実施 2023.11 ・ 更新 2026.08.17
中小IT企業が履歴書選別を生成AIで検証、内定まで最大75%短縮の見込み
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 選考が長引き優秀な人を逃す
- 応募書類の確認が追いつかない
- 採用の合否判断を担当者一人が抱える
どのようなAIの取り組み?
生成AIで履歴書の一次選別を任せられるかを検証し、内定までの期間を最大75%短縮できる見込みを得たAI取り組み
業種
AIレコメンダー開発(情報・IT)
取り組み領域
人事/採用選考の書類選別
使ったAI
生成AIプラットフォーム「watsonx.ai」(大規模言語モデル)
主な成果
内定までの時間を最大75%短縮できる見込み
AIレコメンダー(利用者に合う商品や情報を推薦する仕組み)を手がけるSilver Egg Technologyが、日本アイ・ビー・エム(IBM)と組み、生成AIプラットフォーム「watsonx.ai」で採用選考の一部を機械に任せられるかを試した取り組みです。対象としたのは、人事担当者のもとに届く履歴書の選別でした。IBM Client Engineeringチームが伴走し、実際の履歴書サンプルと職務記述書を材料に、大規模言語モデル(LLM。大量の文章を学習し、文脈を読んで応答するAI)が候補者をどう評価するかを実証実験(PoC。小規模な試験導入)として検証しています。その結果、履歴書を素早く、かつ偏りなく評価して有望な応募者を見つけ出せることが確認され、数週間という短い期間で人事部門における生成AI活用の可能性を示すPoCが組み上がりました。
出典:Silver Egg Technology | IBM 発行元:日本アイ・ビー・エム株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
人事担当者の手が足りず、届いた応募書類の絞り込みも、応募者への返答も後ろへずれていく。その結果、面接から内定までのプロセスが長期化し、見極めているあいだに有望な求職者が他社へ流れてしまう状態にありました。さらに、担当者が自分の業務負荷を軽くするために、優れた候補者をあえて他社へ紹介してしまうケースまで生まれ、採用の質そのものが下がる悪循環に陥っていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は応募が多すぎることではなく、合否の判断速度が担当者一人の処理能力に縛りつけられていた点にあります。とりわけ、負荷を減らすために良い候補者を手放すという行動は、単なる忙しさの表れではなく、業務量が採用基準そのものを侵食し始めていた危険信号だったのではないでしょうか。人を選ぶ基準が、その人の適性ではなく、担当者に残っている時間で決まりつつあった。そう捉えると、急ぐべきは増員よりも、判断を担当者から切り離して回せるようにすることだったと読み解けます。
どうやって、うまくいったのか
対象を履歴書の選別という一工程に絞り込んだ設計が、検証を成立させた最大の要因だと考えられます。採用活動をまるごとAIに置き換えるのではなく、届いた書類を職務記述書と照らし合わせて有望な候補を拾い上げる部分だけを切り出しています。職務記述書は、求める経験やスキルをすでに文章として持っている、いわば出来合いの物差しです。AIに何を判断させたいのかが最初から言語化されている領域を選んだことが、短期間で答えの出る検証につながっています。
材料に実際の履歴書サンプルと職務記述書を使った点も見逃せません。それらしく作った架空データで試すと、精度が良く見えても現場に持ち込んだ途端に崩れることがあります。書式も経歴の書きぶりもばらついた本物の書類を入力にしたからこそ、確認できた評価の速さや偏りのなさが、実際の人事業務の感覚と地続きの結果として受け止められます。
外部の技術チームが手を動かす形で入り、数週間という区切りでPoCまで到達させた進め方も効いています。中小企業が専任のAI人材を抱え続けるのは現実的ではなく、自社は現場の材料と評価の観点を出し、技術面はIBM Client Engineeringチームが担うという役割分担が、着手のハードルを下げました。短い期間で切ったことで、「やってみないと分からない」という議論が長期の検討会議に膨らむ前に、実物を触って判断できる段階へ進んでいます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
検証を通じて、履歴書の受領から内定を出すまでの時間を最大75%短縮できる見込みが立ちました。1週間以内に適切な求職者へ内定を提示できる体制が整えば、優秀な人材を確実に確保し、より前向きで挑戦的な職場をつくれると期待されています。いずれも実証実験の結果として見えた見通しであり、実運用での成果はこれからの段階です。今後は人間のアナリストによる評価とAIの精度を比較するベンチマークテストが計画されており、速さだけでなく判断の質まで確かめにいく点に、この検証の慎重さが表れています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、選ぶ基準がすでに文書として存在し、判断が書類の上で完結する場面です。求人票や職務記述書、業務要件書のように「何を満たしていれば通すのか」が書かれた資料があるなら、それをそのままAIへの指示の土台にできます。採用に限らず、社内の人材配置や、案件に合うスキルを持つ人を探す場面へ広げる余地もあるでしょう。
一方で、応募が少なく一次選別に時間を取られていない組織では、短縮できる時間そのものが小さく、効果は出にくくなります。選考基準が面談での対話の印象や紹介してくれた人との関係性に多くを負っていて、文章にできていない場合も、AIに渡す物差しが作れません。加えてこの事例はまだ検証段階であり、実務での精度と公平性はこれからのベンチマーク次第です。書類の順位づけまでをAIに任せ、合否の最終判断は人が持つ、といった線引きは残しておきたいところ。まずは直近で出した求人票を一枚開き、そこに書かれた条件だけで候補者を選び分けられるか、自分の目で読み直してみてはどうでしょうか。
この事例は2023年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:バックオフィス・管理部門(人事・経理・法務)
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
日本アイ・ビー・エム株式会社
信頼できる安全なAIプラットフォームに基づくエンタープライズAIソリューションのエコシステム育成に取り組む企業。IBM Client Engineering によるクライアント支援や、企業が自社のニーズに合うAIソリューションを構築できるAIプラットフォーム「IBM watsonx.ai」を提供している。
Silver Egg Technology社
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
