実施 2024.03 ・ 更新 2026.08.15
岡山県庁の生成AI、半年で登録者4倍。セミナーと定型文の登録で広げた活用
プロジェクト期間:半年〜 1年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 情報漏洩が心配でAIを使えない
- 資料や連絡文の作成に時間を取られている
- ツールを入れても社内で使われない
どのようなAIの取り組み?
閉じたネットワークで動く自治体向け生成AIと定着施策を組み合わせ、庁内の登録者を半年で約4倍に広げたAI取り組み
業種
県庁(公共・行政)
取り組み領域
庁内の文書作成・情報検索/全庁の生成AI活用
使ったAI
自治体向け生成AIツール「minnect AIアシスト」(生成AI+RAG)
主な成果
登録者数が半年でリリース直後の約4倍に増加
岡山県は2023年5月に生成AIのワーキンググループを立ち上げ、同年8月には利活用ガイドラインと事例集を公開して業務での利用を始めました。当初は一般に公開されているサービスを使っていましたが、機密性の高い業務では使いにくく、庁内固有の情報を参照した回答も得られないという壁に突き当たります。そこで2024年3月にプロポーザル方式での調達を行い、電通総研が提供する自治体向け生成AI「minnect AIアシスト」を採用しました。自治体専用の閉じたネットワーク(LGWAN)上で動き、庁内に保有するデータを参照して回答する機能を備えたこのツールを、約4,000人の職員を対象に登録制で提供。あわせて電通総研と電通西日本が、入門セミナーや意見交換会、アイデアソンといった利用を広げる施策を県と一緒に企画し、施策の効果は登録者数の伸びとして表れています。
出典:自治体に特化した生成AIソリューション「minnect AIアシスト」を導入! 電通総研の定着支援で、庁内の活用を推進する | 事例 | インサイト | 電通総研 発行元:電通総研
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
導入前の岡山県が抱えていたのは、労働生産人口の減少にともなう人手不足への対応という大きな課題と、無料で使えるWebサービスでは越えられない実務上の制約でした。入力した会話が学習に使われ、情報漏洩につながるリスクを無視できないため、庁内に閉じた情報を扱う業務には持ち込めない。庁内のデータを参照した回答も返ってこない。つまり生成AIを試せる範囲が、どの組織でも共通するような当たり障りのない作業に限られていたわけです。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は「AIが使えない」ことではなく、「使ってよい情報の範囲と、実際にやりたい業務の中身が噛み合っていなかった」ことにあります。ルールを先に整え、実際に使い始めていたからこそ、次の壁が「決められた範囲では扱える情報が足りない」という具体的な形で見えてきた、という順序も見逃せません。
どうやって、うまくいったのか
扱ってよい情報の範囲を先に決めてから道具を選んだ、という順序がこの取り組みの土台にあります。2023年8月に公開されたガイドラインは、個人情報や機密情報は入力しない、生成物は厳重に確認する、所属長が適正な利用を監督する、といった要点をA4で4ページに絞り込んだものでした。そのうえで調達の要件に据えられたのが、自治体専用の閉じたネットワーク上で稼働すること、庁内データを参照して回答するRAG(外部のデータを検索してAIの回答に活用する仕組み)を備えること、そして従量制ではなく定額制であることの三点です。使ってよい情報の線引きと、予算の見通しを同時に固めてから選ぶという進め方が、その後の庁内展開の判断を軽くしたのではないでしょうか。
利用者の習熟度に応じて入口を二つに分けた運用も、効き方の大きい工夫です。管理者が活用度の高い指示文を登録しておける共通テンプレート機能は、呼び出すだけで生成AIが使える状態をつくり、これまで触れたことのない職員の最初の一歩を引き受けています。もう一方の、チャットを作る際に前提となる指示(システムメッセージ)を書き込める機能は、回答の質を上げたい中上級者向けの入口として使われ、そこにプロンプトを自動生成するための指示を仕込むという使い方も現場から見つかっています。同じツールでも入口を分ければ、初めて使う人の敷居を下げることと、使い込む人の伸びしろを残すことを両立できる、という点が示唆的です。
登録制という制約を、施策を切らさないことで埋めにいった進め方にも注目したいところです。セキュリティ上の配慮から希望者の登録制をとった以上、使い始めるまでのハードルは残り続けるため、1時間程度の入門セミナー、すでに使っている職員が非アクティブな職員と話す意見交換会、ワークショップ形式のアイデアソン、月1回の掲示板での事例公開、外部講師によるハンズオンと、性質の異なる入口が重ねられました。これらは県だけで企画したものではなく、電通総研および協働する電通西日本との月1回の定例会と日常のやり取りのなかで組み立てられており、電通総研側はAIの専門組織を通じた技術支援に加えて、定着に向けた戦略の提案や研修の講師までを担っています。ツールの提供者が定着の設計にも継続して関わる体制は、施策を打ちっぱなしにせず次の一手につなげるうえで働いたと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
稼働開始から約半年で、270名ほどの職員が登録を申請し、実業務で使っています。登録者数はリリース直後の約4倍まで伸び、その後も増加が続いています。利用者からは、資料の作成時間が従来の1/3程度に縮まった、表計算ソフトのプログラムコードを生成AIに書かせることで新しい機能を圧倒的な短時間で開発できた、といった声がデジタル推進課に届くようになりました。今後は、庁内で要望の高い画像生成機能の追加による複数の形式への対応や、プロンプトを生成する機能の実装が予定されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、扱う情報に制約があり、文書づくりや表計算の作業が日常的に発生する組織です。閉じた環境で動かせる仕組みと、入力してよい情報の線引きを先に文書化しておけば、これまで手をつけられなかった業務でも試せる範囲が広がります。費用が読める料金体系であることも、対象者を広げる判断をしやすくする条件でしょう。
一方で、そのまま真似しにくい面もあります。この事例の広がりは、希望者の登録制というハードルを、セミナーや事例共有といった施策を継続的に打ち続けることで補った結果であり、推進する部署と外部のパートナーが手を動かし続けられる体制が前提になっています。庁内データを参照する仕組みについても、参照させたい資料がある程度そろって整理されていなければ、期待した回答は返ってきません。まず試すなら、部署でよく書く文書を一つ選び、その作成を頼む指示文を誰でも呼び出せる形に整えて、隣の席の同僚に使ってもらうところから。
この事例は2024年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
電通総研
自治体向け生成AIソリューション「minnect AIアシスト」を提供する企業。AIの専門組織「AIトランスフォーメーションセンター」を有し、最新の生成AI情報をサービスへ反映する体制を整えるほか、生成AIの導入・利活用を支援するスペシャリストによる定着戦略の提案、定着施策のアドバイス、研修講師の担当など伴走型の継続的サポートを行う。
岡山県
出典・参考情報
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