実施 2025.12 ・ 更新 2026.08.16
膨大な設計資料を生成AIで横断検索、試作検証から本格開発へ進んだ設計事務所の判断
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 過去の資料が多すぎて探せない
- 詳しい人が社内の誰か分からない
- 試しに作って終わり、本番に進まない
どのようなAIの取り組み?
生成AIで社内に蓄積された設計データを横断的に検索する仕組みを検証し、本格開発へ進んだAI取り組み
業種
総合設計事務所(建設・土木)
取り組み領域
社内ナレッジ検索/設計業務支援
使ったAI
生成AIチャットツール(Amazon Bedrock)
主な成果
PoCで複数データソースの横断検索を検証し、本格開発へ移行
国内の空港設計を強みとする総合設計事務所の梓設計は、クラウドストレージに蓄積してきた膨大な設計業務データを横断的に検索できないかという課題を抱えていました。そこでAWSが提供するIxAプログラムに参加し、Amazon流のサービス構想手法を用いた2日間のワークショップでアイデアを形にします。その後、IxAパートナーであるNRIネットコムと約2か月の準備期間をかけてゴール設定を固め、2か月間のPoC(小規模な試験開発による概念検証)を実施しました。検証では、複数のデータソースをAWSのプラットフォームへ接続し、生成AIのチャットツールとして使えるかを確認しています。PoC完了後には当初のゴールを見直し、資料そのものの検索から「知りたい事柄に知識や実績のある社員を探す」方向へ組み替えたうえで、本番実装に向けた開発に進んでいます。
出典:生成AIを活用した新サービスをスピーディに実用化 ~IxAプログラム参加から本格開発までの道のりとは? | 事例 | NRIネットコム(野村総合研究所グループ) 発行元:NRIネットコム株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
梓設計は意匠設計から構造設計、設備設計までを社内で完結させる独立系の総合設計事務所で、空港のほかスタジアムや医療施設といった大型空間の設計を数多く手掛けてきました。そうした業務の積み重ねで生まれたデータはクラウドストレージに保存されていましたが、量も種類もあまりに多く、必要な情報を紐解く作業は相当な手間を伴うものでした。
設計という仕事は、過去の事例を参照しながら精度を高めていく性質を持ちます。そう考えると、困りごとの本質は「資料が多いこと」そのものではなく、探し出せる形になっていない蓄積は資産として働かず、保管されているだけの状態にとどまってしまう点にあったのではないでしょうか。もう一つ、フリーアドレス制の導入後に、固定席の頃のような社員同士の結びつきが生まれにくいという実感を持つ社員も少なくないという状況もありました。求められているのは資料なのか、それとも資料の背後にいる人なのか。この問いが、のちの方向転換の伏線になっています。
どうやって、うまくいったのか
2日間のワークショップを、アイデア出しの場ではなく経営陣の承認を取りにいくための成果物づくりの場として使い切った進め方が、まず効いています。梓設計側は参加前から予算を確保してPoCまでつなげることを想定しており、ワークショップの出力先が最初から役員決裁に固定されていました。顧客起点でサービスを構想するAmazon流の手法(Working Backwards)は本来アイデアを膨らませる枠組みですが、締切と提出先を先に決めておくことで、発想の場が意思決定の材料をつくる場に変わっています。
PoCの前に約2か月を費やしてゴール設定そのものを議論した設計も、後工程の速度を支えた要因と見ています。PoCは実現性を確かめる概念検証である以上、何を確認できたら成功と呼ぶのかがあいまいなまま走り出せば、検証結果の解釈が食い違います。支援側と発注側が打ち合わせを重ねてゴールをブラッシュアップし、運用段階まで見据えた明確なイメージを共有したことで、PoC開始後の要件定義が円滑に進みました。
検証中に立ち止まることを織り込んだ運用も、この事例に固有の工夫です。CADファイルの拡張子が対応外だったり、ギガ単位のファイルを分割する必要があったり、図面画像からテキストを抽出する精度が読めなかったりと、設計業務のデータならではの壁が次々に表面化しました。さらに図面には秘匿情報が含まれるため、どのデータをLLMに読み込ませるかという取捨選択にも手間がかかっています。想定していたデータソースを差し替えたい、いったん検証したいという要望が出るたびに計画を押し通さず一緒に考え直す進め方が、こうした課題を一つずつ潰していく作業を成立させました。
具体的に、どんな成果が出たのか
推進したこと
この事例で出た成果
2か月のPoCでは、複数のデータソースをAWSのプラットフォームに接続できることを確認し、生成AIのチャットツールとして活用できることを検証しています。この結果を受けて、PoC完了の翌週には役員向けのプレゼンが行われ、本番実装に向けた開発の実施が決まりました。PoCで終わったり本格開発まで長い空白期間が空いたりする例が珍しくないなかで、検証から次工程への接続が途切れなかったこと自体が、この時点での成果と言えます。業務上の効果はこれから問われる段階です。
うちでも使える?
過去の案件データが電子的に一か所へ集まっていて、かつ「過去を参照しないと今の仕事が進まない」性質の業務であれば、考え方は移しやすいはずです。設計事務所に限らず、提案書や施工記録、調査報告といった蓄積を毎回たどり直している組織なら、検討の入口は近いところにあります。
一方で、扱うデータが専用ソフトの独自形式だったり、一件あたりのファイルが極端に大きかったり、外部に出せない情報を含んでいたりする場合は、AIに読ませる前の下ごしらえに相当な工数がかかります。この事例でも、その部分が検証の主戦場になりました。また、汎用の生成AIツールの進化が速い領域では、自社で作り込む意味が一年で薄れることもあります。実際、梓設計は当初の資料検索というゴールを、既存ツールで代替できるようになったと判断して人にフォーカスした方向へ組み替えています。
まず着手するなら、検証で何が確認できたら次の投資判断に進むのかを、一文で書けるところまで詰めておくこと。ゴールの言語化は地味ですが、ここが曖昧なままの検証はどこで終わればいいのかも分かりません。
この事例は2025年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NRIネットコム株式会社
野村総合研究所グループの企業。AWSが提供するIxAプログラムにおける国内唯一のIxAパートナー(2025年12月時点)として、生成AIを活用したサービス開発を支援している。生成AIツールの活用にとどまらず、フロントエンドからバックエンドまでワンストップでの支援に対応する。
株式会社梓設計
出典・参考情報
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