実施 2023.03 ・ 更新 2026.08.13
費用対効果が読めないAI導入の壁をどう突破したか、現場主導のデータ活用策
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- データはあるが活用が進まない
- AI投資の効果が読めず稟議が通らない
- 分析人材が社内にいない
どのようなAIの取り組み?
自動で特徴量を作るAI開発ツールと伴走型の人材育成を組み合わせ、現場社員自身がデータ分析に取り組む体制づくりを進めているAI取り組み
業種
昇降機・ビル設備の製造保守(製造業)
取り組み領域
全社データ利活用・人材育成
使ったAI
dotData(自動機械学習/AutoML)
主な成果
8チームがOJT演習を実施し、人員変動予測などで業務適用が見え始めた
三菱電機ビルソリューションズは、基幹システムの全面リニューアルと並行して、全社でのデータ利活用スキル習得と文化づくりに着手しています。中心に据えたのは、統計やプログラミングの専門知識を持たない現場社員が自らデータを扱う「市民データサイエンティスト」という考え方です。データ加工から特徴量の設計、機械学習までを自動化するdotDataを選び、NECの「DX人材育成サービス」によるOJT形式の演習を実施。現在8チームが、自部門の業務課題を題材に演習へ取り組んでおり、総務・人事部門の人員変動予測や、建物管理分野での空調設定温度と室温の相関分析などが進められています。
出典:データ利活用文化の社内浸透 ~現場も使えるAIと伴走型の支援を得て、市民データサイエンティストの実現へ前進~ 発行元:NEC wisdom
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
データ活用そのものは以前から手がけられており、三菱電機の研究所と現場が連携して昇降機や空調機の故障予知に独自アルゴリズムで挑むといった試みもありました。ただし成果は出ても一部の組織にとどまり、全社へは広がらない。その理由として挙げられているのが、決して高いとはいえないROI(投資利益率)です。リターンの見込みが立たなければ意思決定は慎重にならざるを得ません。
ここで注目したいのは、障壁が「技術がない」ことではなく「効果が読めないから始められない」ことだった点です。専門家に頼めば外注費がかかり、内製しようとすれば育成に時間がかかるうえ、育ち切るかどうかも見通せない。つまり、コスト側の不確実性が大きすぎて、リターン側をいくら議論しても投資判断に届かない構造だったのではないでしょうか。全社展開が止まっていたのは意欲の問題ではなく、投資対効果の算式の分母が膨らみすぎていたことに原因があったと読み解けます。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、AI開発にかかるコストそのものを圧縮して、ROIの計算式を組み替えたことだと考えられます。データ加工、特徴量の設計、機械学習といった工程を自動化するツールを選ぶことで、育成コスト・開発コスト・外注コストのいずれもが軽くなる。人材育成に時間をかけてから活用を始めるのではなく、専門知識がなくても扱える道具を先に置いてしまう順序が、投資判断の壁を下げたと見られます。ユーザー数が増えてもライセンス費用が変わらないという条件も、全社に広げるほど一人あたりのコストが下がる構造をつくるという意味で、市民データサイエンティストという方針と整合しています。
ツール選定の基準が、汎用的な性能比較ではなく自社の使われ方に寄っていた点も見逃せません。気温から「一日前の気温」「毎週月曜日の気温」といった派生的な説明変数を自動生成する機能は、分析の勘所を知らない現場社員が試行錯誤する場面を補います。専門用語を登録できる辞書機能や日本語対応は、ビル設備という固有の語彙を持つ現場で、言葉の壁が分析の壁にならないようにする配慮でしょう。日報や点検記録といった自然言語の蓄積を将来的に活かす狙いも語られており、「いま使える」ことと「手持ちの資産を活かせる」ことの両方で選ばれていることが分かります。
育成の設計では、つまずきそうな場所に先回りする運用が組まれました。クレンジングなどのデータ加工でいきなり大量データを扱えば工数がかさんで気持ちが折れる。そこで最初から少量データで始めるよう周知しておく。演習は通常業務の傍らで進むため後回しになりやすいと見て、8チームが一堂に会する報告会を定期開催し、競争意識が働く場をつくる。NECの「DX人材育成サービス」による伴走では、解説やコンテンツへの要望に対して改善案が返される往復も生まれており、教材を渡して終わりにしない設計が、演習の継続を支えていると考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現在8チームが自部門の課題を題材に演習を進めており、総務・人事部門の人員変動予測のように既に業務への適用が見えているものも出ています。建物管理では、外気温や在館人数の影響で生じる室温のムラを踏まえ、空調の設定温度と室温の相関を分析する取り組みが進行中です。参加者からは、身構えていたが意外にできた、成果が出ると楽しい、継続したいといった声が上がり、経営陣も継続を後押ししています。今後は参加チーム数の拡大や、グループ会社への展開が展望として掲げられています。
うちでも使える?
この進め方が効きやすいのは、部門ごとに業務データが貯まっていて、かつ「誰がやるか」で止まっている組織でしょう。分析の専門家を待つのではなく、自動化ツールで初期コストを下げ、現場の人が自分の困りごとを題材に手を動かす。この順序は、投資判断が下りずに何年も足踏みしている場面ほど有効に働くと考えられます。逆に、データがそもそも整っていない、あるいは部門をまたいだ高度なモデル設計が必要なテーマでは、自動化ツールだけでは越えられない部分が残るはずです。
もう一つ参考になるのは、教育プログラムを「受講」ではなく「自分の業務課題を解く演習」として組んだ点、そして脱落ポイントを事前に潰しておく運用です。小さなデータから始めるよう最初に伝える、成果を共有する場を定期的に設ける——どちらも派手ではありませんが、通常業務の合間に取り組む学習が続くかどうかを左右します。まずは1部門で、日々気になっている数字を1つ選び、手元の少量データで予測してみる。そこから広げ方を考えるという入り口もあるはずです。
この事例は2023年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NEC
「DX人材育成サービス」を提供し、OJT形式の演習を通じたデータ利活用スキル習得の伴走型支援を行う企業。
三菱電機ビルソリューションズ株式会社
出典・参考情報
データ利活用文化の社内浸透 ~現場も使えるAIと伴走型の支援を得て、市民データサイエンティストの実現へ前進~
発行元:NEC wisdom
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