実施 2023.10 ・ 更新 2026.08.14
RAGで社内マニュアルに答えるAIを1カ月で構築、薬局検索サイト運営社の検証
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 問い合わせの回答が人によってバラつく
- サービスが多く誰に聞けばよいか分からない
- 社内マニュアルを探すのに時間を取られる
どのようなAIの取り組み?
RAGを使った社内向け生成AIチャットボットを、約1カ月でPoC検証用に構築した事例
業種
ヘルステック(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
社内の問い合わせ対応・サポート
使ったAI
RAGを活用した生成AIチャットボット(OpenAIのモデル/Slackアプリ)
主な成果
約1カ月でPoC検証用環境を構築し、2023年12月から社内検証を実施中
薬局・ドラッグストア検索予約サイト「EPARKくすりの窓口」などを運営する株式会社くすりの窓口が、社内の問い合わせ対応を支える生成AIチャットボットを、PoC(小規模な試験導入)の検証用として構築しました。同社では提供サービスごとに専門用語や運用が異なり、対応する従業員の習熟度によって回答内容が揺れる状態が続いていました。開発とインフラ基盤の構築を担ったのはクラスメソッドで、2023年10月のキックオフから約1カ月で、AWS上にRAG(外部データを検索してAIの回答に活用する仕組み)の環境が用意されています。操作マニュアルなどを情報源として参照し、Slack上で質問すると回答が返るアプリをサービス別に3種類そろえる形で、基盤モデルは複数の候補からOpenAIのものが選ばれました。社内検証は2023年12月から始まっています。
出典:くすりの窓口様事例| RAGを活用した生成AIチャットボット提供。LLM選定やインフラを1カ月で構築 | クラスメソッド株式会社 | AWS・生成AI・クラウドの技術支援 発行元:クラスメソッド株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
問い合わせは電話、メール、Webフォームと複数の窓口から届き、対象となるサービスもオンライン診療や服薬指導、お薬手帳と幅広く広がっていました。サービスごとに専門用語もオペレーションも違うため、答える従業員の理解度によって回答の中身に差が出る。同社が最初に見つめ直したのは、この回答品質のばらつきでした。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は従業員の能力差ではなく、事業が広がるほど覚えるべき知識が増え続けるという構造そのものにあったのではないでしょうか。マニュアルが存在していても、それがサービス単位で散らばっていれば、問い合わせを受けた人は「どの資料のどこに書いてあるか」を毎回探し当てなければなりません。そこへ、自社プロダクトの開発を優先する方針から検証にリソースを割けないという事情が重なり、社内で解決策を試すこと自体が難しい状態にあったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
顧客ではなく従業員を利用者に据えた設計が、この取り組みの起点になっています。最終的な目標を問い合わせシステムへの組み込みに置きながら、まず作られたのは、従業員が質問して精度の高い回答を得たうえで、自分の言葉で顧客に返すための社内向けボットでした。AIの回答がそのまま顧客に届かない構造にしておけば、精度が十分でない段階でも実運用に近い形で試せます。検証を止めずに前へ進めるうえで、この線引きが効いたと考えられます。
情報源をサービス単位で切り分け、3種類のアプリとして分けた点も見逃せません。専門用語もオペレーションも異なる複数サービスを一つのボットにまとめれば、参照すべき文書が混ざって回答が曖昧になりやすい。困りごとの構造に合わせて、器のほうを分けた判断です。実装は社内チャットのSlackアプリとして載せる形をとり、クラスメソッドが、情報源となるドキュメントを扱うためのセキュアな環境と、言語モデルが持たない社内固有の情報を参照させるRAGの仕組みをAWS上に構築したうえで、基盤モデルの選定もあわせて担いました。
精度が出ないことを前提に置いた改善の分解も、この進め方の特徴です。課題は、製品の操作マニュアル自体が不足している点と、プロンプト(質問の入力内容)に対してAIが完全な回答を返せていない点の二つに整理されています。前者はマニュアルの修正・追加によるドキュメント整備で、後者は正しい質問の書き方を検証し、適切な質問方法をアプリ上で説明する運用改善で手当てする。原因を文書側と使い方側に切り分けたことで、「精度が低い」という漠然とした状態が、担当を決めて着手できる作業へと姿を変えたのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2023年10月のキックオフから約1カ月でPoC検証用の環境が立ち上がり、サービス別に3種類のSlackアプリが用意されました。2023年12月からは社内検証が始まり、精度検証と利用後のアンケートを通じて社内からの要望を集めている段階です。回答精度についてはまだ課題が残ると同社自身が捉えており、ドキュメント整備と質問方法の改善を並行して進めながら、2024年春には新人教育用の生成AIチャットボットを社内ローンチする予定です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、同じ問い合わせに複数の担当者が答えていて、その答えの根拠が社内文書として残っている業務です。窓口が電話・メール・フォームと分かれていても、参照する知識が文書化されていれば、まずは顧客対応そのものではなく社内の回答づくりを助ける道具として試す形は取りやすいはずです。
一方で、そのまま持ち込みにくい場面もあります。くすりの窓口の検証でも、製品マニュアルの不足が精度の頭打ちにつながっていました。文書が古い、あるいは担当者の記憶の中にしか答えがない状態では、RAGを組んでも参照先が空のままです。回答の誤りが顧客の判断に直結する領域なら、社内利用にとどめて検証する期間を長めに見積もる判断も要ります。
始めるなら、直近1カ月の問い合わせから「答えるのに手間取った質問」を5件ほど選び、その答えが今どの文書のどこに書かれているかを実際にたどってみる。たどり着けない質問が多ければ、AIより先に整えるべきものがはっきりします。
この事例は2023年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
クラスメソッド株式会社
AWS・生成AI・クラウドの技術支援を行う企業。ChatGPTやAmazon Bedrockなどの各種生成AIサービスの選定からインフラ構築、アプリ開発まで支援し、実績は5,600社以上。技術ブログ「DevelopersIO」を運営。
株式会社くすりの窓口
出典・参考情報
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