実施 2024.12 ・ 更新 2026.08.14
回答精度50%から最大99%へ、中小企業向けITサポートのRAGチャットボット
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- チャットボットの回答が的外れになる
- AIが知らないことまで答えてしまう
- 回答精度の検証に半日かかる
どのようなAIの取り組み?
AWS上に構築したRAGで顧客ごとの社内文書に答えるチャットボットを開発し、回答可能な質問への精度を最大99%まで高めたAI取り組み
業種
ITアウトソーシング(IT・通信)
取り組み領域
ITヘルプデスク/問い合わせ対応
使ったAI
RAGチャットボット(Amazon Bedrock/Amazon Kendra)
主な成果
回答可能な質問への回答精度が最大99%
ソフトバンクグループでITソリューション・ITアウトソーシング事業を手がけるPSソリューションズは、中小企業向けITサポートサービス「IT with」のオプションとして、導入先が使っているシステムや機器に特化して答えるAIチャットボットを開発しました。基盤はAWSで、検索にAmazon Kendra、回答生成にAmazon Bedrockを採用しています。本格的な生成AIサービスの内製開発は初めてだったため、技術支援のパートナーとしてクラスメソッドが参加し、2024年12月から2025年2月末までの3カ月間で、API実装、検索環境の構築、そして中心課題である回答精度の改善に取り組みました。検索対象ドキュメントの前処理やプロンプトの見直し、大規模言語モデルのClaude 3.5 Sonnetへの切り替えを重ね、精度検証を自動化する仕組みも整えています。
出典:PSソリューションズ様事例| 顧客の業務に特化し回答するRAGチャットボットサービスを開発。回答精度は最大99%に向上|クラスメソッド 発行元:クラスメソッド
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
IT withのヘルプデスクで標準提供されていたAIチャットボットは、同社がこれまで蓄積したIT管理のノウハウを体系化したデータをもとに答える仕組みで、返せるのはどの企業にも当てはまる一般的な内容にとどまっていました。利用企業からは、自社が実際に導入しているシステムや自社のIT業務に沿って答えてほしいという声が寄せられます。ところが自社の技術検証で得られた回答精度は50%程度で、社内では当初、そのあたりが限界だと受け止められていました。
編集部の見立てでは、ここでの壁は生成AIの賢さではなく、利用者の質問と社内文書のあいだをどう橋渡しするかという設計側の問題だったのではないでしょうか。一般的な回答を返すボットは、答えの幅が狭いぶん外しにくい。対して顧客ごとの文書を相手にするとなれば、話し言葉の質問をそのまま検索に流した時点で必要な一文へ届かず、生成の段階では取り返しがつきません。50%という数字は、AIの限界というより、検証の入口に立った時点の値だったと捉えるほうが自然です。
どうやって、うまくいったのか
検索対象の文書にあらかじめ下処理を施し、検索が効く状態に整えてから生成側へ渡すという順序が、この改善の土台になっています。RAG(外部の文書を検索してAIの回答に使う仕組み)が振るわないとき、原因は回答の言い回しよりも検索で必要な文書を拾えていないことにあり、拾えなかった情報は生成側でどれだけ工夫しても補えません。文書を整えるという地味な手当てを先に置いた判断が、後段のプロンプト調整を意味のある作業へ変えたと考えられます。
ユーザーの質問をそのまま検索にかけず、いったんAmazon Bedrockで要約して検索クエリを組み立て、Amazon Kendraで引いた文書からAmazon Bedrockが回答を生成するという二段構えも効いています。現場から寄せられる問い合わせは前置きや曖昧な指示語を含みがちで、検索語としては素直ではありません。質問を受け取る役と検索する役を分けたロジックは、この落差を吸収する狙いだったのでしょう。あわせてプロンプトを練り直し、大規模言語モデルをClaude 3.5 Sonnetへ引き上げたことで、参照できる文書がない質問には答えを作らないという線引きも回答の設計に組み込まれました。
改善の試行回数を増やす仕組みを開発と並行して用意した点も、この案件を特徴づけています。1回の精度検証には100問程度の質問を用意し、生成された回答をあらかじめ作成した正解データと突き合わせる必要があり、人手なら半日仕事。質問の作成からドキュメントの投入、回答の評価までを自動化するスクリプトは当初のスコープ外でしたが、支援側からの提案で組み込まれました。毎日30分程度の朝会でその日の課題を翌日に持ち越さず片づけ、開発フェーズと検証フェーズにそれぞれ適した担当者を立てる進め方も、3カ月という限られた期間に密度を持たせたはずです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
ドキュメントへの下処理を加えた段階で、当初50%程度だった回答精度は一気に80%以上へ上がり、最終的に回答可能な質問への精度は最大99%に達しました。参照できるドキュメントがない質問を判定する精度も最大87%まで改善し、「検索対象のドキュメントがありません」と明示できるようになった点はサービス品質に直結します。精度検証も1回あたり半日から30分程度へ短縮されました。支援終了後も開発と検証は続き、2025年3月末に顧客の社内ドキュメントを検索対象とする新AIチャットボットがリリースされ、既存顧客からトライアルの申込みが寄せられています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、答えが文書のどこかに必ず書いてある種類の問い合わせです。この事例で検索対象となったのは、ITヘルプデスク関連や人事・総務関連の文書、そして顧客が保有するシステムのマニュアルや業務フローで、いずれも正解が文章として存在する領域でした。参照先が決まっている問い合わせであれば、生成側をいじる前に検索側を整えるだけで精度が伸びる余地があります。
一方で見落とせないのが前処理の手間です。この取り組みでは検索精度を上げるために文書へ下処理を施していますが、顧客ごとにフォーマットも粒度も異なる文書を相手にする場合、その手当てを顧客の数だけ繰り返すことになります。更新が止まった古いマニュアルしか残っていない業務や、担当者がその場の判断で答えている問い合わせも、文書側に答えがない以上この方式では届きません。
試すなら、社内で実際にあった質問を10問ほど選び、既存のチャットボットや検索に投げてみるところから。外した質問について、原因が「そもそも文書がない」のか「文書はあるのに引けていない」のかを分けるだけで、手を入れるべき場所はかなり絞れます。
この事例は2024年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
クラスメソッド株式会社
ChatGPTやAmazon Bedrockなどの各種生成AIサービスの選定からインフラ構築、アプリ開発まで支援を行う企業。RAGシステムの開発実績が豊富で、AWSに関する知識と技術力を強みとする。
PSソリューションズ株式会社
出典・参考情報
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