実施 2026.01 ・ 更新 2026.08.16
建築図面をAIが読み取り構造計算ソフトへ自動入力、設計の作業時間を約50%削減
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 図面の数値を手で入力し続けている
- 専用ソフトへの転記ミスが不安
- 設計の人手が足りない
どのようなAIの取り組み?
建築図面をAIが解析し、構造計算ソフトへ取り込めるデータを自動生成することで、入力作業の時間を約50%削減する仕組みを共同開発したAI取り組み
業種
建築工事・構造設計(建設・土木)
取り組み領域
構造設計/構造計算ソフトへの入力業務
使ったAI
図面解析AI(情報の自動抽出)
主な成果
入力作業を含む業務時間を約50%削減
東京大学発のAIスタートアップである燈株式会社と、岐阜県大垣市に本社を置くTSUCHIYA株式会社が、建築の構造計算ソフト「SS7」への入力工程を自動化する「構造設計支援ツール」を共同で開発しました。利用者が平面図と断面図をアップロードすると、AIが図面のレイヤー情報を解析し、階高、符号、柱と柱の間隔(スパン長)、外壁・床・柱といった部材の配置を抽出します。あわせて、プロジェクトの住所を入力するだけで、その地域の垂直積雪量や基準風速をAIが自動で探索し、システムへ反映する機能も備えました。抽出された情報はSS7が取り込めるエクセル形式で出力され、これまで設計者が図面を読み解いて手で打ち込んでいた工程が置き換わる構成です。燈が図面解析のAI技術を、TSUCHIYAが建築実務のノウハウを持ち寄る形で開発が進められました。
出典:燈(あかり)株式会社、TSUCHIYA株式会社と構造計算ソフト「SS7」連携システム「構造設計支援ツール」を共同開発|燈株式会社/Akari Inc. 発行元:燈株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
建設業界では人手不足を背景に生産性向上が課題となっており、なかでも建築物の安全性を担保する構造計算業務では、設計図面から柱と柱の間隔や階高、部材の配置といった膨大な情報を読み解き、構造計算ソフトへ手作業で打ち込む工程に多くの時間が費やされていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は入力量の多さそのものではありません。図面は人が読んで理解するために描かれた表現であり、構造計算ソフトが求めるのは計算のための入力値です。両者のあいだには必ず「設計者の頭を通した変換」が挟まり、その作業は機械的でありながら、建物の安全性に直結するため間違いが許されない。設計者にしかできない判断の時間が、判断を必要としない変換作業に吸い取られていた状態だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
AIにすべてを解釈させず、利用者が「柱」「通り芯」「梁」といった情報をあらかじめ設定してから解析させる切り分けが、この仕組みの土台になっています。図面の描き方には設計者や案件ごとの癖が出るため、どのレイヤーが何を表しているのかという最小限の意味づけだけを人が与えれば、AIは残りの抽出に集中できます。完全な自動化を目指すほど「本当に合っているか」を確かめる手間が膨らむ領域で、人の判断を一点だけ残した設計は、実務で回すための現実的な落とし所と言えます。
出力の形をSS7が取り込めるエクセル形式に固定した点も効いています。設計者から見れば、使い慣れた構造計算ソフトも、その先の設計フローもそのまま。変わるのは手前の入力工程だけです。既存の業務システムを置き換えるのではなく、その前段に接続する構えを取ったことで、現場が新しい操作を覚える負担は最小限に抑えられています。
住所から垂直積雪量や基準風速を自動で探索する機能は、図面の中には書かれていない情報までAIの担当範囲に含めた点で示唆に富みます。設計者が別途調べて転記していた外部の基準値まで対象にしたことで、入力作業が「図面を読む」と「資料を調べる」に分断されずに済む。図面解析の技術を持つ側と建築実務の勘所を持つ側が組んだ体制も、どこまでを自動化し、どこを人が設定すべきかという線引きの精度を支えたと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
図面情報の読み取りと構造計算ソフトへの入力が自動化されることで、従来のように直接入力・調整をしていた場合と比べ、約50%の業務時間を削減できる効果が示されています。SS7へデータを反映した後は3Dでの確認や、HELIOS、Archicadといった建物の3次元モデルを扱うBIMソフトへの展開もしやすくなり、入力工程の短縮にとどまらず設計プロセス全体の生産性に波及する構図になっています。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、入力元のデータに構造がある業務です。この事例で成立しているのは、CADで描かれた図面にレイヤーという整理の軸があり、かつ出力先のソフトが取り込めるデータ形式がはっきりしているからです。社内に電子データとして整った入力元があり、転記先のシステムに決まった受け入れ形式があるなら、同じ「読み取りと転記だけを差し替える」構図は他の業務にも当てはめられます。
一方で、手書きやスキャンした紙の図面しかない場合、あるいは担当者ごとにレイヤーの使い方や表記がばらばらな場合は、人が設定するはずの最小限の意味づけ自体が定まらず、同じようには進みません。転記先のソフトがデータの取り込みに対応していない場合も、自動化の出口を作れずに止まります。
まずは手元のCADファイルをいくつか開き、レイヤーの命名や使い方が案件をまたいで揃っているかを見比べてみる。そこが揃っていないなら、AIの検討より先に整理すべきものが見えてきます。
この事例は2026年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
燈株式会社(Akari Inc.)
「日本を照らす燈となる」を使命に掲げ、AIをはじめとした最先端テクノロジーで社会課題の解決に取り組む東京大学発のAIスタートアップ。建設業界のほか、エネルギー、インフラ、製造業など基幹産業における生産性向上や技術力の継承といった課題に向けて、独自のAI技術を用いたソリューションを提供している。
TSUCHIYA株式会社
出典・参考情報
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