実施 2022.09 ・ 更新 2026.08.14
ファンケルの肌解析AI、約2週間かかった結果をその場で返す全店サービス
プロジェクト期間:3年以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 熟練者しかできない検査に時間がかかる
- 有料のサービスを気軽に試してもらえない
- 接客の提案に客観的な根拠がほしい
どのようなAIの取り組み?
角層細胞の画像をAIで解析し、最長で約2週間かかっていた肌解析をその場で返せるようにしたAI取り組み
業種
化粧品・健康食品(小売・流通・EC)
取り組み領域
店頭カウンセリング/肌解析
使ったAI
画像解析AI(東芝アナリティクスAI SATLYS)
主な成果
最長約2週間の解析がその場で完了し、体験者の購入単価が向上
化粧品・健康食品を手がけるファンケルは、総合研究所が20年以上積み重ねてきた角層の研究をもとに、角層細胞に含まれる7つのタンパク質を測る「角層バイオマーカー」による肌解析を、旗艦店と通販に限った有償サービスとして提供していました。解析は研究員が専用機器で行うため、結果が出るまでに店舗で約2時間、通販では約2週間を要していました。そこで2018年にAI活用の検討を始め、東芝デジタルソリューションズの「東芝アナリティクスAI SATLYS」を用いてフェーズを分けた開発を進め、2022年9月に「AIパーソナル角層解析」を全国の直営店で開始します。テープで採取した角層を店頭の肌スコープで撮影し、クラウド上の共通基盤で解析してその場で結果を返す、無料のカウンセリングへと提供の形そのものが変わりました。
出典:日本初の「AIパーソナル角層解析」を実現した東芝アナリティクスAI「SATLYS™」 | 事例紹介:デジタル事業 | 東芝 発行元:東芝
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
肌解析サービス自体は好評を得ていました。それでも提供先が旗艦店と通販に限られていたのは、解析の一件ごとに研究員の手と目が必要だったからです。専用の機器でバイオマーカーを測り、角層細胞の形状を目視で確かめる工程がある以上、こなせる件数は研究員の稼働時間で決まり、費用も有償に設定せざるを得ませんでした。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は「解析が遅い」ことそのものではなく、サービスの入り口が狭く固定されていた点にあります。約2週間という待ち時間は、ちょっと試してみたい人を遠ざけるには十分な長さで、有償という条件と重なれば、体験するのは初めから関心の高い層に絞られます。研究の蓄積が深いほど、それを届けられる相手が限られてしまう。この裏返しの構造こそが、AI活用を検討する動機になったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
起点になったのは、20年以上にわたる角層研究と、その過程で積み上げられた角層細胞のデータをAIの学習対象に据えた判断です。研究員が専用機器の測定値と目視で読み取っていた判断を、画像からの推定に置き換えるという狙いがはっきりしており、人の目では見過ごしてしまう部分まで拾わせることも織り込まれていました。開発では、AIモデルの試作・評価から本番環境の構築・運用・保守、さらに学習に必要な教師データの作成までを東芝デジタルソリューションズが担い、ファンケル側は研究知見の提供とサービス設計に集中する分担がとられています。検討開始から提供開始まで数年をかけ、フェーズを区切って進めた進め方も、精度が要求される解析を実用に載せるうえで効いたと考えられます。
次に効いたのが、解析結果を店頭で通じる言葉に翻訳する工程を、独立した設計課題として扱ったことです。研究所で使われる指標や用語をそのまま画面に出しても、カウンセリングの場では意味を持ちません。ここでは肌トラブルに対抗する力を7つの「肌力」と定義し直し、悩み別に分類するなどの整理が、研究側と店舗販売企画側の話し合いを重ねて詰められました。良い悪いの二択ではなく、なぜそう判断できるのかを論理的に伝える形に落とし込んだ点が、日々の接客で使えるサービスにした分岐点だったと見ています。
三つ目は、共通基盤に再学習とAIモデル更新の機能をあらかじめ組み込んだ構成です。作って終わりではなく、運用しながら精度を上げ続ける前提で仕組み側を用意しておく設計は、判定の精度が価値に直結するサービスと相性が良いはずです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
全直営店で始まったサービスでは、来店客が10問の問診に答えている間に解析結果が返ります。体験した人と未体験の人を比べると購入単価が大きく上回り、購入アイテム数や再来店率、継続率も上がっています。利用者の4人に1人は20代や30代前半で、それまで中心だった30代から50代の外側へ客層が広がりました。結果はメンバーズアプリでいつでも見返せ、継続して受けると過去データとの比較がグラフで示されます。現在は予測の正答率をさらに高める研究開発が続いています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判定の材料となるデータが自社に蓄積されていて、その判定が特定の担当者に集中している業務です。この事例では測る対象が7つのタンパク質として定義され、テープでの採取と撮影という手順まで標準化できたため、画像からの推定に置き換える道筋が描けました。逆に、判定基準が案件ごとに変わったり、そもそも入力データの取り方が担当者によってばらつくような業務では、同じ発想でモデルを作っても店頭で即断できる水準には届きにくいはずです。
もう一点、見落とされやすいのが伝え方のコストです。結果を社内で使うのではなく顧客に直接見せるなら、指標の呼び名や見せ方を作り直す作業に、モデル開発と同じくらいの手間がかかると見込んでおいたほうがよいでしょう。まずは、いま顧客や現場に渡している報告書や結果表を一枚だけ手に取り、専門用語のまま残っている項目に印を付けてみてはいかがでしょうか。そこがAI化したときに真っ先に詰まる場所です。
この事例は2022年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
東芝デジタルソリューションズ
画像解析とAI技術に強みを持ち、東芝アナリティクスAI「SATLYS™」を提供する企業。顧客との共創を通じてAIモデルの設計・学習およびAI推論サービスの構築を行い、AIモデルの試作・評価から本番環境の構築・運用・保守までをサポートする。
株式会社ファンケル
出典・参考情報
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