実施 2026.06 ・ 更新 2026.08.14
済生会向島病院が生成AIで看護の引き継ぎ文書を下書き、記録業務の負担軽減へ
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 記録や報告書の作成に時間を取られている
- 担当者ごとに書類の質がばらつく
- 現場のスタッフが本来の仕事に集中できない
どのようなAIの取り組み?
電子カルテの診療記録や看護記録を生成AIが解析し、看護サマリーの下書きを数分で自動作成する仕組みを導入したAI取り組み
業種
病院(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
看護部門/看護サマリーなど医療文書の作成
使ったAI
GaiXer Medical Agent(生成AIによる医療文書作成支援)
主な成果
看護サマリー作成時間の短縮と記録品質の均てん化を目指す段階
東京都墨田区の東京都済生会向島病院が、患者の退院・転院時に作成する看護サマリーの作成業務に、医療業務支援に特化した生成AIサービス「GaiXer Medical Agent」を導入しました。提供元はFIXERで、全国に400以上の医療・福祉施設を展開する済生会グループでは初の導入事例となります。看護サマリーは、入院中の経過や看護内容、退院後に必要となるケア情報を看護師の視点でまとめ、次の医療機関や介護施設へ引き継ぐための文書です。作成には電子カルテなどから膨大な情報を拾い直す必要があり、多くの時間を要していました。導入されたサービスは、電子カルテに記録された診療情報と看護記録をAIが解析し、サマリーのドラフトを数分で生成します。看護師の作業は、白紙から文章を書き起こすことから、生成された下書きの確認と修正へと移ります。
出典:済生会グループで初、済生会向島病院へGaiXer Medical Agentを導入 ~生成AIで看護サマリー作成を効率化し、看護師の業務負荷を軽減~ - 株式会社FIXER 発行元:株式会社FIXER
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
済生会はグループ全体のDXを経営戦略に掲げ、その柱の一つに医療現場の働き方改革を置いてきました。向島病院でも、看護師が患者のケアに充てられる時間を増やすため、看護サマリーの作成時間と業務負荷の軽減が重要な経営課題となっていました。作成者によって記録の書きぶりが変わってしまう点も、医療連携を強めるうえでの課題として挙げられています。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は「書く時間が長い」ことそのものではなく、書く前に必要な読み直しの負荷にあります。看護部長のコメントにあるとおり、要件を満たすサマリーを作るには入院中の経過と看護記録を読み返し、情報を整理し直す工程が欠かせません。交代勤務で担当が入れ替わり、在院日数の短縮や病床稼働率の向上も同時に求められる環境では、その時間をまとめて確保すること自体が難しい。足りていなかったのは文章を速く書く技術ではなく、散らばった記録を一度に見渡す手段だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
AIに任せる範囲をドラフトの生成までに区切り、内容の確認と修正を看護師の手元に残した設計が、この取り組みの中心にあります。看護サマリーは退院後のケアの質を左右する文書であり、記載内容の妥当性について最終的に責任を負うのは現場の看護師です。生成物を完成品ではなく下書きと位置づけたことで、AIの出力を医療者が点検する工程が自然に組み込まれました。責任の所在を動かさないまま作業量だけを減らすこの切り分けが、実運用に耐える形をつくったと考えられます。
電子カルテとの接続をCSVファイル等の連携で成立させた構成も、見逃せない工夫です。電子カルテは医療機関ごとに導入ベンダーが異なり、個別のシステム改修を前提にすると導入の難易度は一気に上がります。ファイルの受け渡しという枯れた方法を選ぶことで、ベンダーを問わず接続できる余地を残しています。
標準化された構成で文章を生成するという方針は、時間短縮とは別の課題に効いています。作成者ごとの書きぶりの差は経験や着眼点の違いから生まれるもので、書き方を揃えようと呼びかけるだけでは解消しません。出力の型をAI側に持たせれば、誰が作成しても土台となる構成は同じところから始まります。医療情報を扱えるセキュアな生成AI基盤の実績と、現場に寄り添う伴走型の支援体制が選定の決め手になった点も、機微な情報を扱う領域ならではの判断です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本件は導入を開始した段階での発表であり、削減時間などの定量的な成果はまだ示されていません。掲げられているのは、ドラフトが数分で生成されることによる作成時間の短縮と、標準化された構成による記録品質の均てん化という、これから確かめられていく効果です。看護部長からは、日々の看護実践とその変化を短時間で要約できるようになること、そして看護サマリーを通じて「看護のバトン」が次へ繋がっていくことへの期待が示されています。短縮した時間の使い道を患者のケアに向けると明言している点は、目的の置き方として注目に値します。
うちでも使える?
応用しやすいのは、元になる記録が電子的にたまっていて、そこから要点を抜き出して決まった型の文書に組み直す作業です。引き継ぎ書、報告書、申し送りのように、読み手がはっきりしていて構成もおおむね決まっている文書は、下書きをAIに任せて人が確認する形へ置き換えやすいでしょう。
一方で、記録が紙や個人のメモに散っていて電子的に集められない場合、この形はそのままでは動きません。また、書く材料が記録に残らない現場の観察や口頭のやりとりに偏っている業務でも、下書きの精度は上がりにくくなります。患者情報のように取り扱いに制約のあるデータを扱うなら、どの基盤で処理するかを先に決めておくことも前提になります。
試すなら、自部門で日常的に作っている引き継ぎ文書を1本選び、その記述がどの記録から引かれているかを辿ってみてください。辿った先の記録がシステムの中に揃っているなら、下書き自動化の入口はすでに見えています。
この事例は2026年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社FIXER
2009年創業。Microsoft Azureの国内展開初期から、企業・官公庁・自治体のエンタープライズシステムを中心に、クラウドを活用したIT基盤の構築と高度化を支援。近年は自社開発の生成AIサービス「GaiXer」や、閉域ネットワーク内で完結するオンプレミス型生成AI「Sovereign GaiXer」を展開している。代表取締役社長は松岡清一。
東京都済生会向島病院
出典・参考情報
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