実施 2024.11 ・ 更新 2026.08.15
AGCが品質ナレッジを全社共有、更新作業を1週間から2日に短縮した基盤整備
プロジェクト期間:2年 〜 3年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 部署ごとに知見が閉じて全社で共有できない
- 自作の管理表の更新が追いつかない
- 過去のトラブル情報を再発防止に生かせない
どのようなAIの取り組み?
事業カンパニーごとに閉じていた品質リスクのナレッジを全社で見える化し、蓄積したデータのAI解析も今後のテーマに据えた基盤整備の取り組み
業種
ガラス・化学素材製造(製造業)
取り組み領域
品質管理/全社の品質ガバナンス
使ったAI
iQUAVIS(情報の見える化基盤。AI解析は今後の構想段階)
主な成果
更新作業が以前の一週間から2日程度に短縮
AGCの環境安全品質本部は、事業カンパニーごとに蓄積されてきた品質リスクのナレッジを全社で共有するための基盤を構築しました。土台に選ばれたのは、電通総研が提供する、業務・技術・判断を一元的に見える化するシステム「iQUAVIS」です。それ以前は品質マネジメントチームが表計算ソフト等で自作した仕組みを運用していましたが、データ量が増えるにつれ、情報同士の関係を保つ作業が立ち行かなくなっていました。2022年10月に始動したプロジェクトは、概念実証、本格導入の準備、全社展開という3段階を踏んで2024年11月に完了し、電通総研のサポートチームが進捗管理と環境構築、技術支援を担っています。蓄積されたナレッジをAIに解析させ、品質リスクを未然に検知する仕組みづくりは、これからのテーマとして掲げられている段階です。
出典:iQUAVISの導入で品質のガバナンス強化を推進 蓄積したデータのAI活用も視野に | 事例 | インサイト | 電通総研 発行元:電通総研
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
建築ガラス、自動車、電子、化学品、ライフサイエンス、セラミックスと、性格の異なる事業をカンパニーごとに運営してきたことが、AGCの市場変化への適応力を支えてきました。ところが同じ体制が情報共有の壁にもなり、安全や品質のコンプライアンスに関するナレッジが各事業部門の内側で完結して、全社として把握できない状態が続いていました。2021年には品質マネジメントチームがFMEA(故障モード影響解析)の考え方を参考に表計算ソフト等で独自の仕組みを立ち上げ、事例情報を一つひとつ入力していきましたが、データが増えるほど管理は煩雑になり、ある情報を直せば別の情報にも影響が及ぶ関係の複雑さから、メンテナンスが手に負えなくなりました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは情報量の多さそのものではありません。品質リスクの情報はもともと原因と結果、影響範囲が互いに参照し合う網の目の構造を持つのに、それを行と列の器で抱え込もうとしたことに無理があったのではないでしょうか。関係性をデータの側が保持してくれない限り、入力が増えるほど維持の手間だけが跳ね上がっていきます。
どうやって、うまくいったのか
差し替え候補を探す際の基準を「既存のフレームワークを生かしながら運用負荷を軽減できること」に置いた点が、この取り組みの起点になっています。FMEAツールも複数検討されたものの、ニーズに合うものは見つかりませんでした。すでに自作の仕組みで積み上げた考え方を捨てずに、負荷の高い部分だけを差し替える。この線引きが、ゼロからの作り直しに伴う手戻りを避ける方向に働いたと考えられます。
情報の関係性をツール側に持たせる設計思想が、運用が破綻した原因そのものに手を当てています。iQUAVISは課題と原因、その周辺情報の関係を可視化し、従来のFMEAツールに多いマトリクス形式だけでなくツリー形式を含む多様な表示に対応します。しかも一度入力すればすべての形式へ反映されるため、同じ内容を複数の場所で直す作業が発生しません。表現形式を増やしながら入力の起点を一つに絞るという構造が、更新負荷の低減に直結しているとみるのが自然です。
小さく始めて段階的に広げる導入の組み立て方も、この規模の全社展開では効いたはずです。フローティングやネームドユーザーといった柔軟な契約形態を利用し、既存の自社環境である物理サーバーとクラウドの上にネームドユーザーのプラットフォームを構築して、そこからスケールアップしていく方針が採られました。プロジェクト自体も概念実証、本格導入の準備、全社展開という3つのフェーズに分けられ、電通総研のサポートチームが進捗管理、環境構築、技術支援を担っています。ヒアリングを通じて要望と業務フローを把握したうえでカスタマイズ案を示す進め方は、汎用ツールを自社の品質業務の形に寄せるうえで欠かせない工程だったのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2022年10月に始動したプロジェクトは、3つのフェーズを経て2024年11月に計画どおり完了しました。運用面では、以前は一週間かかっていた作業が2日程度で済むようになっています。同年11月に始動したプラットフォームは国内ユーザー約100名が活用しており、事業カンパニー内で閉じていた品質関連データを企業資産として扱う道が拓けた、と現場では位置づけられています。海外拠点を含むグローバルなプラットフォームへの展開、そして蓄積されたナレッジをAIに解析させてリスクを未然に検知する仕組みは、いずれも今後のテーマです。
うちでも使える?
応用しやすいのは、情報そのものは社内にあるのに、その情報同士のつながりが管理しきれず更新が止まっている領域です。品質のリスク管理に限らず、設備の不具合履歴、クレーム対応の経緯、監査で指摘された事項など、原因と影響が枝分かれして絡み合う情報は、表形式で持つほど修正の連鎖に耐えられなくなります。逆に、記録が一件ごとに独立していて相互参照がほとんど発生しない業務では、この種の基盤に載せ替えても得られる効果は限定的でしょう。
一方で、この事例が示すのは、AI解析はあくまで整った土台の先にあるという順序です。AGCでもAIによる解析は今後の構想として語られており、まずデータを企業資産として扱える形に整える工程に約2年が費やされています。部門をまたいだ運用ルールの合意や、既存の考え方をどこまで引き継ぐかの判断も、ツール選定と同じだけの重みを持ちます。
はじめの一歩としては、いま社内で更新が止まっている管理表を一つ開き、「この一行を直したら、ほかのどこを直す必要があるか」をたどってみるのはどうでしょうか。その連鎖の長さが、関係性をツール側に預けるべきかどうかの判断材料になります。
この事例は2024年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
電通総研
構想設計支援システム「iQUAVIS(アイクアビス)」を提供する企業。業務・技術・判断を一元的に見える化するiQUAVISを基盤に、導入プロジェクトの進捗管理、環境構築、技術支援を行う。
AGC株式会社
出典・参考情報
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