実施 2026.03 ・ 更新 2026.08.15
生成AIが一次審査、人が最終判断で交通広告の審査時間半減を目指す仕組み
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテラン頼みのチェックから抜け出せない
- 確認する件数が増えて手が回らない
- 異動のたびに判断基準がぶれる
どのようなAIの取り組み?
生成AIによる自動審査と人の最終判断を組み合わせ、交通広告の審査業務の標準化とスピード向上に取り組んだ事例
業種
交通広告の媒体管理・販売(メディア・広告)
取り組み領域
広告審査業務
使ったAI
Gemini(Google Cloud の生成AI)
主な成果
審査1件あたりの対応時間1/2を目標に掲げ、性能テストでは全体10〜15分で審査完了
東京メトログループの総合広告会社として交通広告媒体の管理・販売を手掛ける株式会社メトロアドエージェンシーが、アイレットとともに広告審査の仕組みを刷新しました。画像や動画といった広告素材を対象に、広告主審査・商材審査・意匠審査の3種類を Google Cloud の生成AIである Gemini が実行し、その結果を参考に審査担当者が最終的な合否を判断するハイブリッド型のフローを構築。あわせて、担当者の経験に依存していた審査基準をシステム上で管理し、審査基準に合ったプロンプトの作成とテストデータでの試し実行まで同じ画面で行える形に整えました。定型的な審査業務の自動化によって1件あたりの対応時間を1/2にすることを目標に掲げた取り組みです。
出典:審査時間を1/2に短縮!Google Cloud の生成 AI を活用した広告自動審査基盤の構築|株式会社メトロアドエージェンシー様の導入事例 発行元:KDDIアイレット株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
規制緩和により広告審査の案件は複雑化・多様化し、デジタルサイネージの普及とインプレッション販売の拡大で審査対象そのものも増えていました。加えて人事異動やジョブローテーションによって、審査ノウハウが特定の担当者に依存する属人化と、知見が組織内で共有されにくくなるリスクが表面化していた状況です。
編集部の見立てでは、この困りごとの中心にあったのは件数の多さそのものではなく、判断の根拠が担当者の頭の中にしか残っていなかった点ではないでしょうか。交通広告は公共空間に掲出されるメディアであり、その信頼性を担保する審査には、速さと同じくらい「なぜその結論になったのか」を再現できることが求められます。基準が個人に紐づいたままでは、人を増やしても回答の一貫性は揺れ続けます。スピードと一貫性が両立しなかったのは、担当者の力量の問題ではなく、基準を組織の側に置く器がなかったからだと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、3種類の審査を Gemini に任せつつ、合否の最終判断だけは人の手元に残した役割の線引きです。広告主審査・商材審査・意匠審査という区分は、もともと業務側にあった審査の型であり、そこにAIを丸ごと置き換えるのではなく差し込む形をとっています。公共空間に掲出される広告という性質上、判断の責任を人が引き受けられる構造を保ったことが、現場が結果を信頼して使える前提になったと考えられます。
技術面で要になったのは、審査基準を条文単位に切り分けて管理・実行するという設計です。広告審査規定には数百に及ぶチェック項目があり、3種類それぞれ10分以内・合計30分以内という厳しい性能要件が課されていましたが、入力トークンが上限に近づくと回答精度が落ちるというLLMの傾向を前提に、大きな規定を一度に投げず条文ごとに分割しています。この分割は、非同期で大量のリクエストを同時にさばくキューイング構成と組み合わせることで、精度と速度のどちらかを諦める必要をなくしました。数百規模の同時リクエストで避けられない一時的なエラーには、指数関数バックオフによる再試行を用意しています。
もう一つの柱は、精度を運用しながら育てていく回路を最初から組み込んだことです。審査基準に沿ったプロンプトを画面上で作成し、テストデータで実際の挙動を確かめられるようにしたうえで、AIの回答に問題があれば担当者がその場でフィードバックを入力し、プロンプト改善へ回せる導線を設けました。さらにLLMOps(生成AIの運用改善を支える仕組み)ツールのLangfuseで、審査基準ごとの実行時間や回答内容、トークン消費量を追える状態にしています。改善の担い手を開発側だけに置かず、審査担当者の気づきが基準の更新につながる設計にした点が、この仕組みを一過性で終わらせない工夫といえます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
性能テスト段階では、数百規模の Gemini へのリクエストでも平均5分程度、全体でも10〜15分で審査が完了し、各審査10分以内・合計30分以内という要件を大きく上回る処理速度が確認されています。コスト面では、1つの意匠ファイルに複数の審査リクエストが発生する構造に対してコンテキストキャッシュを効かせ、1リクエストあたりのトークン消費量と費用を抑えました。1件あたりの対応時間を1/2にすることは目標として掲げられた段階ですが、その先には、空いた時間をクリエイティブの検証や新しい広告戦略の立案に振り向ける狙いが置かれています。判断基準がシステム上に残る形になったことで、担当者が交代しても同じ基準で審査を続けられる体制が整いました。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断の根拠が規定・約款・社内基準といった文書として既に存在し、それを項目単位に分解できるチェック業務です。この事例で効いたのは、数百のチェック項目を条文ごとに切って個別にAIへ問う組み立てであり、基準が明文化されているほど同じ形に乗せやすくなります。逆に、明文化された基準がなく、取引先との関係や過去の経緯で結論が変わるような判断は、AIに問う単位を切り出す前段でつまずきます。また、最終的な可否の責任を外部に説明する必要がある業務では、人が判断を引き取る工程を残せるかどうかが導入可否を分けます。
小さく試すなら、直近で担当者ごとに判断が割れた案件を数件持ち寄り、その結論が規定のどの条文に対応するのかを一つずつ突き合わせてみることから。対応づけが書けない案件が多いほど、AI以前に基準の整備が先だという答えが見えてきます。
この事例は2026年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
KDDIアイレット株式会社
クラウド支援サービス「cloudpack」を提供し、AWS・Google Cloud・OCI の構築・移行・運用保守や生成 AI 導入支援サービスを手掛ける企業。Google Cloud の生成 AI を活用した業務支援システムの構築から LLMOps による継続的な精度改善まで一貫した支援を行なう。
株式会社メトロアドエージェンシー
出典・参考情報
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