実施 2026.06 ・ 更新 2026.08.15
塩野義製薬の全社生成AI基盤、部署ごとに機密を分ける権限管理の設計
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 部署ごとに見せる資料を分けられない
- 機密が心配で社内文書をAIに載せられない
- 前任者の記録を探すのに時間がかかる
どのようなAIの取り組み?
部署やグループ単位で参照できる社内情報の範囲を制御する生成AI基盤を整え、創薬研究や臨床開発など機密性の高い領域にも活用を広げたAI取り組み
業種
医薬品製造(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
全社の生成AI基盤/社内データ検索
使ったAI
生成AIプラットフォーム(RAG・権限管理)
主な成果
機密情報を扱う創薬研究・臨床開発の領域まで生成AIの活用が拡大
塩野義製薬は、全社員が自分の現場の課題を生成AIで解決できる状態を目標に掲げ、2023年には社内ChatGPTを立ち上げていました。ただし組織をまたいだアクセス制御の仕組みがなく、臨床試験データのような機密情報を扱う領域には踏み込めない状態が続きます。そこで採用されたのが、TISが提供する「生成AIプラットフォーム」です。Azure AD(Entra ID)と連携し、部署やグループ単位でRAG(社内の文書を検索してAIの回答に使う仕組み)の参照範囲を制御する設計を軸に、機密を個別に分けて管理するインデックスの作成数上限の拡張、本来SaaSだった基盤のAWSプライベート環境への閉域化、SharePointやBoxとつなぐコネクタ開発といった作り込みが行われました。現在は創薬研究や臨床開発でも利用が進んでいます。
出典:塩野義製薬株式会社様 | お客様事例 | TISI株式会社 発行元:TIS株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2023年に構築された社内ChatGPTは、翻訳や考えの壁打ちといった用途で使われ、生成AIへの信頼感を社内に広げる役割を果たしました。一方で「組織間のアクセス制御」という課題が残り、臨床試験データなどの機密情報をRAGに登録すると、権限のない他部署の社員が回答を通じてその内容に触れてしまうリスクや、特許取得への影響が懸念されていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとはAIの回答精度ではなく、情報が届く範囲を組織の形に合わせて区切れないことにあります。全社共通の窓口を一つ用意するほど、社内で最も価値の高い情報ほどそこに載せられなくなる。使う人を増やすための設計と、製薬の核心業務にあたる情報を扱うための設計は、同じ延長線上にはなかったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
参照範囲の制御を人の運用ではなく認証基盤に委ねた点が、この取り組みの起点になっています。Azure AD(Entra ID)と連携させ、人事異動や組織変更にRAGの閲覧制限が自動で追従する形を最優先の要件に据えました。権限の設定を担当者の手作業やチェック運用に頼ると、組織が動くたびに設定漏れの余地が生まれます。制御の根拠を、すでに正しく保たれている組織情報のほうへ寄せた判断が、機密領域まで適用範囲を広げる土台になったと考えられます。
分離の単位を細かく持てるようにしたことも、実務に耐えるかどうかを分けた要素でしょう。社内には多数の部署に加え、膨大な数の薬や実験の担当領域が並行して動いており、それらを一つの大きな知識のかたまりに混ぜてしまうと、情報の混同が起きます。そこで、個別に機密分離するインデックス(ナレッジベース)の作成数について、データベースの仕様上の上限を独自の設計で大きく引き上げました。粗い単位で線を引いて運用でごまかすのではなく、業務の実際の細かさに合わせて器のほうを作り替えるアプローチです。
現場が使っている場所からデータを動かさない接続の作り方も見逃せません。本来SaaSとして提供されていた基盤をAWSのプライベート環境へ適応させる大幅な刷新を行い、あわせてSharePointやBoxと直接つながるコネクタを開発することで、使い慣れた環境のファイルをそのままAIに読ませられるようにしています。基盤の選定時に、部品を並べるだけでAIアプリを組み立てられる柔軟性と社内システムへの拡張性を評価軸に置いていた点も、現場が自分でアプリを作り改善していく将来像から逆算した判断といえます。こうした個別対応は、週次で顔を合わせて意見を交わす共同の進め方があって初めて具体化したものでしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
組織間で意図しない情報共有が起きる不安が解消され、創薬研究や臨床開発など厳密な統制が求められる領域でも活用が進んでいます。資料翻訳のような手軽な用途は社内ChatGPT、機微な情報を扱う場面は生成AIプラットフォームという使い分けの意識も定着しつつあります。前任者が残した膨大な実験記録から必要な情報を探すノウハウ継承の場面で役立っているとの声も出ており、キーワード検索では困難だった探索が自然言語での問いかけによって可能になりました。
うちでも使える?
同じ考え方が効きやすいのは、部署や担当領域によって「見てよい情報」がはっきり分かれている組織です。人事情報や組織情報が認証基盤の側で正しく保たれていれば、AIの参照範囲をそこに紐づける発想は、規模が小さくても応用できます。逆に、全社で同じ資料を共有していて情報の線引きがほとんどない組織では、この設計は手間に見合いません。
注意したいのは、分離の単位を細かくするほど「どの資料をどの箱に入れるか」を決める整理の負担が増える点です。組織情報が古いまま放置されていたり、異動のたびに手で権限を直す運用が残っていたりすると、自動追従という前提そのものが崩れます。まず試すなら、いま社内AIに載せられずにいる資料を一つ選び、それを見てよい範囲が既存の認証基盤のグループ設定と一致しているかを照らし合わせてみるところから。技術の検討より先に、ここで食い違いが見つかることも少なくありません。
この事例は2026年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
TIS株式会社
ガバナンスを重視した設計思想を標準実装する「生成AIプラットフォーム」を提供し、大規模エンタープライズ領域で生成AI基盤の構築・導入から運用改善・技術アップデートまで継続支援するIT企業。TISインテックグループ。
塩野義製薬株式会社
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