実施 2026.04 ・ 更新 2026.08.14
東京エレクトロンが20年の自社契約管理システムをAI搭載サービスへ移行した法務改革
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 長年使った自社システムが古びてきた
- 過去の契約の経緯を新人が探せない
- 契約書の情報入力に手間がかかる
どのようなAIの取り組み?
約20年運用してきた自社開発の契約管理システムをAI搭載の契約管理サービスへ切り替え、契約管理を法務部から各事業部へ移したAI取り組み
業種
半導体製造装置(電機・精密/製造業)
取り組み領域
法務/契約管理・契約審査
使ったAI
AI契約管理サービス「MNTSQ CLM」(契約情報の自動入力・OCR・AI契約レビュー)
主な成果
契約管理を法務部から各事業部へ移管し、各部が自部署の契約を台帳で即座に確認できる体制に
半導体製造装置を手がける東京エレクトロンの法務部は、約20年にわたり自社で作り込んできた契約管理システムを、MNTSQが提供する契約管理サービス「MNTSQ CLM」へ切り替えました。国内各社・各部門の新規審査だけで年間およそ4,000件に達する規模を扱う部門で、20年分のデータを移し替えながら、契約書の保管や期限管理を法務部が一手に担う体制そのものを見直し、管理業務を各事業部へ移す形に組み替えています。国内での稼働までに丸1年、そこから半年後にはアジアの複数の現地法人でも利用が始まりました。移管に伴って各部から出た不安には、法務部内に置いた6名の導入メンバーが個別に向き合い、AIが契約書を読み取って項目を自動入力する機能を、現場の作業を確認だけで済ませられる根拠として示しています。
出典:20年愛用した「最強の自社システム」からのリプレイス。東京エレクトロンが、MNTSQで挑む全社巻き込み型の法務DX | 導入事例 | MNTSQ株式会社 発行元:MNTSQ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
きっかけは、2017年頃に契約書のデータ入力をAIで自動化しようと外部の開発会社へ見積もりを求めたところ、数千万円という金額を示されて断念した経験でした。検索機能の強化にも同じコストの壁があり、過去の案件ごとに「なぜ契約内容を変更したか」を記録していても、経緯を知るベテランしか辿り着けず、新しいメンバーにとっては存在しない情報と変わらない状態が続いていました。加えて、半期ごとの改修を情報システム部門に依頼し続ける形は、開発できる人材を社内に確保し続けられるかどうかに依存します。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は機能の不足ではなく、システムを自前で持ち続けるという構造そのものにありました。業務プロセスに完全にフィットしている状態は、裏返せば、外で進む技術を取り込む余地が残されていないということでもあります。満足度が高いほど乗り換える動機が生まれにくくなる。当事者が口にした「ガラパゴス化」への危機感は、その逆説を言い当てた言葉ではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
製品選定の軸を、現時点の機能比較から「この先どこまで伸びるか」へ置き換えた判断が、この乗り換えを成立させています。再検討の時点でも自社システムを完全に上回っているという確信はなく、物足りなさが残る部分もありました。それでも、自らは開発できないAI機能がすでに動いていることや、提携する法律事務所を背景にした雛形の充実度といった、将来の伸びしろに関わる要素が評価の対象に据えられています。先行して数十名で1〜2年試した他社ツールが、一般的な基準で指摘を行う設計だったために「過去の審査経緯を尊重する」自社の審査スタイルと噛み合わなかった経験も、比較の物差しを機能の多寡から仕事の進め方との相性へ寄せる後押しになったと考えられます。
事業部への業務移管では、各事業部を担当する6名の導入メンバーを法務部内に立て、リスクの中身を各部と一緒に検討する形で対話を重ねる進め方がとられました。ここで扱われたのはツールの操作説明ではなく、法務がゲートキーパーとして担保してきたリスク管理を各部へ移して本当に大丈夫なのか、という体制変更そのものへの懸念です。この問いに対して、負担の重い入力作業はAIの読み取りが肩代わりし、現場は内容の確認に回るという役割の切り分けを提示できたことが、懸念を具体的に小さくする材料になっています。
20年分のデータ移行で「完全な引き継ぎ」を前提条件にしなかった線引きも、この規模の切り替えを前に進めた要素でしょう。旧システムには、どの契約がどの経緯に紐づくかを示す独自のリンク機能まで作り込まれており、それを再現できないことは移行を止める理由にもなり得ました。そこを移行時点で埋めきろうとせず、新しい環境での検索運用と今後のAIの進化でカバーしていくと決めた点に、完璧さより稼働を優先する割り切りが表れています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
各事業部が自部署で締結した契約を台帳で一覧できるようになり、「あの契約書はどこにあるのか」と法務へ問い合わせる必要がなくなりました。法務部の工数が減っただけでなく、実務を担う部署が必要なときに自分で内容を確認できる、従来より機動的な管理に移っています。想定していなかった収穫として、過去の審査内容と今回を突き合わせる比較機能や、他社ソフトでは文字化けした紙の書類も読み取れるOCRの精度が、日々の確認業務で効いています。一方、関連契約のサジェストに意図しないものが混じる、二社間契約だけを抽出するといった独自の検索条件が再現しきれないなど、旧システムに及ばない部分も残っています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、契約や書類の管理を一つの部署が代表して抱えていて、その中身の多くが判断ではなく登録と確認で回っている場合です。入力はAIが下書きし、人は内容を確かめる。この分担が成立するなら、管理の置き場所を実務側へ移す余地が生まれます。逆に、契約の当事者が特定の部署に集中していたり、法務が入口を押さえること自体に取引上の必然性がある組織では、同じ形は取りにくいはずです。長年育てた自社システムを持つ場合はもう一点、独自に作り込んだ紐付けや検索条件が移行先で目減りする前提で考える必要があります。それを失っても業務が回るのか、あるいは失うことでこれまでのやり方を問い直せるのか。切り替えを検討する段階で見積もっておきたい部分です。
まず試すなら、直近1か月で「あの契約書はどこか」といった問い合わせが管理部門へ何件届いたかを数えてみてはいかがでしょうか。その件数が、現場へ移せる業務の輪郭を教えてくれます。
この事例は2026年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
MNTSQ株式会社
契約管理システム「MNTSQ CLM」を提供する企業。契約管理・案件管理・AI契約レビュー機能などの利用プランを提供し、AIによる契約書の読み取り・入力補助、高精度なOCR、契約書の比較機能を備える。長島・大野・常松法律事務所と提携した雛形を提供し、ISO 27001(IS 798405)を取得している。
東京エレクトロン株式会社
出典・参考情報
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