実施 2026.04 ・ 更新 2026.08.14
生成AIが退院・看護サマリーを下書き、月約900時間を短縮した病院の運用
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 書類作成に追われて残業が減らない
- 記録の入力にPC作業の時間を取られている
- 決まった書式の文書づくりを自動化したい
どのようなAIの取り組み?
電子カルテの診療記録から生成AIが退院サマリー・看護サマリーの下書きを作り、作成時間の合計で月約900時間の短縮を確認したAI取り組み
業種
大学附属医療センター(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
医療文書作成/電子カルテ記録
使ったAI
GaiXer Medical Agent(生成AI・LLM)
主な成果
サマリー作成時間を合計約900時間/月 短縮
愛知県岡崎市の藤田医科大学 岡崎医療センターが、医療業務支援に特化した生成AIサービス「GaiXer Medical Agent」の本格運用を開始しました。提供するのは株式会社FIXERで、契約は同社と学校法人藤田学園(フジタイノベーションキャピタル)の合弁会社であるメディカルAIソリューションズと、岡崎医療センターとの間で結ばれています。中心となるのは、電子カルテに蓄積された診療記録をLLM(大規模言語モデル)が要約し、退院サマリーと看護サマリーの下書きを生成する機能です。ボタン操作だけで数秒のうちに下書きができ、そのまま電子カルテへ転記できます。診察内容を話し言葉のまま記録できる音声入力機能も併せて実装されました。運用後に340名の職員へ実施したアンケートでは、両サマリーの作成時間が合計で月約900時間短縮されたことが確認されています。
出典:GaiXer Medical Agent、藤田医科大学 岡崎医療センターにて本格運用開始~退院サマリー・看護サマリー作成支援システム活用で合計約900時間/月 削減、生成AIで医療従事者の働き方改革を加速~ - 株式会社FIXER 発行元:株式会社FIXER
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2024年4月に医師の働き方改革が適用され、医療現場では限られた労働時間の枠内でこれまでと同じ医療を提供することが求められるようになりました。なかでも診療記録をもとにした医療文書の作成は負担が重く、退院サマリーは1件あたり10〜15分を要していました。
編集部が注目したのは、この負担が「1件あたりの時間」よりも「その作業が発生する時間帯」に効いてくる点です。サマリーは診療の合間や勤務の終わり際に書かざるを得ない性質の作業であり、救命救急を24時間365日体制で担う施設では、まとまった執筆時間をあらかじめ確保すること自体が難しかったのではないでしょうか。10〜15分という数字は単体では小さく見えますが、退院が重なれば積み上がり、しかもその積み上がりは、止められない診療の後ろ側に押し込まれていきます。困りごとの本質は文書作成そのものの遅さではなく、書く時間を勤務時間の内側に置ききれなかったことにあると考えられます。
どうやって、うまくいったのか
AIの役割を下書きの生成までに限定し、最終的な確定を医療従事者の手に残した切り分けが、この仕組みの土台になっています。【サマリー生成】と【取り込み】という二つのボタンを押すと、診療記録を要約した文章が数秒で作られ、そのまま電子カルテへ流し込まれます。ゼロから書く作業を、書かれたものを確かめる作業へ置き換えた設計であり、医療文書の責任の所在を動かさずに済む点が、現場が受け入れられる条件を満たしたと見ています。
段階を踏んだ展開の順序も効いています。先に藤田医科大学病院の入院機能を有する31診療科で運用してきた実績があり、そのうえで救命救急や手術支援ロボットを備える岡崎医療センターへ広げる流れになりました。診療科ごとに記録の書き方も語彙も異なる領域で、まず幅を確保してから別の施設へ移す進め方は、生成された文章が現場の水準に届くかどうかを先に確かめる手続きとして働いたはずです。
もう一つは、医療情報の扱いを設計段階で塞いだ判断です。入力された診療記録や医療文書をAIの追加学習に一切利用しない構成とし、電子カルテとの接続はCSVファイル等による連携によって、ベンダーを問わず成立するようにしています。機密性の高さと、施設ごとにシステムが異なるという医療特有の二つの制約を、機能の作り込みではなく前提の組み方で外しにいっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
本格運用の開始後、340名の職員を対象としたアンケートでは、退院サマリーと看護サマリーの作成にかかっていた時間が、合計で月約900時間短縮されたことが確認されました。先行して導入された藤田医科大学病院では、利用した医師の92%が時間短縮・業務改善につながったと回答しています。音声入力については、キーボードから解放されて患者の表情を見ながら対話しやすくなった、SOAP形式(主観的情報・客観的情報・評価・計画の4項目に整理する記録手法)での要約によってカルテ記載の質が上がった、といった声が現場から寄せられています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、書式が決まっていて、材料となる記録がすでにシステムの中に揃っている文書です。この事例の退院サマリーはまさにその型で、書くべき内容は日々の診療記録の中に存在しており、人が担っていたのは散らばった情報を集めて整える作業でした。作業日報から月次報告を起こす、点検記録から報告書を仕立てるといった業務も同じ構造なので、下書きを作らせて人が確定するという使い方はそのまま当てはまります。
一方で、材料が担当者の記憶や手元のメモにしか残っていない文書では、同じようには運びにくいでしょう。書き手の判断や交渉の経緯そのものが本体になる文書も、下書きの確認に最初から書くのと変わらない手間がかかるため、この形とは相性がよくありません。まずは直近に自分が作った文書を一つ選び、その材料が社内のどのシステムに、どこまでデータとして残っているかを確かめる。そのうえで下書きを一度作らせ、確認に要した時間を測ってみてください。そこで出た数字が、自社にとっての現実的な効果の目安になります。
この事例は2026年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社FIXER
2009年創業。Microsoft Azureの国内展開初期から企業・官公庁・自治体のエンタープライズシステムを中心にクラウドを活用したIT基盤の構築と高度化を支援。近年は自社開発の生成AIサービス「GaiXer」、オンプレミス型生成AI「Sovereign GaiXer」を展開している。
藤田医科大学 岡崎医療センター
出典・参考情報
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