実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.14
老舗菓子店の詰め合わせ提案を生成AI化、新人教育が1日75分短縮の手応え
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘が新人に伝わらない
- 新人教育のOJTに時間を取られている
- マニュアル化したいが組み合わせが多すぎる
どのようなAIの取り組み?
ベテラン社員の詰め合わせの考え方をデータ化し、生成AIを使った提案支援アプリとして新人教育の負担軽減に取り組んだ事例
業種
菓子製造販売業(製造業)
取り組み領域
店頭接客の提案支援/新人教育
使ったAI
生成AI活用Webアプリ(Gemini・Agent Search)
主な成果
OJT指導時間が1日あたり合計75分ほど短縮された実感(利用者5名時点)
山形県鶴岡市で和洋菓子やパンを製造販売する有限会社木村屋は、店頭でお客様の予算や好みに合わせた菓子の詰め合わせを提案しています。この提案は経験の蓄積に支えられており、入社間もない従業員が身につけるには時間がかかっていました。同社は山形県中小企業パワーアップ補助金に「業務効率化のためのAIを活用した社内知見共有システムの構築」として応募して採択され、Google Cloudを専門とする株式会社G-genに開発を委託します。ベテラン社員へのアンケートで集めた詰め合わせの考え方をデータベース化し、それをデータソースとしてAgent SearchとGeminiを用いたWebアプリケーションを構築。店頭のiPadで価格を設定し、必要に応じて商品を選ぶと、条件に合う商品がAIによって示される仕組みです。開発は2024年9月末ごろに始まり、12月末に構築が完了しています。
出典:有限会社木村屋様 - 導入事例 - 株式会社G-gen(ジージェン) 発行元:株式会社G-gen
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
木村屋が扱う菓子は30種類以上あり、そこにお客様の予算や1箱あたりの個数といった条件が重なります。詰め合わせのノウハウを身につけるにはおよそ5年の経験が必要とされ、慢性的な人手不足のなかで、その習得は経験の浅い従業員にとってプレッシャーになっていました。当初は解決策としてマニュアル作成も検討されましたが、要素を組み合わせると膨大な数になるため現実的ではないと判断されています。
編集部の見立てでは、ここで壁になっていたのは教える時間が足りないことではなく、教えたい中身が「手順」ではなく「そのつどの判断」だったことではないでしょうか。手順であれば書き出せますが、予算と個数と相手の好みが絡む選択には唯一の正解がなく、書き切ろうとするほど条件の掛け算が膨らみます。文書に落ちないから人から人へ渡すしかなく、渡すのに5年かかる。人手不足の現場では、この循環そのものが重荷になります。
どうやって、うまくいったのか
最も効いたのは、ノウハウを規則として言語化させるのではなく、ベテラン社員に「私だったらこのような詰め合わせにする」という完成形を答えてもらい、その回答を集約してデータベース化した点だと考えられます。判断の理由を整理して書き出す作業は当人にも負担が大きく、抜け落ちも起きやすいのに対し、実際に組んだ結果であればアンケートで集められます。全パターンを網羅しようとせず、実例の集合を生成AIのデータソースに据えた割り切りが、マニュアル化では成立しなかった知見の形式化を可能にしたのでしょう。
次に注目したいのは、利用場面から逆算して機能を削ったUI設計です。操作を簡単にする案として音声対応も検討されましたが、接客中に使うことは難しいという理由で見送られています。残ったのは、iPad上で価格を設定し、必要に応じて商品を選ぶという最小限の操作だけ。この「わかりやすくシンプルなUIにする」という方針を店舗の意見を踏まえて詰めていった進め方は、道具が現場で実際に使われるかどうかを左右する部分です。
推進の足場としては、山形県中小企業パワーアップ補助金という外部制度と、開発を担う株式会社G-genとの役割分担が組み合わされています。木村屋側が現場の要件とベテランの知見を提供し、G-genが実装を受け持つ構図で、専門知識のない発注側にも分かるよう細かく説明し、現場の声を反映した改修に素早く対応するという関わり方が取られました。自社に開発機能を持たない中小企業が生成AIを業務に組み込むうえで、この分担のつくり方は再現性のある型といえます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
構築完了から1か月弱の時点で、全社展開前の段階として入社年次の浅い5名が利用しています。従業員からは、ネットショッピングのように身近で親しみやすいUIだという感想が出ており、お客様への詰め合わせ提案が素早くできることや、「こんな詰め合わせの仕方があったんだ」という気づきが得られることに手応えが示されています。定量面では、これまでOJTとして指導していた時間が1人あたり1日15分ほど、5名合計で1日75分ほど短縮されているという実感が語られている段階で、厳密な評価はこれからです。今後は売れ筋商品のデータ把握や販売予測への展開が構想されています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、判断の正解が一つに定まらず、条件の組み合わせで答えが変わる業務です。贈答品の提案に限らず、部材の選び方、プランの組み立て、代替品の提示など、ベテランなら数十秒で答えを出せるのに文章にすると膨大になる領域は、実例を集めて検索させる形と相性がよいはずです。判断そのものを聞き出すのではなく、完成形の答えを一定数集められるかが、実行可能性を見極める最初の分かれ目になります。
一方で、条件が毎回異なり同じ状況が二度と現れない仕事や、提案の前提となる商品・サービスが頻繁に入れ替わる業務では、データの鮮度を保つ手間が効果を上回りかねません。今回のように接客の最中に使う道具であれば、画面の操作が一手増えるだけで使われなくなる可能性もあり、機能を足す判断は慎重にしたいところです。また利用者が数名の段階では効果を数字で示しにくく、社内の合意形成には時間がかかります。
始めるなら、ベテラン数名に同じ条件を渡して「自分ならどう組むか」を書いてもらうところから。回答が割れるほど、そこには文書化されていない判断が眠っています。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社G-gen
Google Cloud 専業インテグレーターであり、Google Cloud(旧称GCP)プレミアパートナー。請求代行、システム構築から運用までを提供し、Google の生成 AI 活用をエンジニアが技術支援するソリューションを展開している。
有限会社木村屋
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