実施 2024.12 ・ 更新 2026.08.15
専門用語辞書の整備で回答精度を高めた、電気設備工事の社内文書AI検索の技術検証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの知識が引き継がれない
- 社内資料を探すのに時間がかかる
- 社内検索が思うように当たらない
どのようなAIの取り組み?
専門用語辞書の整備と登録前のデータ加工により、社内技術資料を対象とした自社専用RAGの回答精度を検証したAI取り組み
業種
電気設備工事(建設・土木)
取り組み領域
社内技術資料の検索/技術・ノウハウの継承
使ったAI
大規模言語モデル(LLM)を用いたRAG
主な成果
技術検証(PoC)で回答精度の向上を確認し、追加検証を開始
電気設備工事を手がける株式会社きんでんは、株式会社三菱総合研究所(MRI)とともに、社内の技術資料を対象とした生成AI検索の技術検証(PoC)を実施しました。大規模言語モデル(LLM)に社内文書を参照させて回答を組み立てるRAGという仕組みを構築し、現在社内で使われているキーワード検索システムと突き合わせながら、複雑な技術的質問にどこまで答えられるかを確かめる進め方です。精度を高める工夫は二つあり、資料をRAGへ登録する前にキーワード抽出・トピック抽出・要約文の生成といった前処理と構造化を施したこと、そして電気設備工事業界の専門用語辞書を作成してAIが質問文や文書内の用語を理解できるようにしたこと。生成された回答については、内容の妥当性に加えて日本語としての確からしさも検証対象に含めています。
出典:生成AI活用による自社専用RAG構築を目指す、株式会社きんでんの取り組みと今後の課題 | 経営のDX・AI活用を実現する|三菱総合研究所(MRI)のコンサルティングサービス&ソリューション 発行元:株式会社三菱総合研究所
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
経験を積んだ技術者が退職していく一方で、2024年4月から適用された時間外労働の上限規制もあり、若手の教育や育成に充てる時間そのものが確保しにくくなっています。建設現場では突発的な問題への臨機応変な対応が物を言いますが、その判断は現場経験に支えられており、経験を積む機会が減れば若手の立ち上がりはさらに遅くなる。加えて、工事仕様と法規制の紐づけには実務経験とノウハウが必要で、そこが個人に張り付いていることが後進育成を難しくしていました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは人手の多寡ではなく、判断に必要な知識が「聞ける相手が空いているかどうか」に縛られている点にあります。答え自体は社内の技術資料や過去の提案書の中にあるのに、それを取り出す作業がベテランへの質問という形でしか成立しない。だからこそ、育成時間の確保と検索の高度化という一見別々の課題が、同じ場所でつながっていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
検証の軸を、いま社内で使っているキーワード検索システムとの比較に置いた点が、この進め方の骨格です。キーワード検索は入力した語で文書を引き当てるのに対し、RAGは質問に関連する情報を集めて一つの回答としてまとめる。同じ社内資料を土台に両者を並べれば、生成AIで何ができるようになったのかが、技術の一般論ではなく自社の業務の言葉で見えてきます。実力を測る物差しを先に用意したことが、期待だけが先行しがちな生成AI検証を実務判断に着地させたと考えられます。
回答精度をモデル任せにせず、資料をRAGに登録する前の加工で稼ぎにいった設計も効いています。キーワードやトピックの抽出、要約文の生成といった前処理と構造化を挟むことで、検索段階で引き当てる情報の質そのものを底上げする狙いです。生成AIの弱点は多くの場合、生成ではなく参照する材料の側に現れます。その勘所を押さえた工程配置だったと読み解けます。
もう一つの柱が、電気設備工事業界の専門用語辞書を作り、質問文と文書内の用語をAIが理解できる状態にしたことです。同社は生成AI登場前にも自然言語処理を用いた検索を検証しており、専門用語や類義語の整備に人手と研究開発を要する点が壁になっていました。今回はその整備を、言語モデルの理解力を前提に据え直したうえで再挑戦した形になります。さらに、生成AIのレクチャーや社内向け勉強会を検証と並走させ、複数の大規模言語モデルを比較しながら発注側も中身を理解して判断できる体制を取った点は、外部に一任しきらない進め方として押さえておきたいところです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
前処理・構造化と専門用語辞書の追加により、回答精度の向上が得られています。過去の技術提案書や関連文書から情報を統合して一つの回答にまとめられるため、従来の検索では対応しきれなかった高度な検索ニーズにも応えられる可能性が確認されました。同時に、回答のぶれ、正確性の担保、質問文の質が回答を左右する点、図表の形や中身の取り込み、さらに専門知識や法律関連の情報を扱う際の著作権・法制度への留意といった課題も具体化しています。情報収集時間の削減や提案品質のばらつき軽減は現時点では見込みの段階で、試行導入に向けて技術文書の種類を増やした追加検証が始まっています。
うちでも使える?
相性が良いのは、法規制や工事仕様のように「答えが文書のどこかに書いてある」種類の困りごとです。社内に技術資料や過去の提案書が一定量たまっていて、業界特有の言い回しがある程度決まっている領域なら、用語の整備と登録前の加工という今回の二段構えはそのまま応用しやすいでしょう。
逆に、現場で起きた突発的な事象への臨機応変な対応そのものは、文書に残っていない以上この方式では埋められません。図や表に情報が集約された資料が中心の場合も、取り込みの工夫が別途必要になります。また、法令や外部の専門情報を取り込む段階では、著作権や法制度の確認が技術検証とは別軸で発生します。
はじめの一歩としては、ふだん若手がベテランに聞いている質問を数件そのまま書き出し、いまの社内検索に同じ文面で投げてみるところから。どこで答えに届かないのかが分かれば、それが自社にとっての比較の物差しになります。
この事例は2024年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
プロジェクト実施・導入企業
株式会社きんでん
出典・参考情報
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