実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.15
化学メーカーの社内RAG構築、閲覧権限の設定とデータ移行をどう解いたか
企業規模:500人以内
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内文書に機密が混ざりAIに読ませられない
- 規程や制度の問い合わせ対応に手を取られている
- ベテランの知見が退職で失われそう
どのようなAIの取り組み?
文書ごとの閲覧権限を保ったまま社内資料をAIが検索できる環境を整え、研究所の知見共有と管理部門の問い合わせ対応の効率化に取り組んだ事例
業種
化学メーカー(製造業)
取り組み領域
社内文書検索(研究所・管理部門)
使ったAI
RAG(Amazon Bedrock Knowledge Bases)
主な成果
総務部の利用者71%が問い合わせ対応の負荷軽減を回答
製紙用薬品などを手がける化学メーカーのCHEMIPAZは、2024年3月に生成AIチャットツール「Generative AI Use Cases(GenU)」の社内利用を始め、同年11月に全社展開を終えました。次の段階として、社内文書をAIの回答に活かすRAG(外部の文書を検索して回答に反映させる仕組み)の構築に着手しますが、機密を含む文書ごとの閲覧権限をどう扱うか、Amazon EC2上のファイルサーバーにあるデータをどう検索対象に載せるかという二つの技術的な壁に突き当たります。ITパートナー4社を比較したうえで採用したのが、サーバーワークスの「RAG運用支援」でした。Entra IDとAmazon Cognitoの連携、Amazon Bedrock Knowledge Basesのメタデータフィルタリング、AWS DataSyncによる転送の自動化で二つの課題に対処し、月次の定例会で回答精度の改善を続ける体制を敷いています。
出典:導入事例(CHEMIPAZ株式会社様) - AWS伴走支援ならサーバーワークス 発行元:サーバーワークス
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
研究所には長年の実験データや技術ノウハウが積み上がっている一方、その多くを特定のベテラン研究員が「生き字引」として把握しており、今後数年で定年退職が増えれば自社独自の知見が消えてしまうという危機感がありました。管理部門からも、社内規程や制度資料をAIに取り込んで担当者の問い合わせ対応を軽くしたい、という声が上がっています。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「AIに読ませる文書が足りない」ことではありません。文書はすでにファイルサーバーにあり、部署やプロジェクトに応じた閲覧権限も付いていた。問題は、その権限の秩序を崩さずにAIの検索へ載せる手立てが自社側になかった点にあります。RAGの入口に立ちはだかったのは回答精度の巧拙ではなく、権限とデータの置き場所という、きわめて地味なIT運用の設計だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
効いた要因の一つは、RAG用に新しい権限体系を作らず、ファイルサーバーにある既存のフォルダアクセス権をそのまま検索制御へ写し取る設計を選んだことです。認証基盤にEntra IDを据えてAmazon Cognitoと連携させ、Amazon Bedrock Knowledge Basesのメタデータフィルタリングで文書ごとに閲覧できるユーザーを絞り込む構成が採られました。この形なら、誰がどの資料を見てよいかという判断は現行の運用がそのまま引き継がれ、AIを入れるたびに権限を定義し直す作業は生じません。機密性の高い研究データまで対象に含められたのは、既存の秩序を移植するという割り切りが効いたためと考えられます。
データ移行を一度きりの引っ越しではなく、日々続く同期作業として設計した点も見逃せません。AWS DataSyncによる自動転送は初回の大容量アップロードを楽にするためだけの仕組みではなく、RAGの運用が軌道に乗って全社へ広がったあとに毎日積み上がるファイルを前提に置いた選択です。当座は手作業でも回せそうに見える領域を先に自動化してしまう判断が、情報システム部門の負担を将来にわたって抑えたのでしょう。
画面を、すでに全社展開済みのGenUのまま使い続けた選択も、この取り組みの性格をよく表しています。ベンダー独自のパッケージを土台にすれば、使えるLLMや機能はその仕様に縛られる。進化の速い領域で選択肢を手放さないという方針が、RAGという新しい仕組みを既存の利用導線へ無理なく接ぎ木する形につながりました。加えて、定量的な評価とユーザーからのフィードバック分析で課題を洗い出し、月次で改善を回す前提の支援を選んだことは、構築後にRAGが放置される事態への備えになっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
AWS DataSyncの活用により、手作業では数十分から数時間かかっていた大容量ファイルの転送が数分で完了するようになり、数十GB規模のデータも短時間で扱えています。RAGを利用した総務部へのアンケートでは、利用者の71%が問い合わせ対応の負荷を軽減できたと回答しました。管理本部全体での負荷軽減は現時点では見込みの段階ですが、研究所では特定の研究員に集中していた知見を他の研究員が共有・活用できる環境が整っています。全社のGenU利用件数は2025年6月の1,537件から7月は2,347件へ、月間アクティブユーザーは147名から184名へ増え、Good評価の割合は86%を維持しています。
うちでも使える?
この進め方が効くのは、ファイルサーバーのフォルダ権限が実態と合っていて、Entra IDのような認証基盤がすでに社内で動いている組織です。権限の設計図が現行運用として存在していれば、それをAI検索側へ写すという発想がそのまま使えます。逆に、共有フォルダが誰でも自由に置ける状態になっていたり、担当者が去ったまま所在の分からない資料が紛れ込んでいたりすると、権限を移植した瞬間に、見せてはいけない文書が検索結果へ出るか、絞りすぎて誰の役にも立たないかのどちらかに転びます。紙のまま残る実験ノートや個人のPCに眠る資料も、この方式の射程には入りません。
小さく始めるなら、全社共通の規程集のように、権限が単純で更新元が一つに定まっている文書群を最初の対象に選んでみてはどうでしょう。権限設計の難所をいったん避けたまま、AIの回答が実務にどこまで耐えるかを確かめられます。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社サーバーワークス
AWSに特化した事業を2009年より展開するAWS伴走支援事業者。AWS認定の最上位パートナー(AWS Premier Tier Services Partner)で、AWS請求代行、AWS設計・構築支援、AWS運用・サポート、AWS活用支援などのサービスを提供する。RAGの性能を定量評価で可視化し、LLMを活用した評価やユーザーフィードバック分析を通じて課題を特定、継続的な改善サイクルの確立を支援する「RAG運用支援」を提供している。
CHEMIPAZ株式会社
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