実施 2024.11 ・ 更新 2026.08.15
正答率35%から93%へ、清水建設が建設技術文書をRAGで検索する試み
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 分厚い技術資料を毎回探すのに時間がかかる
- 若手がベテランに何度も聞きに行っている
- 生成AIを入れたのに現場で使われていない
どのようなAIの取り組み?
1000ページを超える社内の建設技術文書をRAGで検索できる形に整え、社内テストの正答率を35%から93%まで引き上げた、生成AIアシスタントの試験導入に取り組んだ事例
業種
総合建設業(建設・土木)
取り組み領域
建設現場の技術文書検索・社内問い合わせ
使ったAI
RAG対応の生成AIアシスタント(Lightblue Assistant)
主な成果
社内テストの正答率が35%程度から93%に向上
清水建設は、東京支店を中心に生成AIアシスタントの試験導入を進めています。全社ではすでに別の生成AIツールが使われていましたが、扱える文字数の制限などから長文の技術文書には向かず、現場向けには株式会社Lightblueの「Lightblue Assistant」が採用されました。中核となったのは、施工管理の教科書にあたる社内文書『新・建築施工の基礎知識』全3分冊・1000ページ超を、RAG(外部データを検索して生成AIの回答に使う仕組み)で引ける形に作り替える取り組みです。文書を1ページ単位のまとまりに分割し、図表の解釈はLightblueと連携して画像処理を最適化、回答の根拠ページを示す参照の仕組みも整えました。現場側では、Teamsから呼び出せる独自アシスタントを社員自身が作る動きが広がっています。
出典:精度35%が93%に、社内情報をRAGでフル活用|清水建設が挑む生成AI変革 | Lightblue 発行元:株式会社Lightblue
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
現場が抱えていたのは、AIがないという不足ではありませんでした。全社導入済みの生成AIツールには扱える文字数の上限があり、施工要領書や技術基準のような長い文書の確認には手が届かない。やり取りを重ねると回答の一貫性が崩れ、前提となる状況を毎回プロンプト(指示文)に書き直す必要も生じていました。加えて、施工管理の基本を収めた社内文書は3分冊で1000ページを超え、該当箇所にたどり着くだけで相当な時間を要します。本来は図面と現場の整合を確かめる仕事に充てたい時間が、法規制の確認や技術調査に吸い取られていた実態がありました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は検索の遅さそのものではなく、知識が「誰かに聞くしかない形」で置かれ続けていたことにあります。若手がベテランに同じ確認を繰り返す構図と、AIに毎回前提を説明し直す構図は、表に出る場面こそ違え、同じ構造。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、文書を1ページごとのまとまりに切り出すという分割の設計です。RAGは文書を細かく区切って検索する仕組みのため、区切りが粗ければ関係のない記述まで混ざり込み、細かすぎれば前後のつながりが失われます。建設技術文書という対象に対して、試行錯誤の末に1ページという単位へ落とし込んだ判断が、検索の土台を作りました。
図表の解釈という最大の難所には、自社だけで抱え込まない体制で臨んでいます。建設の技術文書では、工法の手順や注意点が本文ではなく図や表に置かれていることが多く、文字として読み取るだけでは肝心の情報が抜け落ちます。この部分でLightblueが画像処理の最適化を担い、清水建設側が現場で実際に飛ぶ質問と対象文書を持ち込むという役割分担が取られました。どちらか一方の知見だけでは越えにくい壁を、分業で崩した形です。
回答の根拠となる該当ページを示す参照の作り込みも、実務に耐えるかどうかを分けた要素だったのではないでしょうか。建設現場は判断を誤ったときの影響が大きく、AIの答えをそのまま鵜呑みにする運用は成り立ちません。原典に戻って確かめられる設計は、現場が長く守ってきた確認の作法を壊さずにAIを差し込む余地を作りました。さらに、社員自身がTeamsから独自のアシスタントを組み立て、チームで共有できるようにしたことで、報告書の要約や前任者の引き継ぎ資料の参照といった使い道が現場の側から次々に立ち上がっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
若手向けの社内テストで測った正答率は、他社システムでの検証段階では35%程度に留まっていたものが、93%まで向上しました。従来30分以上かかっていた技術基準の確認は数分で完了するようになり、試験導入から2か月で18現場・約260アカウントが実際に利用、利用回数は約12,000回を記録しています。そのうち約46%(5,500回)がRAGを使ったアシスタントによる技術文書の検索でした。若手からは技術的な質問がしやすくなったという声が、ベテランからは若手の教育がしやすくなったという声が挙がっています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、参照される文書が厚く、しかも正解を確かめる手立てがある領域です。この事例には、施工管理の基本を収めた一次資料がはっきり存在し、若手向け社内テストという評価のものさしが手元にありました。何をもって正答とするかが決まっていれば、分割の仕方や図表の扱いを変えたときに、良くなったのか悪くなったのかを数字で判定できます。
一方、そのまま真似しにくい部分も残ります。図や表に情報が集中する資料では文字起こしだけでは精度が伸びず、画像処理の作り込みでベンダーとの協業が必要になりました。天候による工程調整の判断基準のように、そもそも文書になっていない経験則は、この事例でもこれから取り込む段階です。資料が紙のまま眠っていたり個人のフォルダに散らばっていたりする状態なら、精度を語る前の下ごしらえが要ります。
まず試すなら、社内で「どこに書いてあるか」を最も聞かれる資料を一冊だけ選び、若手が実際につまずいた質問を10問ほど書き留めて、今使っているツールで何問答えられるか数えてみるところから。
この事例は2024年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社Lightblue
東京大学発のAIスタートアップ。企業独自のマイアシスタントを簡単に構築できる生成AIサービス「Lightblue Assistant」を提供し、SlackやTeamsなどの社内ツールとの連携、企業の独自データを活用した生成(RAG)に対応する。
清水建設
出典・参考情報
精度35%が93%に、社内情報をRAGでフル活用|清水建設が挑む生成AI変革 | Lightblue
発行元:株式会社Lightblue
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