実施 2024.08 ・ 更新 2026.08.15
奥村組が4カ月で構築した自社専用の生成AI、全社の約20%が使う社内基盤
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 部署ごとに資料が散らばっている
- 社員が個々にAIを使うのが不安
- 総務や人事に同じ質問が集まる
どのようなAIの取り組み?
AWSとMicrosoft Azureを組み合わせたマルチクラウド構成で、社内専用の対話型生成AIと社内文書を参照するRAGを段階的に構築したAI取り組み
業種
総合建設業(建設・土木)
取り組み領域
全社の社内情報活用/社内問い合わせ
使ったAI
対話型生成AI「x-MirAI」(LLM+RAG)
主な成果
全社で約20%、バックオフィス部門で約50%の社員が利用
総合建設会社の奥村組が、東芝デジタルソリューションズの生成AI・クラウド構築の知見を活用しながら、グループ専用の対話型生成AI「x-MirAI(クロスミライ)」を構築しました。基盤はAWSとMicrosoft Azureを組み合わせたハイブリッド構成で、特定のAIモデルに縛られない拡張性を確保しています。着手したのはまず専用のユーザーインターフェースの開発と、Azure OpenAI Serviceを使ったセキュアなChatGPT利用環境の整備で、社内の一般情報に答えるサービスとして2024年8月にリリースされました。続く2025年3月には、社内文書にアクセスできるRAG(社内の資料を検索してAIの回答に使う仕組み)機能を追加し、搭載する情報の選定は部門別のワーキンググループが担っています。並行して、全国の拠点での勉強会など普及の活動も進められました。
出典:対話型生成AI「x-MirAI(クロスミライ)」を構築 マルチクラウドかつセキュアな生成AI利用でDXを加速 | 事例紹介:デジタル事業 | 東芝 発行元:東芝
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
導入前の奥村組では、生成AIで業務を効率化したいという声が社内で増える一方、各部署が抱える膨大な施工データや技術マニュアルは全社でうまく活用できていませんでした。社員が思い思いに一般的な生成AIツールを使うことには、情報漏えいをはじめとするセキュリティ上の不安もありました。バックオフィスのデジタル化は進んでいたのに対し、現場ではアナログ重視の文化が根強く、効率的な情報共有や迅速な意思決定を阻む要因になっていた点も重なります。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「AIツールを持っていないこと」ではありません。社内の知識が部署という単位で閉じたまま置かれ、それを安全に開くための受け皿が存在しなかったことにあります。だからこそ、個人が便利なツールを使い始めるほど情報の分散とリスクが同時に広がるという、やっかいな状態が生まれていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
マルチクラウド構成を選び、AWSとMicrosoft Azureをまたいで生成AIを扱えるようにした設計が、この取り組みの土台にあります。パートナー選定で重視されたのは「最新技術への対応力」と「長期的な信頼関係構築」で、1年後、2年後に何が主流になるか分からないという前提に立ち、さまざまなモデルを選択的に利用できる拡張性が要件に据えられました。生成AIの領域では、導入時点の性能そのものより、後から中身を差し替えられる余地をどれだけ残せるかが効いてきます。その判断を最初の設計に織り込んだことが、この構成の要点だと考えられます。
機能を一度に盛り込まず、まず社内の一般情報に答える対話環境を出し、その後に社内文書を参照するRAGを重ねる順序も、実装を前へ進めた要因でしょう。UI設計では全社的な利用促進を狙って使いやすさが最優先され、履歴機能やお気に入り機能、全社文書の横断検索、部門別の情報アクセス制御が実装され、親しみやすさのために専用キャラクター「ミライちゃん」まで用意されています。回答精度を磨く前に「触ってもらえるか」を設計要件へ引き上げたやり方は、全社員に使ってもらうという目標から逆算した選択だったのではないでしょうか。
RAGに載せる社内情報の選定を、土木、建築、安全といった部門別のワーキンググループに委ねた進め方は、検索の質を左右する部分を業務の当事者の手に置いた点で理にかなっています。全国の拠点での勉強会や現場責任者会議での直接説明といった地道な普及活動も、同じ発想の延長線上にあります。どの資料を入れるかを情報システム部門だけで決めていたなら、現場が求める情報との距離は縮まりにくかったはずです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
リリース後、本社などのバックオフィス部門では約50%、全社では約20%の社員が利用するところまで広がりました。総務・人事部門に問い合わせていた事務手続きを、夜間や休日でも自分のタイミングで確認できるようになり、人に直接聞きにくいことも気軽に質問できる場になっています。経営層向けの報告書作成時の文章校正やExcelの数式作成支援にも使われ、勉強会では「こんな便利なものがあるなら、もっと早く利用したかった」という反応も出ています。一方で現場の技術者の利用率は低いままで、現場で真に役立つ情報の拡充が課題として残されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、規定やマニュアルが部署ごとに分かれて保管され、同じ質問が管理部門に繰り返し届いているような組織です。この事例で最初に効果が見えたのも、答えが文書として確かに存在する事務手続きの領域でした。裏を返せば、判断の根拠が人の頭の中にあり、参照すべき資料がまだ形になっていない業務では、同じ仕組みを載せても利用は伸びにくくなります。実際にこの取り組みでも、現場技術者の利用率の低さが課題として残っています。
複数のクラウドをまたぐ構成は、モデルを入れ替えられる自由度と引き換えに、運用と管理の負荷を引き受ける選択でもあります。まずは自社の規模で維持できる範囲かどうかを見極めたいところ。手を動かす一歩としては、管理部門に届く質問を数日分だけ書き留め、その答えが文書として残っているか、最新版がどれか判別できるかを確かめてみる。AIに載せられる社内情報がどれだけあるのか、それだけでかなり見えてきます。
この事例は2024年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
東芝デジタルソリューションズ株式会社
生成AI・クラウド構築技術のノウハウを持ち、生成AIの導入検討から業務活用までワンストップで支援。社内文書・ナレッジ活用から工場データ・現場適用、設計・開発業務応用まで幅広い用途の生成AIソリューションを提案・提供する。
株式会社奥村組
出典・参考情報
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