実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.15
藤沢市が全職員4000人に生成AI、体験型セミナーで対話数2倍以上へ
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ツールを配ったのに使われない
- AIが自分の仕事にどう効くか分からない
- 職場にAIへの不安や抵抗感がある
どのようなAIの取り組み?
手を動かす体験型セミナーを起点に庁内の生成AI利用が広がり、対話数が前年同月比2倍以上に伸びた自治体のAI取り組み
業種
地方自治体(公共・行政)
取り組み領域
庁内の文書作成・情報整理/全庁DX推進
使ったAI
自治体向け生成AIサービス「minnect AIアシスト」
主な成果
アクティブユーザー数・総対話数が前年同月比で2倍以上に増加
神奈川県藤沢市は、2022年4月に策定した「藤沢市DX推進計画」で先進技術の利用推進を重点項目に掲げ、生成AIの検討を始めました。複数のサービスを比較したうえで採用したのが、電通総研の自治体向け生成AIサービス「minnect AIアシスト」です。職員が日常業務を行うLGWAN(自治体専用の閉じたネットワーク)で使えること、議事録や例規集といった自治体固有の文書をAIが検索して回答に使うRAGという仕組みを備えること、データが国内で管理されることが選定の判断軸になりました。2024年4月に全職員約4000名を対象として本格展開したものの、当初の利用は伸びません。庁内ポータルでの発信やプロンプトのアイデア集の配布では反応が薄く、同年10月には外部講師を招いたハンズオン形式のセミナーを開き、職員が実際に操作する場を用意しています。
出典:「百見は”イチ”体験に如かず」——生成AI活用の壁を乗り越え、全庁的なDXの起爆剤へと昇華させた藤沢市 | 事例 | インサイト | 電通総研 発行元:電通総研
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
計画に「AI・RPA等先進技術の利用推進」を掲げた当初、想定されていたのはAI-OCRやRPAでした。そこへ生成AIが急速に存在感を増し、行政効率化の要となる技術として検討対象に加わります。ただし庁内には「本当に業務で使えるのか」という半信半疑の空気があり、機微な情報を扱う行政機関という性格上、少しでもリスクがあれば避けるという保守的な風潮が心理的なハードルになっていました。推進を担う側にも生成AIを業務へどう活かすかの具体的な知見がなく、職員へ明確な活用イメージを示せないことが悩みの種でした。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は職員のAI理解が足りないことではなく、推進側を含めて誰も「自分の仕事のこの場面で使える」という具体像を持てなかった点にあります。安全性をいくら丁寧に説明しても、使い道が思い浮かばなければ試す動機は生まれません。不足していたのは知識でも制度でもなく、最初の成功体験だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
停滞を動かしたのは、情報を届ける施策から、職員がその場で手を動かす場を用意する設計への切り替えでした。2024年10月のデジタルトレンドセミナーは外部講師を招いたハンズオン形式で、参加者が実際にminnect AIアシストを操作しながら学ぶ構成になっています。生成AIは同じ機能でも問いかけ方によって返ってくるものが変わるため、資料や説明会では価値の輪郭がつかみにくい。自分の業務に近い問いを打ち込んで応答が返る体験を経て、はじめて漠然とした「便利そう」が「この作業に使える」へ変わったと考えられます。
体験を一人で終わらせず、横へ伝わることを前提に置いた普及の組み立ても効いています。セミナー後の職場では「それ、AIを使ってやってみたら?」という声が出るようになり、一人が使い始めると「あの人が使えているなら自分も」という形で輪が広がっていきました。全職員約4000名にあらかじめ利用環境が行き渡っていたため、隣の席で聞いた話をその場で試せる状態が整っていたことも、口コミが実際の利用へ変換される条件として働いたはずです。
選定段階でセキュリティ要件を押さえた判断と、導入後の機能追加が、利用の深まりを支えました。LGWAN環境での利用と国内リージョンでのデータ管理という前提を最初に確保したことで、「リスクがあるなら避ける」という空気に対して議論の入口をつくれています。さらに、PDFなどのファイルを読み込ませて要約や分析ができるマルチモーダル対応が加わり、対象は簡単な文章づくりから長大な計画や法令の読み解きへと移りました。新機能がリリースされるたびに問い合わせが増える状態は、関心が一度きりで途切れない循環が生まれていることを示しています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
セミナーを境に利用は加速し、アクティブユーザー数と総対話数はいずれも前年同月比で2倍以上に増加しました。対話数の伸びは、一問一答で終わらず職員がやり取りを重ねていることを示す指標であり、活用が量だけでなく質の面でも深まった証左として受け止められています。使い方も、簡単な文章やExcel関数の作成から、音声データを使った議事録作成、Excelデータの傾向分析、企画のアイデア出しの相談相手へと広がりました。数時間かけて読み込んでいた資料の要点を数分で把握できるようになった点も挙げられています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、全社的にツールは配ったのに使われていない、という段階で止まっている組織です。この事例で効いたのは高度な作り込みではなく、実際に手を動かす場を設け、その体験が同僚へ伝わる経路を用意した点なので、業種を問わず取り入れやすい部分があります。
一方、そのまま持ち込みにくい条件もあります。藤沢市には約4000名という母数があり、体験した職員から周囲へ伝わっていく余地が大きい。数人から十数人の職場では口コミの連鎖が起きにくく、一人ひとりに使い方を直接見せて回るほうが現実的でしょう。LGWAN対応や国内リージョンでの管理といった要件も行政に固有のもので、民間企業がそのまま流用できる基準ではありません。自社にとって外せない条件は何かを、比較検討に入る前に言葉にしておく必要があります。
まずは次の会議の30分を、説明ではなく各自の端末で目の前の業務について一つ質問を打ち込む時間に充ててみてはどうでしょうか。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
電通総研
自治体向け生成AIソリューション「minnect AIアシスト」を提供する企業。自治体特有の要件やセキュリティ要件に対応したセキュアなChatGPTサービスを提供し、導入後のサポートや機能アップデート、ユーザー会の開催を行っている。
神奈川県藤沢市
出典・参考情報
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