実施 2026.04 ・ 更新 2026.08.15
生成AIの社内文書検索で危険予知を支援、三菱ガス化学が国内5工場に年内導入へ
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘が引き継げていない
- 過去の事例を探すのに時間がかかる
- 報告書がバラバラの書式で埋もれている
どのようなAIの取り組み?
作業前の危険予知を支えるシステムに高精度な生成AI検索を組み込み、国内5工場への年内導入を進めるAI取り組み
業種
化学品・機能材料製造(製造業)
取り組み領域
工場の安全管理/危険予知(KY)活動
使ったAI
Super RAG(検索拡張生成の生成AI)
主な成果
国内5工場へ年内の順次導入を予定
三菱ガス化学は、作業前のKY(危険予知)活動を支えるシステム「MGC-KYAS」を、2023年6月頃から国内5工場で運用しています。過去のヒヤリ・ハット活動で集まった事例データベースから、これから行う作業に関係する事例をAIが抽出し、作業に潜む危険を複数件提示する仕組みです。この既存システムに、シナモンAIが提供する検索拡張生成の製品「Super RAG」を組み込む新システムの開発が、2026年4月から始まりました。工場や部署ごとに書式の異なるドキュメントをPDFなどの元ファイルのまま読み取り、過去の類似災害の参照や作業手順の最適化、安全教育の教材化に生かす狙いで、年内に順次導入される予定です。
出典:三菱ガス化学に「作業に潜む危険」を高精度生成AI「Super RAG™」で自動支援する次世代型KYサジェストシステムを本格提供 | 株式会社シナモン(シナモンAI) 発行元:株式会社シナモン(シナモンAI)
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
設備の自動化が進んだ結果、従業員が保安防災の業務に直接触れる機会が減り、現場の危険感受性が下がるのではないかという懸念が生じていました。ヒヤリ・ハット事例や事故労災のデータは膨大に蓄積されている一方で、現場ごとにフォーマットが異なるために取り出しづらく、必要な情報を集めるだけで多大な時間がかかる。KY活動が形だけのものになりかけていた、というのが出発点でした。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとはデータの不足ではなく、蓄積した経験に手が届かないことにあります。毎朝の短い時間で回すKY活動に対して、過去事例を探す作業の重さが釣り合っていなければ、現場は探すこと自体をやめてしまう。形骸化は意識の問題として語られがちですが、実際には参照にかかる手間が活動の頻度を上回った結果として起きるのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
今回の中心は、現場が使い続けてきた仕組みを作り替えることではなく、その内側にある検索と回答生成の部分だけを精度の高いものへ入れ替える点にあります。作業前にシステムを開き、機器番号や作業名を入力すると関連する事例が返ってくるという現場の動作は変わりません。すでに定着した業務動線を温存したまま中身を強化する進め方は、安全活動のように毎日繰り返される業務ほど無理なく効いてくると考えられます。
現場にデータ整形を求めない設計も、この取り組みの要です。Super RAGは、Excelなどの構造化データへ加工する工程を挟まず、PDFなどのオリジナルファイルの状態から直接回答を生成します。文字数で機械的に区切る従来のRAG(外部の文書を検索して回答に使う仕組み)とは違い、独自のレイアウト解析でタイトルや図表を判別し、文書の意味や構造を保ったまま分割する。さらにベクトル検索とグラフ構造検索を掛け合わせ、文書内に明記されていない関係性まで拾いにいく構成をとっています。
回答の根拠となる参照元ドキュメントを明示する機能を備えたことは、安全という領域でのAI活用として筋が通っています。危険予知は最後に人が判断する行為であり、出力をそのまま受け取れない性質があるからです。根拠をたどれれば、若手は熟練者がどの事故から何を学び取ったのかを自分の目で確認でき、AIの提示が学習の入口として働く。自動サジェストの位置づけを危険予知訓練の最初のステップに限り、人の思考を置き換えるのではなく視点の偏りやマンネリ化を補う側に回した切り分けが、日々の安全活動に載せやすい形をつくっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
MGC-KYAS自体は2023年6月頃から国内5工場で運用が続いており、Super RAGを組み込んだ新システムは2026年4月に本格開発が始まった段階です。迅速な情報抽出やデータ登録工数の軽減、ノウハウ伝承といった効果は、年内の順次導入を経てこれから確かめられる見込みにあります。製品側の数値としてはカスタマイズなしで90%を超える回答精度が示されていますが、これは文書の種類によって差が出ると注記された数値です。今後はグループ会社や協力会社への展開も検討されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、報告や記録が長年たまっているのに、書式がそろっていないために使われないままになっている現場です。点検記録、事故報告、作業日報のように、書いた時点で役目を終えてしまった文書が眠っている職場なら、整形をやり直さずに検索する方式は現実的な選択肢になります。参照する場面が毎日決まっている業務ほど、AIの出番がはっきりして定着もしやすいはずです。
逆に、危険の中身が設備や作業ごとに固有で、そもそも文書として残っていない場合は、検索する材料がないため同じ効き方は望みにくいところです。事例が数件しかない、報告を出す習慣がまだ根づいていないという段階であれば、AI検索より先に報告が集まる仕組みを整えるほうが順序として自然でしょう。まず試すなら、直近の作業で挙げた危険予知の項目を一つ選び、それに関係しそうな過去の事例を今のやり方で何分かけて見つけられるか、時計を見ながら実際にやってみてはどうでしょうか。その所要時間が、AIに任せる価値の目安になります。
この事例は2026年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社シナモン(シナモンAI)
独自AIプロダクトである高精度生成AI「Super RAG™」をはじめとするAIソリューションを提供する企業。表や図を含む複雑なドキュメントを解析し、前処理・検索・生成を全体最適化したRAG環境をノーチューニングで構築できるサービスを展開している。
三菱ガス化学株式会社
出典・参考情報
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