更新 2026.08.13
味の素が1万件超のレシピから開発、好みの献立を自動で作るAIサービスの裏側
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内に眠るデータの使い道が決まらない
- 顧客の細かい要望に人手で対応しきれない
- 試作から事業化まで進まない
どのようなAIの取り組み?
1万件を超える自社レシピデータと栄養の知見を組み合わせ、栄養条件と個人の好みを同時に満たす献立を作るAIエンジンを開発し、Webサービスに実装したAI取り組み
業種
食品・調味料製造(製造業)
取り組み領域
レシピ・栄養データを活用した献立提案サービス
使ったAI
条件を満たす組み合わせを提案する献立作成AIエンジン
主な成果
1万件超のレシピデータを活用した献立作成エンジンをWebサービスに実装
味の素は、栄養面から顧客価値を高める取り組みを進めるなかで、これまでの製品開発・研究開発で蓄積してきた健康や栄養の知見、そして数多くのレシピデータをどう活かすかを検討していました。着目したのは、料理をする人の多くが抱える「献立を決められない」という悩みです。同社とLaboro.AIは共同で、保有する1万件超のレシピデータを組み合わせ、減塩などの栄養素の条件や好みの食材といったユーザー指定の条件を満たす献立を作る「献立作成エンジン」を開発しました。このエンジンは、好きなメニューと栄養バランスの両方を踏まえて献立を提案する同社のWebサービスに使われています。Laboro.AI側は、ビジネス構想の検討から初期開発、テストマーケティング、サービス化開発、サービス提供までのプロセスに長期にわたって伴走する形で関わっています。
出典:ユーザーニーズを満たす「献立作成エンジン」 - 株式会社Laboro.AI 発行元:株式会社Laboro.AI
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
出発点にあったのは、データが足りないという悩みではなく、その逆でした。長年の製品開発と研究開発で積み上げた栄養の知見、そして膨大なレシピデータがすでに手元にあり、それをどう顧客価値につなげるかが定まっていない状態だったと読み取れます。
課題を「データ活用の模索」という言い方で終わらせず、料理をする人が実際に困っている場面、つまり献立を組み立てる場面まで具体化できたかどうかが分かれ目だったのではないでしょうか。データ活用のプロジェクトが動き出さない理由は、技術力よりも「誰のどの瞬間の困りごとに当てるか」が決まっていないことにあります。レシピという素材は、一品単位で見れば検索や閲覧の対象にすぎませんが、複数を組み合わせる献立という単位に置き換えた途端、栄養バランスや好みという制約を扱う問題に変わります。この課題の置き換えそのものが、取り組みの土台になったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、献立作成を「人が無意識に守っているルールまで含んだ条件充足の問題」として定義し直した点だと考えられます。単にレシピを複数並べるだけでは献立になりません。栄養バランスを取ることに加えて、品数がちょうどよいか、和洋中のジャンルがちぐはぐになっていないかといった、人が意識せず判断している要素を条件として扱う必要があります。ここを曖昧にしたまま作ると、栄養計算上は正しいのに食卓に並べると違和感のある組み合わせが出てきてしまう。守るべき条件を具体的に洗い出して設計に落とし込む工程が、実用に足る品質の分かれ目になったはずです。
第二に、条件の入り口を運動習慣や減塩ニーズ、嫌いな食材といった個人ごとの要望まで広げた設計です。汎用の献立をひとつ出すのではなく、条件を指定するとそれを満たす組み合わせが返る形にしたことで、同じエンジンが幅広い利用者の事情に対応できます。1万件を超えるレシピデータという母数の大きさは、条件を厳しくしても候補が枯れないという意味で、この設計を成り立たせる前提として機能していると見られます。
第三に、構想検討から初期開発、テストマーケティング、サービス化開発、そしてサービス提供までを一続きのプロセスとして進め、そこにLaboro.AI側が長期で伴走したという進め方です。試作を作って終わるのではなく、市場での反応を確かめる段階を明示的に挟んでから本格的なサービス化開発に入る組み立てになっており、技術検証と事業判断を切り分けずに並走させています。さらにエンジンを味の素以外のサービスとも連携できる形にし、提供者側が自社ユーザーに合わせて条件をあらかじめ指定できるようにした点も、ひとつの用途に閉じない資産として設計する考え方の表れでしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
開発された献立作成エンジンは、好きなメニューと栄養バランスを考慮した献立を提案する味の素のWebサービスに実際に使われており、構想段階の検討から実サービスでの提供まで到達しています。加えて、同社以外のサービスとも連携でき、提供者側が自社ユーザーに適した条件を事前に指定できる仕組みになっています。自社データを起点にした取り組みが、一度きりの試作ではなく外部にも開ける形の資産として残った点に意味があると考えられます。
うちでも使える?
この進め方が応用しやすいのは、選択肢のデータがある程度の量そろっていて、かつ「良い組み合わせ」の条件を言葉にできる領域です。献立でいえば栄養バランスや品数、ジャンルのまとまりに当たるものが、自社の業務では何なのかを書き出せるなら、同じ考え方が使えます。研修プログラムの組み立て、部品や資材の組み合わせ提案、旅程やシフトの案出しなどは近い構造を持っています。反対に、良し悪しの判断が担当者の感覚に強く依存し、条件として言語化できない領域では、出てきた案が現場感覚と合わず使われないままになりやすいでしょう。
もうひとつ参考になるのは、テストマーケティングを挟んでからサービス化開発に進むという段階の切り方です。作り切ってから世に出すのではなく、途中で利用者の反応を確かめる場を工程として組み込んでおくと、方向転換の余地が残ります。まずは自社が持っているデータのなかで、組み合わせて価値が出そうなものを一種類選び、「良い組み合わせと言える条件」を三つほど紙に書き出してみるところから始めてみるとよいかもしれません。その三つが書けるかどうかが、そのまま実現可能性の目安になります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社Laboro.AI
カスタムAI開発およびAIプロダクトを提供する企業。人工知能を用いたソリューション開発事業において認証を取得している。
味の素株式会社
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