実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.14
開発規約を学んだAIで半日待ちのレビューを数秒に、トヨタ情報システム愛知の検証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの口伝でしか教えられない
- レビュー待ちで作業が止まる
- 教える人で指導内容がばらつく
どのようなAIの取り組み?
開発規約を学ばせたAIチャットボットに、規約のQ&A対応とソースコードの一次レビューを任せ、レビュー待ち時間の短縮を検証したAI取り組み
業種
情報システム開発・運用(IT・通信)
取り組み領域
システム開発/コードレビュー・新人教育
使ったAI
生成AIチャットボット「ナレコムAI Chatbot」(RAG・AIエージェント)
主な成果
半日〜1日かかっていたレビュー待ちが即時に(検証段階)
ATグループの情報システム開発・運用を担うトヨタ情報システム愛知(TISA)が、クラウド・AI導入支援のナレッジコミュニケーションが提供する法人向け生成AIチャットボット「ナレコムAI Chatbot」を使い、開発現場の教育とレビューの負荷を軽くする取り組みを進めています。2025年4月から開発チームの一部メンバーを対象に検証が行われ、オンボーディング期間中の教育項目のうち、開発規約や運用ルールのQ&Aと、ソースコードの一次レビューをAIが担当しました。基盤にはマイクロソフトのAzure OpenAIを採用し、入力データがAIの学習に使われない仕様やIPアドレス制限といった、ATグループの基準を満たす条件のもとで運用されています。既存のExcelやPDFの業務ドキュメントは、ナレッジコミュニケーションが独自開発した変換ツールでMarkdown形式に整えたうえでAIに読み込ませる形をとりました。
出典:法人向け生成AIチャットボット「ナレコムAI Chatbot」、トヨタ情報システム愛知株式会社における開発プロセス効率化に向け導入開始 | 株式会社ナレッジコミュニケーションのプレスリリース 発行元:株式会社ナレッジコミュニケーション
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
開発組織が大きくなり、新しく参画したメンバーを早く立ち上げる必要が高まる一方で、コーディング規約やSQL規約のドキュメントの一部が現在の開発実態と合わなくなり、実際のノウハウはベテラン社員の「口伝」で引き継がれていました。その結果、教える担当者の経験や解釈で新人の習得度に差が出るようになり、チームリーダーや有識者はレビューに追われて本来の設計・開発やマネジメントに時間を割けず、レビューを受ける側もフィードバックを待つ半日から1日のアイドルタイムを抱えていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は人手や工数の不足ではなく、規約の「正本」がドキュメントではなく人の記憶側に移ってしまっていたことにあります。文書は残っているのに更新が止まり、最新の判断基準は経験者に聞かないと分からない。この状態では、教育の品質もレビューの速度も特定の個人の稼働時間に連動してしまい、増員や気合いでは構造的に解けません。
どうやって、うまくいったのか
AIに任せる範囲を、規約に照らせば正誤が決まる領域へ絞り込んだ切り分けが、この取り組みの土台になっています。担当させたのは、プログラムやSQLの命名規約の確認、改行ルールのチェックといった定型的な一次レビューと、開発規約・運用ルールに関するQ&Aでした。設計の妥当性のように文脈と経験を要する判断は人の側に残っているため、AIの出力が誤っても取り返しがつく範囲に収まります。判断の性質で仕事を分ける考え方が、検証段階から現場の日常業務に混ぜて回せる状態をつくったのではないでしょうか。
次に効いたのは、既存の文書資産をAIが読める形へ移す経路を先に用意した点です。ExcelやPDFで蓄積されていた膨大な業務ドキュメントをMarkdownへ変換するツールをナレッジコミュニケーション側が独自に開発し、TISAはそこに既存資産を流し込む形で知識を移植しています。規約をAI向けに書き起こすところから始めていれば、着手の重さで検証そのものが止まっていた可能性は高いはずです。
もう一つ見逃せないのが、AIの回答を規約側へ跳ね返す仕組みを組み込んだことです。AIからのフィードバックを分析して、形骸化していた古いドキュメントを洗い出し、規約自体を最新化・体系化していく運用改善のサイクルが動き始めています。ドキュメントと実態の乖離という根っこの問題に手を戻す設計になっており、AIを使うほど元の資産が整っていく方向に力が働きます。前提として、Azure OpenAIを基盤とし、入力データを学習に使わない仕様やアクセス制御でグループの情報管理基準を先に満たしたことが、開発の中枢にあるコードを扱う用途で選ばれる条件になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
検証では、Visual Studio等で書いたコードをチャットボットに貼り付けるだけで即座に修正点の指摘が返る即時性、指定した規約内容に基づく一貫したレビュー、命名規則や改行ルールに沿ったコードの標準化が一定水準で成り立つことが確認されました。従来は半日から1日待っていたフィードバックが即時に得られるようになり、新規参画メンバーが規約を質問しやすい環境が整ったことで教育担当者への依存度も下がっています。本格導入に向けた手応えを得た段階で、今後は設計書とソースコードの整合性チェックやテスト工程への活用拡大が計画されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、正解が明文化されたルールで決まり、指摘の中身が人によって変わらない業務です。命名規則や書式の確認のように、判断基準を文章で書き出せる作業であれば、規模の小さい組織でも同じ形に持ち込める余地があります。反対に、この事例と同じ効果を期待しにくいのは、ルール自体が現在の実態と食い違ったまま放置されている場合です。古い規約をそのまま読み込ませれば、AIは古い基準で一貫して指摘し続けます。設計意図の妥当性や仕様の抜け漏れといった、前後の文脈を踏まえた判断が中心のレビューも、そのまま置き換えられる性質のものではありません。
最初の一歩としては、直近のレビューやプルリクエストのコメントを一定期間ぶん見返し、書式・命名・記法の指摘と、設計や仕様に関する指摘の比率を数えてみるところから。前者が多いなら、切り出す価値のある定型判断がすでに手元にあるという合図です。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社ナレッジコミュニケーション
クラウド&AIの利活用コンサルティングや導入・開発支援、運用サポート等を手がける企業。「AI×クラウド事業」「VR・AR事業」「Education事業」の3領域で事業を展開している。
トヨタ情報システム愛知株式会社
出典・参考情報
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