実施 2026.02 ・ 更新 2026.08.13
フジテレビのCM枠づくりをAIで自動化、年間7,500時間の削減を見込む取り組み
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘に頼った業務が回らない
- 案づくりに時間を取られている
- 担当者が抜けると仕事が止まる
どのようなAIの取り組み?
テレビCMのスポット広告枠の作案業務を自動化し、年間7,500時間の稼働削減を見込むAI取り組み
業種
テレビ放送(メディア・広告・コンテンツ)
取り組み領域
営業/テレビCMのスポット広告枠の作案
使ったAI
ABEJA Platformを基盤とした作案自動化システム「AI作案士」
主な成果
年間7,500時間の稼働削減を見込む
テレビCMのスポット広告は、番組を指定せず放送局が設定する時間帯の枠を購入して流す形の広告です。広告主ごとに重視する時間帯や出稿量、届けたい視聴者層が異なり、枠の組み合わせも膨大になるため、放送スケジュール案をつくって関係者と調整し確定させる「作案」は複雑になりやすい業務です。フジテレビはABEJAと連携し、この作案と調整・仕上げを自動化する「AI作案士」システムを構築、実装しました。ABEJAの基盤システムであるABEJA Platformと、フジテレビに蓄積された過去約5万件の実績データを用い、広告枠の在庫や視聴率動向、編成情報をリアルタイムに反映しながら広告主ごとの傾向を踏まえた案を出す仕組みです。運用はAIの出力に担当者が修正を加えるHuman in the Loop(人が介在して確認・修正する進め方)の形をとります。
出典:ABEJA、フジテレビと共に「AI作案士」システムを開発 | 株式会社ABEJAのプレスリリース 発行元:株式会社ABEJA
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
作案は、広告主のニーズと放送枠の組み合わせを突き合わせて案を練る仕事で、テレビ業界では複雑さゆえに担当者の経験と勘に依存しやすく、属人化の解消と効率化が長年の課題となっています。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「時間がかかること」よりも、判断の中身が個人の頭の中にしか存在しないことにありました。組み合わせが膨大なうえ、視聴率の動きや編成の状況によって望ましい答えが変わる業務は、手順書に書き起こしても他の人が同じ結論にたどり着けません。その結果、特定の担当者がいなければ回らない状態が固定化し、営業担当社員の工数の大半が作案に吸い寄せられていく。作業量を削る話ではなく、判断の根拠を個人の外に出せるかどうかが問題の中心だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
出発点に置かれたのは、作案担当者の全業務プロセスと現況を聞き取り、そこから緻密な要件定義を組み立てるという進め方でした。経験と勘に依存する業務をシステムに移すとき、最初の関門は「担当者が何を見て何を判断しているのか」が言語化されていないことにあります。表に見える手順をなぞるだけでは拾えない判断の分岐まで要件に落とし込む工程に手間をかけた設計が、後段のデータ活用を成立させる土台になったと考えられます。
二つ目の要因は、蓄積されたデータと動き続けるデータを切り分けて扱った構成にあります。広告主ごとの傾向やパターンは過去約5万件の実績から捉え、広告枠の在庫や視聴率動向、編成情報はリアルタイムに反映する。さらに基幹業務システムである営業放送システムと連携させることで、案を組む時点の情報が常に最新に保たれます。過去の傾向だけでも、その瞬間の空き枠だけでも作案は成り立たないという業務の性質に、データの持ち方を合わせた設計です。
三つ目に効いているのが、AIの出力を最終形とせず、担当者が修正を加えるHuman in the Loopを運用の前提に据えた点です。判断の基準に個人差を含む業務では、初期の出力がそのまま実務に耐えるとは限りません。修正が入る前提にしておけば現場は使い始めやすく、その修正そのものが次の精度向上の材料になります。完成度が上がりきるのを待たずに動かし始められる形にしたことが、実装まで到達できた理由の一つではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
営業担当社員の業務工数の約8割を占めていたテレビCMのスポットプランニング業務について、年間7,500時間の稼働削減が見込まれています。これは実績値ではなく、実装時点での見込みとして示された数字です。フジテレビは、これによって新たに生まれる時間を広告主や広告代理店への提案活動の強化に充て、満足度の向上につなげる方針を示しています。削減幅そのものより、空いた時間の使い道まで併せて設計されている点が、この取り組みの成果の輪郭を作っています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断の基準が言葉になっていない一方で、過去の意思決定の結果がデータとして残っている業務です。作案のように選択肢の組み合わせが膨大で、担当者ごとに結論が揺れる仕事では、積み上がった実績が事実上の学習材料として働きます。配車、人員配置、枠や在庫の割り当てなど、複数の条件を突き合わせて案を組む業務は構造が近いと考えられます。
一方で、同じ形がそのまま効きにくい場面もあります。この事例では、広告枠の在庫や視聴率動向、編成情報を基幹システムから随時取り込める環境があったからこそ、その時点の状況を踏まえた案が出せています。判断に必要な情報が担当者のメールや口頭のやり取りに散らばっている状態では、AIに渡す前のデータ整備そのものが本体の工事になります。案件の件数が少なく、傾向を捉えるだけの材料が集まらない業務も同様です。まず確かめたいのは、直近1年の案件について「誰が、何を見て、どう決めたか」がシステム上に残っているかどうか。残っていないなら、その記録を取る運用に切り替えるところが最初の一歩になります。
この事例は2026年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社ABEJA
「ゆたかな世界を、実装する」を経営理念に掲げ、ミッションクリティカル業務へのAI導入支援のため、基盤システムとなるABEJA Platformの開発・導入・運用を行う「デジタルプラットフォーム事業」を展開。2012年の創業時よりABEJA Platformの研究開発を進め、ディープラーニング、LLM、量子コンピューティングなどの研究開発成果を順次搭載している。東証グロース上場。代表取締役CEOは岡田陽介。
株式会社フジテレビジョン
出典・参考情報
ABEJA、フジテレビと共に「AI作案士」システムを開発 | 株式会社ABEJAのプレスリリース
発行元:株式会社ABEJA
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