実施 2025.10 ・ 更新 2026.08.14
物質・材料研究機構が500アカウントで生成AI活用開始、論文執筆や提案書作成へ
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 試しただけで社内にAIが定着しない
- 機密情報が多くAIを使わせにくい
- うまくいった使い方が共有されない
どのようなAIの取り組み?
政府のセキュリティ基準に対応したチャット型生成AIを500アカウント規模で使い始め、論文執筆から事務作業までの効率化に乗り出したAI取り組み
業種
国立研究開発法人(公共・公益事業)
取り組み領域
研究開発支援・事務作業全般
使ったAI
チャット型生成AIサービス「GaiXer」(LLM)
主な成果
500アカウントで活用開始(効果は未公表)
国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)が、株式会社FIXERのエンタープライズ向け生成AIサービス「GaiXer」の利用を2025年10月から開始しました。NIMSは2024年度から、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度ISMAPに登録された生成AI基盤クラウドを用いてチャット型の検証環境を運用してきましたが、インターネット検索の機能と、プロンプトを含むナレッジ共有の機能が不足していました。新たに採用されたサービスは、政府基準のセキュリティ要件を満たしたうえで利用者どうしが知見を共有しやすい点が導入の決め手になっています。契約期間は2025年10月1日から2026年3月31日、アカウント数は500。論文執筆や外部資金事業の提案書作成・校閲、議事録やメール文案の作成などが対象業務で、FIXERによる利用者研修も併せて実施されます。
出典:GaiXer、国立研究開発法人 物質・材料研究機構で活用開始 ~生成AIの活用を通して研究開発や事務作業の効率化を推進~ - 株式会社FIXER 発行元:株式会社FIXER
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2024年度に構築された検証環境は、政府のセキュリティ評価制度に登録されたクラウドを土台としており、安全面の条件はすでに満たされていました。それでも不足として挙げられたのが、インターネット検索の機能と、プロンプトを含むナレッジ共有の機能です。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「生成AIが使えない」ことではなく、使った経験が個人の手元で止まってしまう点にあったのではないでしょうか。研究機関が扱う文書は、論文にせよ外部資金の提案書にせよ書き手ごとに事情が異なり、誰かが見つけた良い指示の出し方は、そのまま別の人の時間短縮につながります。共有する場がなければ、利用者の数だけ同じ試行錯誤が最初から繰り返され、検証は進んでも組織としての習熟は積み上がりません。機能の欠落が、そのまま学びの分断を生んでいた構造だと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
土台となるセキュリティ水準には手を付けず、足りない機能だけを入れ替えるという選び方が、この移行の軸になっています。新たに採用されたサービスは、政府のセキュリティ基準を満たすSaaSとして「ISMAP-LIU」の特別措置サービスリストに登録され、行政専用ネットワークであるLGWANでの利用にも対応し、データ保護やアクセス制御の仕組みを備えています。検証段階で確保していた安全性の条件を再検討の対象から外したことで、議論を「実務で何が足りないのか」に絞り込めた点が効いていると考えられます。
プロンプトを含むナレッジ共有を導入要件に据えた判断は、生成AIの定着を個人の努力から組織の仕組みへ移し替える設計です。うまくいった指示の書き方が利用者間に流通し、業種別テンプレートによるプロンプト作成支援や各種データの学習機能が用意されていれば、後から使い始める人ほど短い助走で実用に届きます。複数の大規模言語モデル(LLM)から用途に応じて選んで実行できる構成も、論文の推敲と議事録の整形のように性質の異なる作業を同じ環境でこなすうえで無理が出にくい。
提供側による利用者研修を最初から組み込んだ点も見逃せません。ツールの提供と使い方の浸透を切り離さず、FIXERが研修まで担う役割分担にしたことで、導入直後に起きがちな「配られたが使われない」状態を避けやすくなります。まず500アカウントという一定の規模で継続的に使い、その状況を踏まえてから拡大を検討する進め方も、全所一斉展開を前提にしないぶん、必要とされる業務から自然に広がる余地を残した設計です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
公表されているのは活用開始までの段階で、削減時間や効率化の割合といった効果を示す数値はまだ示されていません。契約期間は2025年10月1日から2026年3月31日、アカウント数は500で、論文執筆、外部資金事業の提案書作成・校閲、議事録やメール文案の作成・修正、新規事業のアイデア出し、企画系業務の立案や思考の壁打ちが対象業務として挙げられています。今後は一定数の利用者による継続的な利用を通じて、ニーズに応じた利用拡大につなげることが検討されています。
うちでも使える?
参考にしやすいのは、扱う情報の性質から利用環境を限定せざるを得ない組織です。安全性の条件を先に固めておけば、その後の検討は「実務で足りない機能は何か」という一点に絞れます。文章を書く仕事の比重が高い職場ほど、この事例の対象業務との重なりも大きいはずです。
一方で、そのまま当てはめにくい面もあります。この取り組みは、すでに検証環境を運用して機能の過不足が見えている段階からの乗り換えであり、利用ルールもこれからという組織が同じ順序をたどると、判断の材料が足りません。実験データの解析や数値計算が業務の中心を占める現場では、文書作成中心の効き方とは違う評価軸が要ります。効果を示す数値が公表されていない点も、投資判断の根拠には使えないところ。
まずは、社内で誰かが工夫して書いた指示文が、他の人の目に触れる場所に置かれているかを確かめてみてはいかがでしょうか。置き場所がないなら、共有フォルダに一枚のファイルを作るところからでも始められます。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社FIXER
2009年創業。Microsoft Azureの国内展開初期から、企業・官公庁・自治体のエンタープライズシステムを中心に、クラウドを活用したIT基盤の構築と高度化を支援。近年は生成AIを生産性向上の中核技術と位置付け、自社開発のエンタープライズ向け生成AIサービス「GaiXer」や、閉域ネットワーク内で完結するオンプレミス型生成AI「Sovereign GaiXer」を提供している。
国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)
出典・参考情報
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