実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.14
テレビ朝日が300万件超の映像に顔認識AI、人物特定を数分に縮めた工夫
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 過去の資料を探すのに時間がかかる
- ベテランの記憶頼りの作業が続いている
- 映像や写真が溜まる一方で活かせない
どのようなAIの取り組み?
顔認識AIで300万件超の映像アーカイブに映る人物を特定し、メタデータ付与と映像の探し出しを効率化したAI取り組み
業種
テレビ放送(メディア・広告・コンテンツ)
取り組み領域
映像アーカイブ管理/メタデータ付与
使ったAI
顔認識AI「カオメタ」(画像・映像AI)
主な成果
1つの映像の確認が何時間から数分に短縮
テレビ朝日の技術局アーカイブ運用センターは、開局以来の放送映像や取材素材に加え、それ以前のフィルム映像や写真も含めた300万件超の画像・映像データを管理しています。同センターは、東芝デジタルソリューションズが提供する顔認識AI「カオメタ」を導入し、映像に映る人物の特定とメタデータの付与に活用しています。カオメタは東芝研究開発センターが開発した顔認識技術を用いたメディア向けソリューションで、1人につき1枚の顔写真を辞書に登録すれば認識が成立し、顔領域を追跡する人物トラッキングやマルチ画面上の小さな顔の認識といった放送現場向けの機能を備えます。導入判断までには約5年の比較検証が置かれ、パリオリンピックの映像でも人物特定に使われました。アーカイブ業務の実務は、テレビ朝日の100%子会社である株式会社フレックスが主に担っています。
出典:映像管理を変革する顔認識AI「カオメタ®」で300万件超の映像資産価値の最大化を実現 | 事例紹介:デジタル事業 | 東芝 発行元:東芝デジタルソリューションズ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
アーカイブ運用センターが直面していたのは、ある人物が映っている場面を探すには対象の映像を目視で確認するしかなく、しかも人の目と記憶だけでは正確な特定が難しいという状況でした。そこへ、長年の経験と専門知識を持つ一部のベテランスタッフが定年退職などで現場を離れ始め、若手への技術継承が急を要する課題として重なります。
編集部の見立てでは、この困りごとの根にあったのは映像の数そのものではありません。300万件という規模だけが問題なら、保管と整理の仕組みを増強すれば足ります。実際に詰まっていたのは、映像を探し当てる鍵となる「誰が映っているか」という情報が、システム上のデータとしてではなく、一部のスタッフの記憶という形でしか存在していなかった点ではないでしょうか。記憶は検索もできなければ複製もできません。人が現場を離れるたびに検索できる範囲が静かに狭まっていく構造こそが、本当の課題だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
起点にあるのは、メタデータに求められる5W1Hのうち「Who(誰が)」の一点へ狙いを定めた設計です。映像に付く情報をまとめて機械化しようとすれば、対象も評価軸も一気に広がり、現場で使える精度に届かないまま終わりかねません。検索の鍵として最も効きが強く、なおかつ人の記憶に依存していた要素を選んで置き換えたことが、限られた投資で手応えを出す条件になったと見ています。
AIの判断を人が検証できる形に翻訳したインターフェースの作り方も効いています。顔認識エンジンは辞書に登録した顔画像の特徴量と映像から検出した顔の特徴量を照合し、どの程度似ているかを類似度として出しますが、カオメタではこれを一致率としてパーセンテージに変換し画面に示します。オペレーターはAIがどれだけ確信を持っているかを即座に読み取り、数字が心もとなければ自分の目で追加確認へ回れます。人物が映像内のどの位置にいるかまで表示する仕様と合わせ、AIを最終判断者ではなく確認の出発点に据えた設計が、ベテランから若手まで誰でも使いこなせる状態を支えたのでしょう。
選定と導入後の関わり方も、この事例に固有の要素として拾っておきたいところです。導入までに約5年をかけ、セキュリティ面や費用対効果に加え、ライフサイクルコスト、機密性の高い報道素材の取り扱いといった観点から複数のサービスが比較検証されました。導入後も開発元である東芝デジタルソリューションズと協力しながら機能改善が続けられ、選挙番組のような生放送での即時の人物識別など、放送現場ならではの要件へ寄せていく形がとられています。買った時点の機能で運用を固定せず、使いながら現場に合わせて育てる進め方だったことが大きい。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
作業時間の面では、以前は1つの映像を確認するのに何時間もかかっていたものが、数分で必要な情報を抽出できるようになりました。二次利用の際に出演者を一人ずつ確認していた権利処理も大幅に短縮され、映像資産を活用できる幅が広がっています。パリオリンピックの映像では、化粧や髪型が大きく変わるアーティスティックスイミングの選手についても正確に特定できることが確認されました。従来は見落とされがちだった細かな情報まで拾えるようになり、スタッフの負担軽減と、空いた時間をほかの業務へ回せる状態にもつながっています。
うちでも使える?
応用が効きそうなのは、映像や写真といった資産が長年たまっていて、「誰が写っているか」が探すときの鍵になる業務です。カオメタは1人につき1枚の顔写真を辞書に登録すれば認識できる仕組みのため、社員、取引先、出演者や選手のように、対象の顔をあらかじめ一覧にできる場面とは噛み合いやすいと考えられます。
一方、通りすがりの不特定多数を相手にしたい場合は、照合するための辞書そのものを用意できず、この形の効き目は薄くなります。テレビ朝日が機密性の高い報道素材の扱いを選定の判断軸に置いていたように、顔という情報を扱う以上、社内の個人情報の取り決めや、データをどこまで外に出すかの設計を先に固めておく必要もあります。
まず試すなら、対象となる人物が数十人程度に収まる業務をひとつだけ選び、その範囲で照合の精度と現場の使い勝手を確かめてみる。全社に広げるかどうかの判断は、その手応えを見てからで遅くありません。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
東芝デジタルソリューションズ
東芝研究開発センターが開発した高精度顔認識AIを活用し、放送現場向け顔認識ソリューション「カオメタ」を提供する企業。
株式会社テレビ朝日
出典・参考情報
映像管理を変革する顔認識AI「カオメタ®」で300万件超の映像資産価値の最大化を実現 | 事例紹介:デジタル事業 | 東芝
発行元:東芝デジタルソリューションズ
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