実施 2024.05 ・ 更新 2026.08.15
国土交通省の河川事務所が住民の電話に音声AIで24時間応答する仕組み
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 電話対応に職員の手が取られている
- 時間外の問い合わせに応えられない
- 同じ質問への回答を毎回繰り返している
どのようなAIの取り組み?
対話型の音声AIとクラウド型のコールセンター基盤を組み合わせ、住民からの問い合わせ電話に24時間365日応答する窓口を立ち上げたAI取り組み
業種
河川管理(公共・行政)
取り組み領域
住民からの問い合わせ電話対応
使ったAI
対話型音声AI(ボイスボット)+クラウド型CTI
主な成果
頻度の高い約50項目に24時間365日応答する窓口が稼働
荒川の下流部およそ30kmを管理する国土交通省関東地方整備局 荒川下流河川事務所が、住民からの問い合わせ電話にAIが音声で応答する仕組み(ボイスボット)を立ち上げました。2023年に公式ホームページで動き始めたチャットボットに続く窓口業務の効率化策で、TIS株式会社の対話型AIサービス「Dialog Play®」と、クラウド型のコールセンター基盤「Amazon Connect」を組み合わせて構成されています。代表番号への着信を新しく取得した外線番号経由でクラウドへ転送し、話された内容を文字に変換したうえで、AIが文脈を解析して用意された回答を合成音声で読み上げる流れです。応答の対象は河川敷の利用可否など問い合わせ頻度の高い約50項目と、担当課への取次依頼。緊急性のある電話は職員へ回す有人対応の流れも併せて組み込み、2024年5月初旬に正式稼働しています。
出典:国土交通省関東地方整備局 荒川下流河川事務所様 | お客様事例 | TISI株式会社 発行元:TISI株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
電話をかけてくる住民が尋ねるのは、河川敷を使ってよいか、花火をしてもよいかといった、答えの決まっている事柄が中心です。事務所は2023年にホームページ上でチャットボットを公開し、こうした質問の自動応答をすでに始めていましたが、そこで受け止められるのはPCやスマートフォンで調べる人に限られます。インターネットを使わない住民の疑問は、従来どおり電話として職員の手元に残り続けます。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は問い合わせの絶対量ではなく、デジタル化を一段進めたことでかえって輪郭がはっきりした、チャネルの偏りにあったのではないでしょうか。自動化がウェブ側だけで進むと、電話しか使わない層への対応がそのまま職員の時間として残り、24時間365日応じたいという目標との距離も縮まりません。窓口を減らすのではなく、まだ人手で受けている入口をどう扱うかが、次の一手として浮上した格好です。
どうやって、うまくいったのか
AIに任せる範囲を、問い合わせ頻度の高い定型的な質問と、担当課への取次依頼だけに限定した設計が、この仕組みの土台になっています。「緊急コールセンターにつないでほしい」といった、災害時に生じうる切迫した電話は職員へ転送する有人フローを並走させ、判断や聞き取りを要する用件はAIに背負わせていません。会話の途中でボタンを押させるIVR(電話機の番号入力で案内を分岐させる自動応答)ではなく、話しかければ答えが返る形を選んだ判断も、かける側の手間を増やさない方向で一貫しています。
既存のチャットボット用FAQを会話シナリオの下敷きにしながら、それを耳で聞いて分かる文章へ作り替えた工程は、実用性を大きく左右したと考えられます。もとの文書に括弧書きの補足があると、音声AIが「カッコ」とそのまま読み上げてしまい意味が通らなくなるため、所内の各部署が手分けしてチェックと修正にあたり、その往復を10回ほど重ねて精度を高めています。目で読むために整えられた文書資産は、そのままでは耳で聞く回答にならない。この当たり前でいて見落とされやすい段差に、期間と人手を正面から割いたことが効いたのでしょう。
電話網に手を入れない構成も、公共インフラを担う組織で無理なく進めるための工夫です。災害に備えた国土交通省独自の堅牢な内線電話網はそのままに、新規取得した外線番号をクラウド側へ割り当て、代表番号からの転送で受ける形にしたことで、既存の通信環境への影響を避けています。開発を担ったTISは並行して音声認識のチューニングを受け持ち、河川敷など屋外からの通話が風の音で拾いにくい点に対する音量の最適化や、「はい」「えーっと」といった相づちが言葉として誤認識されないための調整を進めました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
AIコールセンターは2024年5月初旬に正式稼働し、河川系の事務所としては初のボイスボットとなりました。事務所の公式キャラクター「ガンブッチ君」が声で答えるというコンセプトを掲げ、住民に親しまれる窓口を目指しています。応対件数や職員の負荷がどれだけ変わったかを示す数値はまだ示されておらず、現時点で確かなのは、電話という入口に24時間365日の自動応答が加わったという事実です。今後は会話シナリオを増やすことが当面の目標で、その追加作業を事務所内で完結させる体制づくりや、他の河川系事務所への知見共有も視野に入っています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、かかってくる電話の中身が「答えの決まっている質問」に偏っている組織です。施設の利用可否、受付時間、持ち込みの可否といった問い合わせが繰り返し寄せられる窓口なら、条件はかなり近いといえます。ウェブのFAQやチャットボットの文章がすでに手元にある場合は、台本をゼロから起こす必要がないぶん着手の負担が軽くなりますが、そのまま流用できるわけではない点はこの事例が示すとおりです。
反対に、相手の事情を聞き取りながら回答を組み立てる用件、たとえば苦情の一次受けや、状況によって案内先が変わる連絡は、シナリオ型の音声応答では受け止めきれません。屋外や騒音下からの通話が多い業務でも、聞き取りの精度をどこまで詰められるかが可否を分けます。手始めに、自社のFAQを一つ選んで声に出して読み上げてみてはいかがでしょうか。括弧書きや箇条書きが耳で意味をなさないと感じたら、そこが最初に手を入れる場所です。
この事例は2024年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:顧客対応・サポート
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
TIS株式会社
対話AIサービス「Dialog Play®」を提供するTISインテックグループのIT企業。ビジネスイノベーション事業部、デジタルイノベーション事業本部などを擁し、チャットボット・ボイスボット構築やAmazon Connectを組み合わせたAIコールセンター構築を手掛ける。
国土交通省関東地方整備局 荒川下流河川事務所
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