実施 2026.06 ・ 更新 2026.08.15
年16万時間の業務削減を目標に掲げる、素材メーカーの生成AI活用ロードマップ
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 機密文書が多くAIに読ませられない
- 生成AIがメール作成止まりで終わっている
- AI活用の推進が情シス任せになっている
どのようなAIの取り組み?
生成AIの活用を3段階のロードマップに整理し、社内文書を参照するAI基盤の構築と現場主導のアプリ開発を並行して進めているAI取り組み
業種
化学・素材製造(製造業)
取り組み領域
全社の業務効率化/研究開発の情報収集
使ったAI
生成AI基盤・RAG(Agentic AI Platform)
主な成果
2027年度に国内で年間16万時間の業務効率化を目標
色材や機能材料、パッケージ関連の事業を手がけるartienceは、生成AIの全社活用をTISとともに3段階のロードマップとして設計しています。第1段階は日常業務の効率化、第2段階は外部システムとAPIでつなぐ業務適用、第3段階は自律的に動くAIエージェントが素材開発などの価値創造を担う段階という組み立てで、国内では2027年度に年間16万時間の業務効率化効果を目標に掲げています。基盤にはTISの「Agentic AI Platform」を採用し、社内文書を検索して回答するRAGの精度と、組織単位の閲覧権限管理を重視しました。議事録作成や翻訳を担う共通アプリをグループ情報システム部が開発する一方、各部門が自らRAGアプリを作る動きも始まり、第2段階の先行例としてRPAと連携した論文監視システムが構築されています。
出典:artience株式会社様 | お客様事例 | TISI株式会社 発行元:TIS株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
第1段階に入る前から生成AIを使える環境自体はあり、メールの文面をつくる程度には使われていました。ただし現場が求めていたのは社内資料に基づく回答で、とりわけ技術・研究部門では、自社独自の専門知識をAIが理解していなければ実務では使えないという壁がありました。扱う文書の秘密性が極めて高いため、利便性と強固なセキュリティを両立する環境をつくれるパートナー探しも急務でした。
困りごとの本質は、AIの性能でも社員の習熟度でもなく、自社の知識をAIに預けられる状態が用意されていなかったことにあるのではないでしょうか。汎用的な文章生成で止まっていたのは、業務の核心にある資料ほど外に出せないという制約に突き当たっていたためで、裏を返せば、機密を扱える器さえ整えば一気に実務へ近づく段階にあったとも読めます。
どうやって、うまくいったのか
生成AIの活用を3つのフェーズに切り分けた設計が、この取り組みの背骨になっています。日常業務の効率化から始め、外部システムとのAPI連携を挟み、自律的に動くAIエージェントへ向かうという順序は、秘密性の高い文書を扱う事業の性格に合わせて安全側から歩を進める組み立てだと考えられます。既製のパッケージを入れて終わりにせず、「Agentic AI Platform」を土台に検索精度や権限管理をTISと伴走しながら育てるという選び方も、この段階設計と噛み合っています。到達点を先に置きつつ現場の習熟度に合わせて段を上げる進め方であれば、高度な仕組みを一度に配って使われないまま終わる事態を避けやすい。
機密情報の扱いを、禁止ではなく統制の設計として先に固めた点も見逃せません。部門長の判断でAIに入力してはいけない情報を列挙した「秘密情報統制シート」を用意し、利用者がいつでも確認できる状態にしたことは、判断を個人の勘に委ねない仕組みづくりです。さらに組織単位で閲覧権限を管理できる基盤を土台に置いたため、共有すべきでない情報を抱える部門でも、自部門の秘密情報を持ち込んだうえでRAGアプリの開発に踏み出せます。編集部の見立てでは、この権限の線引きこそが、社内資料をAIに読ませるという入口を開いた要因です。
作る人を情報システム部門の外へ広げた体制設計も、推進力になっています。議事録や翻訳のような誰もが使う機能は共通アプリとして中央で作り込み、部門や会議体で流儀が分かれる部分は最大公約数的な出力に寄せたうえで、自社フォーマットのファイルとして書き出せるようにする。一方、部門固有のノウハウを扱うRAGアプリは現場が自ら組み立て、その担い手となる核人材を研修で継続的に送り出す。中央がまとめて作るものと現場が自ら作るものを分けたこの線引きは、開発の依頼待ち行列をつくらないための設計だと読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
第2段階の先行事例である論文監視システムでは、新規事業領域に参入する際に素材などの学術的な最新情報を追いかける手間が大幅に減っています。日常業務用の共通アプリは活発に利用され、自社フォーマットでのファイル出力が特に好評です。組織単位の閲覧権限管理は、各部門でのRAGアプリ開発の活性化にもつながりました。なお年間16万時間という業務効率化効果は2027年度に向けた国内の目標であり、達成済みの実績ではありません。核人材の育成も、2026年までに延べ200人という進行中の目標です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、生成AIは配ったものの、機密の壁があって社内資料を読ませられず、文面づくり止まりになっている組織です。この事例で効いているのは高度なモデルそのものよりも、AIに入れてよい情報と部門ごとの閲覧範囲を先に決めた運用ルールの側であり、この順序は業種を問わず取り入れやすい部分だと考えられます。
一方で、そのまま持ち込みにくい面もあります。部門長がAIに入力してはいけない情報を判断し、シートとして維持し続けるには相応の管理体制が要りますし、各部門が自分たちでRAGアプリを作る形は、育成の研修を数年単位で回せる規模があってこそ成り立ちます。数十万ページ規模の技術資料をAIエージェントに解析させる構想にしても、蓄積された資料と、それを使う研究開発上の目的があって初めて意味を持つものです。小さく試すなら、会議体をひとつ選んで議事録づくりをAIに任せ、出てきた要約が自部門の様式と判断のツボに合っているかを確かめるところから始めてみてはどうでしょうか。
この事例は2026年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
artience株式会社
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