実施 2024.06 ・ 更新 2026.08.13
ライオンが熟練者の勘所を文書化、生成AI検索で技術継承に挑む取り組み
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘に頼った作業が多い
- 技術継承に時間がかかりすぎる
- マニュアルに書けない知識が多い
どのようなAIの取り組み?
熟練技術者の暗黙知をインタビューから「勘所集」として文書化し、生成AIを使った社内検索に取り込むことで技術継承を進めようとするAI取り組み
業種
日用品・トイレタリー製造(製造業)
取り組み領域
生産技術/製造プロセス開発の技術継承
使ったAI
生成AIを活用した社内検索サービス「知識伝承AIシステム」
主な成果
熟練者の暗黙知を「勘所集」として文書化しAI検索に取り込む取り組みを開始(成果は今後)
ライオンと NTTデータが、衣料用粉末洗剤の生産技術領域を対象に、熟練技術者の頭の中にある技術・知識・ノウハウを生成AIで扱える形に変える取り組みを2024年6月から始めています。まず熟練者へのインタビューや、幅広い役職の社員が参加するワークショップを通じて、これまで文章になっていなかった知識を引き出し、「勘所集」という文書にまとめます。この勘所集を、ライオンが開発を進めてきた生成AI活用の検索サービス「知識伝承AIシステム」に取り込み、新しく製造プロセス開発に加わるメンバーが熟練者のノウハウを検索して使える状態をつくる、という流れです。暗黙知の抽出には、NTTが研究開発した技能抽出・コンテンツ化手法「MEISTER」をベースとしたNTTテクノクロスのコンサルティングサービスが使われます。
出典:国内熟練技術者の技術継承に向け、生成AIを活用した暗黙知伝承に関する取り組みを開始 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP 発行元:ライオン株式会社/株式会社NTTデータ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発では、研究所でビーカーサイズで作った組成を工場の大型設備で量産できるように条件を詰めていきます。ここで効率よく検討を進めるコツや、原料の性状に応じて運転条件を決める判断は、OJTやマニュアル・手順書だけでは伝わりきらず、身につけるのに時間がかかるという状態が続いていました。少子高齢化と労働力人口の減少が重なり、教える側の熟練者にも負担が集中します。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとは「情報が足りない」ことではありません。ライオンは社内データベースにある形式知を効率的に集めて提供する技術開発をすでに進めており、検索できる情報自体は積み上がっています。それでも継承が進まないのは、最も価値のある判断基準がどこにも文章として存在せず、検索の対象にすらなっていなかったからではないでしょうか。つまり、AIで探す前に、探せる対象を作る工程が抜けていた、という構造の問題として捉えられます。
どうやって、うまくいったのか
この取り組みで目を引くのは、AIに暗黙知を直接学ばせようとせず、いったん人の手で「勘所集」という文書に落としてから生成AIに載せる、という二段構えの設計です。熟練者へのインタビューと、幅広い役職の社員が参加するワークショップという地道な情報収集を前段に置き、その抽出にはNTTが研究開発した技能抽出・コンテンツ化手法をベースにしたコンサルティングサービスを充てています。暗黙知の抽出という属人的になりやすい作業に確立された手法を当てることで、担当者の聞き取り技量に成果が左右されにくくなる。ここが、後段のAI検索の中身の質を決めていると考えられます。
対象を「衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発」という一領域に絞り込んだ点も、実行可能性を大きく左右しているはずです。アジアでの需要が堅調で、かつ暗黙知の比重が高いテーマを選ぶという判断は、抽出コストに見合うだけの継承価値がある範囲を先に見極めるやり方といえます。全社の技術知を一気に形式知化しようとすれば、インタビューの母数だけで動けなくなる。範囲を限って型を作り、そこから他製品や海外拠点へ広げていく順序が想定されています。
三つ目は、抽出工程そのものを将来の負荷として見込み、インタビュー結果をまとめる作業に生成AIを適用することを検討している点です。暗黙知の形式知化は一度で終わる作業ではなく、対象範囲を広げれば広げるほど文書化の手間が積み上がります。成果物を生み出す工程にもAIを回す前提を最初から織り込んでおく設計は、継続的に更新される仕組みを目指すうえで理にかなっています。ライオン側にすでに対話型生成AI「LION AI Chat」や知識伝承AIシステムという土台があり、その上に暗黙知という新しい素材を載せる形になっている点も、立ち上がりの速さに寄与していると見られます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
この取り組みは2024年6月に開始された段階であり、削減時間などの定量的な成果はまだ公表されていません。想定される活用場面として、製造工程で品質に影響する留意点を検索して短期間で検討手順を学べること、原料の性状などを踏まえた製造条件設定のコツを生成AI経由で伝えることで、熟練者が新規参画者を指導する負荷を軽くすることが挙げられています。今後は暗黙知の抽出範囲の拡大や定期的な抽出、他製品への展開が予定され、より機微な内容を扱う手段としてNTT版大規模言語モデル「tsuzumi」の活用も検討対象とされています。
うちでも使える?
参考にしやすいのは、「ベテランに聞けば分かるが、どこにも書いていない」判断が業務の中心にある職場です。設備の運転条件、材料や天候による調整、トラブル時の切り分けなど、判断の理由を言葉で説明できる余地があるなら、聞き取って文書化し、それを検索できる状態に置くという流れはそのまま応用できます。逆に、手の感覚や身体の動きに強く依存する技能、あるいは本人も理由を言語化できない判断は、インタビューをしても文章に落ちにくく、この方法の効き目は限られます。抽出のためにベテランの時間を相当量押さえる必要がある点も、小規模な組織では現実的な制約になります。
もう一つの前提は、AIに載せる前の「中身を作る工程」に人と手間をかけられるかどうかです。検索基盤だけ用意しても、投入する文書がなければ答えは返ってきません。まずは特定の製品や工程を一つ選び、ベテラン一人に一時間ほど話を聞いて、質問と答えの形でメモに残してみる。そのメモが後任にとって読める内容になっているかどうかで、この道筋が自社に合うかがおおよそ見えてきます。
この事例は2024年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
ライオン株式会社
出典・参考情報
国内熟練技術者の技術継承に向け、生成AIを活用した暗黙知伝承に関する取り組みを開始 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP
発行元:ライオン株式会社/株式会社NTTデータ
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