実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.15
経済産業省の生成AI環境、職員約7000人・150万回利用まで広がった進め方
プロジェクト期間:2年 〜 3年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 資料集めと下調べに時間を取られている
- 情報漏えいが怖くて生成AIを使えない
- ツールを入れても社内で使われず終わる
どのようなAIの取り組み?
現場ヒアリングと実利用の検証を重ねて省内専用の生成AI環境を構築し、職員約7000人の利用まで広げたAI取り組み
業種
中央省庁(公共・行政)
取り組み領域
行政事務全般(文書作成・要約・翻訳・調査)
使ったAI
省内専用の生成AI環境「METI-LLM」
主な成果
職員約7000人が累計150万回以上利用
経済産業省は、2023年度から組織全体で業務改革を進めるなかで、政策立案に必要な情報の収集や分析を人手に頼るしかない状況を変える手立てとして、生成AIの活用に着手しました。まず導入可能性検証調査として各課の職員にヒアリングを行い、日々の業務を問い合わせ対応、文案作成、要約、翻訳、論点抽出、壁打ち、コード生成、事例収集、データ解析の9類型へ整理。150人の職員が実際に使う検証環境を用意し、利用ログとアンケートで手応えを確かめたうえで、2024年度に全省での導入を決めています。同年4月に省内専用の生成AI環境「METI-LLM」の構築を開始し、3カ月後の6月末に稼働。パートナーとして参画したアビームコンサルティングが、業務フローの整理からプロトタイプの提供、システム実装までを担いました。
出典:生成AI活用で行政事務の効率化と高度化に踏み出す、現場の声を反映した安全で利便性の高いAI環境を構築 | 事例 | ABeam Consulting 発行元:アビームコンサルティング株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
経産省が抱えていたのは、政策課題が絶えず積み上がる一方で、知識の収集も分析もアイデア出しも人が手を動かすしかない、という状態でした。加えて行政の現場には、セキュリティ事故はもちろん、誤った理解や情報発信も起こしてはならないという前提があります。
編集部の見立てでは、この困りごとの中心は作業量そのものよりも、間違えられない組織が確率的に答えを返す道具をどう業務へ組み込むか、という信頼のつくり方にあったのではないでしょうか。処理を速くするだけなら道具を配れば済みますが、職員が安心して使えなければ利用は広がらず、人の思考力をより本質的な課題へ振り向けるという当初の狙いにも届きません。安定的に価値を生む仕組みを実現できるかの検証から入った順序は、その構造をよく表しています。
どうやって、うまくいったのか
現場の業務を9つの類型へ抽象化してから技術を当てにいく、という順序の取り方が、この取り組みの土台になっています。各課へのヒアリングで職員が何に時間と負荷を割いているかを明らかにし、集まった声を問い合わせ対応や文案作成、要約、翻訳、論点抽出といった単位へまとめ直す作業は地味ですが、生成AIと相性の良い仕事とそうでない仕事を線引きする材料になります。生成AIなら何でも自在にできるのではないかという期待と、実際の得手不得手との差を、実装前に埋めておく働きもあったと考えられます。
参考にできる先行事例がまだ乏しい状況で、150人の職員に実際に使ってもらい、利用ログとアンケートという二つの経路から反応を集める進め方も効いています。何をどれだけ使ったかという行動の記録と、使ってどう感じたかという主観が揃えば、思い込みではなく観測をもとに仕様を決められます。プロトタイプを短い間隔で出して評価を反映し、改良を重ねるサイクルは、正解が定まっていない領域で品質を引き上げる現実的な手段。
安全性の確保と画面の使いやすさを別々の課題として扱わず、同じ構築工程の中で並行して詰めた設計も見逃せません。省庁固有の多数のセキュリティ要件を一つずつクリアする作業と、職員に興味を持ってもらえる見栄えを作り込む工夫は、向きが逆に見えて、どちらが欠けても日常利用にはつながらないはずです。稼働後も利用状況をモニタリングして改善ポイントを探り、新機能の提供や操作性の向上へつなげる運用が続き、メジャーバージョンアップは4回に達しています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年10月時点で、METI-LLMは全職員の6割弱にあたる約7000人が累計150万回以上、1日平均でも約900人が6600回以上利用する状態になっています。アンケートには「政策立案の糸口をつかむきっかけとなった」「業務において欠かせない存在になっている」といった声が寄せられ、省内での定着が進みました。経産省は今後、資料を生成AIが理解しやすい形式で蓄積・整理するデータ整備、職員のリテラシー向上、METI-LLMの継続的な改善を進める考えです。
うちでも使える?
応用しやすいのは、文章を書く・まとめる・訳す・調べるといった作業が業務時間の相当部分を占め、しかもその作業が部署をまたいで共通している組織です。この事例で最初に行われたのは製品選定ではなく、職員がどの作業にどれだけ時間を使っているかの把握でした。共通の型が見つかれば、少人数の試用でも効果の当たり外れを判断できます。
一方、扱う情報の機密度が高く、独自のセキュリティ要件を満たす環境を自前で用意しなければならない場合、同じ進め方をそのままなぞるのは簡単ではありません。判断の根拠を外部へ説明する責任が重い業務でも、生成AIの出力をどこまで下書きとして扱うかの線引きに相応の時間がかかります。まず試すなら、この一週間で自分が書いた文書を数点並べ、そのうち「型が決まっていて誰が書いても大差ない」ものがどれかを見てみる。そこが最初の候補になります。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
アビームコンサルティング株式会社
日本およびアジア発のNo.1グローバルコンサルティングファームを目指し、「Real Partner®」として企業や組織と共に新たな未来を共創し、企業変革の実現を支援するコンサルティングファーム。
経済産業省
出典・参考情報
生成AI活用で行政事務の効率化と高度化に踏み出す、現場の声を反映した安全で利便性の高いAI環境を構築 | 事例 | ABeam Consulting
発行元:アビームコンサルティング株式会社
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