実施 2024.06 ・ 更新 2026.08.14
AI-OCRで鋼材の品質証明書の仕分けを自動化、1日数時間が20分に
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 毎日の紙の仕分けに時間を取られている
- 紙のまま溜まる書類を探すのが手間
- 人手が足りず単純作業が回らない
どのようなAIの取り組み?
AI-OCRと紙の仕分け機を組み合わせ、鋼材の品質を保証する書類(ミルシート)の仕分けを自動化したAI取り組み
業種
鉄鋼建材商社(小売・流通)
取り組み領域
書類管理/品質保証書類の仕分け
使ったAI
AI-OCR(画像・文字認識AI)と紙の仕分け機
主な成果
毎日数時間の仕分けを20分に、精度97%で月約40,000枚を自動化
鉄鋼建材商社の伊藤忠丸紅住商テクノスチール、AI開発の燈、紙の仕分け機を手がけるプリマジェストの三社が、ミルシートと呼ばれる鋼材の品質保証書類の仕分けを自動化するプロジェクトに取り組みました。工程は二段構えで、まずプリマジェストの仕分け機SP3000に紙を通してスキャンし、その画像をもとに燈のAIが一枚ごとの仕分け先データを作成します。作成したデータを機械側へ連携したうえで改めて同じ紙を通すと、指定どおりに複数の配紙先へ振り分けられる仕組みです。読み取った項目とスキャン画像は燈のソフトウェアに保存されるため、仕分けの手間を減らすだけでなく、ミルシートを電子的に管理し、データとして使える状態にすることも狙いに含まれています。三社が共同開発したこの仕分け機は「Millai sorter(ミライソーター)」と名付けられました。
出典:燈・伊藤忠丸紅住商テクノスチール・プリマジェスト、ミルシートの電子化及びAIによる仕分けの自動化を実現 | 燈株式会社のプレスリリース 発行元:燈株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
ミルシートの仕分けは、これまで人が毎日数時間をかけて行う作業でした。量は1ヶ月あたり約40,000枚にのぼり、建設業界全体が人材不足に直面する中で、こうした紙の処理に人手を割き続けることの負担は小さくありません。
ただ、編集部の見立てでは、この作業が長く人の手に残ってきた理由は枚数の多さだけではありません。ミルシートは鋼材の品質を保証する重要な文書であり、行き先を取り違えることも、紙そのものを傷めることも許されない。しかも様式は約20種類あり、どこへ回すかは書面に記載された需要家や特約店、工事名を読んで初めて決まります。つまり「読む」「判断する」「傷めずに動かす」の三つが同時に要求される作業であり、単純作業に見えて機械に任せにくかったところに困りごとの本質があったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
スキャンと振り分けを一度の通紙で片付けず、二度に分けた工程設計が、この自動化の土台になっています。一度目の通紙では画像を取り込むことに徹し、その画像からAIが一枚ごとの仕分け先データを作る。出来上がったデータを機械へ戻し、二度目の通紙で物理的な振り分けを行う。判断する処理と紙を動かす処理を時間的に切り離したこの割り切りが、読み取りに十分な処理時間を確保しつつ、搬送を止めずに済む構成を可能にしたと考えられます。
読み取り自体を、様式の特定と項目の抽出という二段構えにした点も要になっています。約20種類あるひな形の候補から一つを絞り込み、そのうえで需要家・特約店・工事名といった、行き先の判断に必要な文字だけを拾う組み立てです。見た目の似た様式が混在し、スキャン時に微細なズレが生じたり、上下が逆のまま投入されたりする現場条件を前提にすると、まず様式を確定させてから項目を読む順序は、誤読の芽を手前で摘む設計だと読み取れます。数千枚をまとめて扱うために解像度を落としながら、読み取った文字に後処理を加えて精度を補う考え方も、実運用の速度と正確さの折り合いをつけるための工夫でしょう。
紙を傷めずに安定して送る機構を、ハードウェア側の専門領域としてはっきり切り出した役割分担も見逃せません。AIが様式や文字列を特定するには、そもそも高品質な画像が安定して得られることが前提になります。SP3000は税公金の支払い伝票や配送伝票など、金融機関や物流業界での導入を通じて搬送設計の改良が重ねられてきた機械であり、その蓄積がポケット格納までの安定した紙送りを担いました。AI側は導入先の帳票に合わせたチューニングに集中でき、それぞれの得意な領域に責任範囲を寄せる形になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
これまで人が毎日数時間かけていた仕分けは20分に置き換わり、精度97%で1ヶ月あたり約40,000枚の自動仕分けが実現しています。約20種類ある様式の特定は100%近い精度に達し、導入先の要望に合わせたチューニングを経て、1000枚を10分で処理できる状態になりました。スキャン画像と読み取り項目が蓄積されることで、紙のままでは難しかった管理やデータ活用の下地も整っています。三社は、ここで得た知見をより幅広い取引先の省力化へ広げることを目標に掲げています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、扱う紙の様式がある程度決まっていて、行き先や処理の区分が書面に書かれた項目だけで決まる業務です。伝票や証明書、申込書のように、記載された取引先名や案件名を見て振り分けているなら、読み取りと機械的な仕分けを分担させる考え方はそのまま持ち込めます。
逆に、様式が案件ごとにばらばらで統一が難しい場合や、行き先の判断に書面に現れない事情(過去のやり取りや担当者の記憶)が絡む場合は、同じようにはいきません。処理枚数が月に数百枚程度であれば、仕分け機というハードウェアを前提にした構成そのものが割に合わない可能性もあります。その場合でも、読み取りと電子化だけを切り出す形なら検討の余地は残ります。
最初の一歩としては、いま仕分けを担当している人に「どこを見て行き先を決めているか」を聞いてみるのが手早いはずです。見ている箇所が二つ三つに収まるなら、機械に渡せる仕事の輪郭はかなりはっきりします。
この事例は2024年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
燈株式会社
代表取締役CEOは野呂侑希。業種は情報通信、未上場。建設業界を中心に、画像からの3Dモデル作成やDigital BillderシリーズにおけるAI-OCR技術を活用した帳票の自動読み取りなど、画像処理に関する技術を蓄積している。
伊藤忠丸紅住商テクノスチール株式会社
出典・参考情報
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