実施 2023.06 ・ 更新 2026.08.14
東武鉄道の特急需要を機械学習で予測、車両増結で600名超の利用を生んだ実証実験
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 繁忙期の満席でお客を逃している
- 過去実績と勘だけの計画が不安
- 天候やイベントで需要が読めない
どのようなAIの取り組み?
機械学習と外部データで特急券の潜在需要を最長14週間先まで30分単位で予測し、車両の増結判断に活用することを検証したAI取り組み
業種
鉄道業(運輸・物流)
取り組み領域
特急列車の運行計画・需要予測
使ったAI
需要予測サービス「Perswell」(機械学習)
主な成果
実証実験で増結を判断し、通常より600名以上が特急を利用
東武鉄道は、東京と日光・鬼怒川エリア等を結ぶ特急列車で、紅葉シーズンなどの繁忙期に満席が多く発生する状況を抱えていました。同社とデータサイエンス企業のDATAFLUCTは、2023年6月から9月にかけて、機械学習と外部データによる自動需要予測サービス「Perswell」を用いた実証実験を実施しています。特急券の発売数といった社内のデータに、天候・気温、新型コロナウイルス感染症の重症者数、地域イベントなどの外部データを組み合わせ、2〜14週間先の潜在需要数を30分単位で予測するという内容です。対象は1日あたり50〜60本の特急列車。予測結果をもとに通常3両編成の特急を6両編成に増結したところ、通常より600名以上多い利用につながりました。現在は2024年5月の本番導入へ向けた開発が進められています。
出典:DATAFLUCT、東武鉄道の特急券需要を機械学習で予測。実証実験では、最長14週間後の潜在需要数を30分単位で予測。増便等の判断に活用して、600名以上の潜在需要を掘り起こす | DATAFLUCT[データフラクト] 発行元:株式会社DATAFLUCT
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
紅葉シーズンなどの繁忙期には満席の列車が多く出る一方、運行本数を増やしたり車両を増やしたりすれば輸送力は上げられます。ただ、過去の実績と担当者の推計に頼った運行計画では、需要と供給のあいだにずれが生じるケースが避けられませんでした。コロナ禍を経たテレワークの定着や、インバウンド需要の浮き沈みという環境変化も重なり、社内のデータだけで将来の需要を見通すことが難しくなっていた状況があります。
編集部の見立てでは、この困りごとの中心は予測の当たり外れそのものではなく、需要を動かす要因が社内データの外側へ移ってしまったことにあります。もう一つ見逃せないのが、満席で買えなかった人の存在は販売実績にまったく残らないという構造。売れた数は分かっても、本来乗りたかった人の数は見えないままで、機会損失は数字にならずに消えていきます。この実験の狙いが「潜在需要の可視化」と置かれているのは、そこに理由があるのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
列車ごとの需要を30分単位で出すという粒度の設定が、この取り組みの起点になっています。運行計画で問われるのは「来月の利用者が何人か」ではなく「どの列車を何両にするか」であり、日単位や路線単位の予測では判断材料になりません。1日50〜60本という対象の取り方も、実際のダイヤの構造にそのまま重なります。予測を分析結果として示すのではなく、現場が手を動かせる単位に合わせて出した設計こそが、そのまま判断に使える情報へと変えた要因ではないでしょうか。
予測の対象期間を2〜14週間先に置いた点にも、同じ発想が働いています。増便や増結は運行日の一定期間前に決めておく必要があるため、直前になってから精度の高い数字が出ても使いどころがありません。精度を抽象的に追うのではなく、判断が必要になる時点で実用に足る水準へ到達することを要件に据えた割り切りが、この実証実験を実運用の検証として成立させています。
天候・気温、感染症の重症者数、地域イベントといった外部データを社内の発売実績と組み合わせるやり方は、社内データだけでは説明のつかない変動要因を外側から補う手立てです。観光利用の比重が大きい特急では、天気や催しの有無が乗る・乗らないの分かれ目になりやすく、その関係を機械学習に学ばせる余地が大きい領域だといえます。どの外部データをどのアルゴリズムで扱うかという問いに東武鉄道側が答えを持てずにいたところを、DATAFLUCTが予測モデルの構築役として引き受け、鉄道側は運行計画への反映を担うという分業が組まれました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験では、1日50〜60本の特急の需要について、増便等の判断に実用的に利用できる精度の予測結果が得られています。この予測にもとづいて通常3両編成の特急を6両編成にしたところ、通常より600名以上多くの利用がありました。東武鉄道からは、特急に対する世の中のニーズをより精緻に理解できたという評価も示されています。現時点はあくまで実証段階であり、フラッグシップ特急「スペーシアX」なども含む運行計画への活用を目指して、2024年5月の本番導入に向けた開発が続いています。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、需要が天候やイベントなど外の要因で動き、なおかつ供給側を事前に増減できる余地がある業務です。座席、客室、在庫、シフトのように「一定期間前に決めれば増やせるもの」を持っているかどうかが、実際の分かれ目になります。逆に、需要が読めても供給を動かせない場合、たとえば増やす車両や人員そのものを確保できない場合には、精度を上げても打ち手に結びつきません。販売データが時間帯まで残っていない業態や、自社で販売実績を握っていない業態も、同じ手順はそのまま踏みにくいでしょう。
試しやすい最初の一歩は、直近の繁忙期に売り切れや満席が起きた場面を、月単位ではなく時間帯まで分解して並べてみることです。そこへ当日の天気や近隣の催しを重ねると、社内のデータだけで説明できる変動と、外の要因に引きずられている変動の境目が見えてきます。外部データを買い足す前に、その境目がどれだけあるかを確かめる。判断はそこからで十分間に合います。
この事例は2023年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:経営・企画
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社DATAFLUCT
データサイエンスで企業と社会の課題を解決する企業。最新の機械学習と外部データを活用した高精度な需要予測サービス「Perswell」や、社内外のあらゆる形式のデータを扱いやすくする「AirLake」を提供し、さまざまな業種のサプライチェーンマネジメントに活用されている。代表取締役CEOは久米村隼人。
東武鉄道株式会社
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
