス検討を伴走支援する。AI-nativeなSCM高度化として「Advanced-S&OP 予測精度分析ソリューション」を提供するほか、AIデータ分析プラットフォーム「dotData」(米国dotData, Inc.開発)の日本国内販売権を得て提供している。
オルビス株式会社
出典・参考情報
需要予測の「誤差」を学びに変えるオルビス SCM最適化に加えチーム育成にもつながる「予測精度分析」
発行元:NEC(wisdom)
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
