実施 2025.05 ・ 更新 2026.08.14
京阪電鉄でつながらない電話が半減、FAQ刷新と2種類のAIチャットボット
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 問い合わせの電話が鳴りやまない
- サイトの情報が増えすぎて探せない
- FAQの更新作業に手が回らない
どのようなAIの取り組み?
定型回答型と生成AI型という2種類のチャットボットとFAQサイトの刷新を組み合わせ、つながる前に切れてしまう電話の割合を約2分の1に減らした取り組み
業種
鉄道業(運輸・物流)
取り組み領域
顧客対応/お客さまセンター・FAQ
使ったAI
定型回答型チャットボット(KARAKURI chatbot)と生成AI型チャットボット(Generative Navigator)
主な成果
放棄呼の割合が約2分の1に減少
大阪・京都・滋賀を結ぶ京阪電気鉄道は、公式サイトとFAQの作り直しに、性格の違う2つのAIチャットボットを組み合わせました。2011年に制作した公式サイトは情報を継ぎ足すうちに目的の案内へたどり着きにくくなっており、別ドメインで運用していた沿線の観光情報も公式サイトへ統合。FAQはカラクリのsmartFAQへ移し、新しいFAQサイトを2024年10月に公開しています。2025年5月には、ダイヤ乱れのように同じ質問が一度に大量に届く場面を受け持つ定型回答型のKARAKURI chatbotと、公式サイトの情報を検索して回答を案内する生成AI型のGenerative Navigatorを並行して立ち上げました。生成AI型は、英語・簡体字・繁体字・韓国語で用意しているインバウンド向けページにも設置されています。
出典:FAQ刷新と2つのAIが切り拓く京阪電鉄の新たな顧客体験 発行元:KARAKURI Inc.
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
約90ある駅の多くが無人化、あるいは限られた時間帯だけ駅員が勤務する体制へ移り、対面での案内は縮小しました。かつて駅で受け止めていた忘れ物の相談や切符の購入案内はお客さまセンターの電話に集まり、1件の対応には12〜13分ほどかかります。雨上がりの時間帯は忘れ物の問い合わせが重なるため電話が集中し、放棄呼(つながる前に切れてしまった電話)が急増していました。営業時間外は受け止める手段そのものがありません。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は電話の本数そのものではなく、駅という窓口が担っていた案内の受け皿が、事実上「電話一本」に絞られてしまったことにあります。旧来のFAQは存在していたものの、操作性とメンテナンス性に難があり、担当者からも管理しやすい仕組みを求める声が出ていました。自己解決の導線が細いまま窓口だけが減れば、残った一本に負荷が集まるのは構造上避けられません。
どうやって、うまくいったのか
性格の異なる2つのチャットボットを、質問の型で使い分けた設計が、この取り組みの中心にあります。ダイヤ乱れのように同じ問い合わせが一度に押し寄せる場面は回答が決まっている定型回答型に任せ、沿線の観光地や駅周辺の飲食店のように問い方が人それぞれになるロングテールな質問(少数ずつ多様に発生する質問)は生成AI型が引き受けます。鉄道の案内は誤りへの許容度が低く、当初は誤情報生成のリスクや予算の制約から生成AI型の採用自体が見送られかけていましたが、公式サイトに載っている情報を検索したうえで答えるという仕組みが、参照先を自社の公開情報に限定する歯止めとして働いたと考えられます。正しさを守る手立てを「生成AIを使わない」ではなく「生成AIが見る範囲を決める」に置き換えた点が、判断を動かした要因ではないでしょうか。
更新の起点を一か所へ寄せた構成も効いています。FAQシステムとチャットボットでFAQコンテンツを一元管理し、4言語のインバウンド向けページに生成AI型を置いたことで、公式サイトを直せば各言語の回答もその内容に沿って返るようになりました。多言語のFAQをイベントのたびに作り直す作業は、手間のわりに成果が見えにくく後回しになりやすい領域です。ここを人手の更新作業から外した判断は、仕組みが運用に耐えて残るかどうかを左右する部分だったと見ています。
道具選びの進め方にも、参考になる型があります。管理画面を実際に操作して直感的に扱えるかを確かめ、社内のイントラネットやグループ会社で他社製のチャットボットを運用している担当者に使い勝手を直接聞き取ったうえで、判断が組み立てられました。安価な製品に寄せる案も検討されましたが、顧客が直接触れるチャネルであることを理由に、費用よりも一定以上の品質を優先する基準が置かれています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
リリースから約1か月の時点で、FAQの稼働率は2011年導入の旧システムと比べて数倍に伸び、ヒット率も良好です。交通系ICカードや企画乗車券、QRコード乗車券をめぐる定型的な質問は、複雑な払い戻しを除いてほとんど電話で聞かれなくなり、毎年恒例のイベント「ファミリーレールフェア」に関する電話も大きく減っています。放棄呼の割合は約2分の1に縮小。多言語FAQの更新作業も不要になりました。2025年8月に予定される忘れ物受付フォームについては、電話が苦手な層からの問い合わせが2〜3割ほど減ると見込む段階で、正確な評価には季節変動を含めた1年間の運用が必要とされています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、問い合わせの上位が定型的な質問に偏っていて、その答えがすでに自社サイトなど公開情報の側に書かれている場合です。この事例で電話が減ったのも、ICカードが使えるかどうか、乗車券をどう使うかといった、答えが一つに定まる質問群でした。逆に、個別の事情を聞き取らなければ答えが決まらない相談は電話に残ります。実際、複雑な払い戻しは対象から外れており、生成AI型の担当範囲も、誤りが致命傷になりにくい観光案内から広げる形が採られています。回答の根拠となる情報が社内に散らばったままであれば、チャットボットを載せても答える材料がない状態になりかねません。
最初の一歩としては、直近1か月の問い合わせ記録を開いて、「自社サイトに答えが載っているのに電話で聞かれた質問」にいくつ印を付けられるかを数えてみてはどうでしょうか。その数が、そのまま自己解決へ回せる余地の見当になります。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:顧客対応・サポート
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
KARAKURI Inc.(カラクリ)
AIチャットボット「KARAKURI chatbot」、生成AI型チャットボット「Generative Navigator」、FAQシステム「smartFAQ」などを提供する企業。
京阪電気鉄道株式会社
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