実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.15
東京ガスが経理申請をSaaSへ集約、独自要件の標準機能化とAI-OCR活用
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 古い社内システムの保守切れが迫っている
- 経費精算がパソコンからしかできない
- 自社独自の申請書式に合うサービスがない
どのようなAIの取り組み?
経理申請業務をクラウドサービスに集約し、スマートフォンからの申請とAI-OCRによる領収書の読み取りまで広げた会計基盤刷新の取り組み
業種
都市ガス・電力供給(エネルギー・インフラ)
取り組み領域
経理・会計/経費精算・伝票起票
使ったAI
AI-OCR(画像から文字を読み取るAI)
主な成果
10年来の懸案だったスマホ申請と、AI-OCRでの領収書処理を実現
首都圏にガスと電気を供給する東京ガスは、2002年から20年以上使ってきたオンプレミス型の経理システムが保守切れを迎えたことを機に、会計基盤の全面刷新に踏み切りました。会計システム本体はSAP S/4HANA Cloudへ移し、経費精算や伝票の起票といった経理申請の部分は、SaaS(インターネット経由で使うクラウド型のソフト)に切り出す構成です。申請側の受け皿には、TISの経営管理サービス群ACTIONARISEに含まれるSpendiaが選ばれました。東京ガス独自の伝票である収入予定報告や振替報告への対応は、個別のカスタマイズではなく製品の標準機能としてTISが開発しています。グループのIT機能会社である東京ガスiネットも導入支援に加わり、約2年をかけて2025年4月に移行が完了しました。
出典:東京ガス株式会社様 | お客様事例 | TISI株式会社 発行元:TIS株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
刷新の直接のきっかけは、2002年から動いてきた経理システムの保守切れでした。ただ、現場の不便はそれ以前から続いていて、スマートフォンからの申請ができず、承認のワークフローも1階層しか組めない状態にありました。20年の間に積み上げられたアドオンによって、一部の仕様はブラックボックス化してもいました。
編集部の見立てでは、この案件の難しさは仕組みの古さそのものではなく、経理申請が経理部だけの業務ではなかった点にあります。ガス・電気以外の事業から生じる収入予定報告や振替報告といった伝票の起票には、全社の約3割の社員が直接携わっていました。置き換える対象は経費精算という一機能ではなく、社員の3人に1人が日常的に触れる業務そのもの。この幅の広さを既製のクラウドサービスでどう受け止めるかが、計画全体の成否を握っていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
効き目が大きかったのは、東京ガス固有の伝票への対応を、個別のカスタマイズではなく製品の標準機能として作るという切り分けだったと考えられます。提案の時点でSpendiaに収入予定報告や振替報告の機能はなく、他社からは別製品との組み合わせが必要という回答や、SaaSなので個社要件には対応できないという回答が返っていました。標準機能として実装しておけば、2カ月に1度のバージョンアップを重ねても機能は製品側に残り、旧システムでアドオンが積み重なってブラックボックス化した経緯を繰り返さずに済みます。標準機能にしても他社からの需要が見込めないものだけを例外的にアドオンへ回すという線引きは、どこまでを製品の資産として残すかの判断そのもの。
二つ目は、Fit to Standard(業務を製品の標準機能に合わせる進め方)を基本方針に据えながら、旧システムの中身を正面から洗い直したことです。勘定科目が新しい体系へ見直されるなかで、会計システムに正確なデータを渡すために必要な入力チェックや入力補助をあらためて整理し、それが標準機能の範囲で成り立つかを一つずつ確かめる作業が行われました。20年分の仕様を知るグループのIT機能会社と、製品を知るベンダーが同じ検討の場に着いた体制は、ブラックボックスを開けるための現実的な布陣だったと読めます。
三つ目に挙げたいのは、クラウドサービスの更新サイクルと基幹システム移行のスケジュールを噛み合わせた進め方です。Spendiaは2カ月に1度バージョンアップされるため、UIやデータ項目の仕様変更がSAP S/4HANA Cloudとの連携に影響しないよう、移行を担当する別ベンダーとの間で逐次すり合わせが重ねられました。SaaS導入としては異例の約2年という期間は、短期に入れ切れるという利点をあえて手放し、並走する複数プロジェクトの足並みに合わせた結果でしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年4月に会計基盤全般のクラウド移行が完了し、これまでスクラッチでアドオンを作る必要があった機能がセットアップで実現できるようになったことで、基盤の全体構成はスリム化されました。10年来の懸案だったスマートフォンからの申請・承認も可能になり、移動中に処理を進めたり、カメラで撮影した領収書をそのまま添付してAI-OCRで読み取らせたりできています。運用開始から半年が経ち、ヘルプデスクに寄せられる操作方法の問い合わせ件数は大きく減少し、画面の使いやすさも社内で好評です。今後はグループ十数社への展開が検討され、会計業務を集約するシェアードサービス化も視野に入っています。
うちでも使える?
参考になりそうなのは、自社独自の申請様式を抱えたままクラウドサービスへ移りたい会社です。鍵になるのは、その要望を「うちだけの特殊事情」としてではなく、同じ業務を持つ他社にも通じる型として説明できるかどうか。標準機能として組み込む判断は製品を提供する側の戦略に左右されるため、他社にも需要がありそうな要望ほど、標準機能化の議論に乗せやすくなります。
一方で、自社の会計ルールや商習慣に強く結び付いた処理は、他社での利用が見込みにくく、標準機能に取り込まれる望みは薄くなります。また、定期的にバージョンアップされるサービスと基幹システムの移行を並行させる進め方は、複数ベンダーの間に立って影響範囲を確認し続ける役回りを必要とします。この事例で20年分の仕様を知るグループのIT会社が検討に加わったように、その役を誰が担えるかを先に見定めておきたいところです。
まずは、自社にしかない申請伝票を1種類だけ選び、候補となるサービスの標準機能で実際の画面がどこまで再現できるかを試してみてはいかがでしょうか。カスタマイズ前提の話に進む前に、その1種類で線引きの感触がつかめます。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:情シス・社内DX
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
TIS株式会社
経営管理サービス群「ACTIONARISE」およびクラウド型経費精算・経理申請サービス「Spendia」を提供するIT企業。TISインテックグループに属し、長年にわたり東京ガスグループのシステム開発に関わるコアパートナーの一社。
東京ガス株式会社
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