実施 2025.10 ・ 更新 2026.08.14
生成AIで空き家の老朽危険度を写真判定、森ビルと自治体の実証プロジェクト
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 現地の目視確認に時間を取られている
- 担当者によって判断がばらつく
- AI用の学習データを用意できない
どのようなAIの取り組み?
写真をアップロードするだけで建物の老朽危険度を判定する仕組みを組み立て、自治体の空き家調査を効率化できるかを検証した実証プロジェクト
業種
総合ディベロッパー(不動産)
取り組み領域
自治体の空き家調査・不動産価格査定
使ったAI
Google Cloud Vertex AI(マルチモーダルLLM)
主な成果
大量の教師データなしで短期間にPoCを実現し、目視調査の効率化の可能性を提示
森ビルは、内閣府の調査事業の一環として、長野県茅野市とともに、空き家の状態判定と不動産価格の査定を行うWebアプリケーション、および地域情報を提供するサービスの構築に取り組みました。バックエンドの開発を担ったのはアイレットで、Google CloudのVertex AI上でマルチモーダルLLM(画像も文章もまとめて扱える生成AI)を使い、住居の写真をアップロードすると老朽危険度がスコアとして返る仕組みを構築しています。判定結果は地図上の物件情報と連動する形でアプリ側に戻り、不動産ライブラリやPLATEAU(国が整備する3D都市モデルデータ)といった公的データ、さらに自治体が保有する水道使用量データと組み合わせることで、空き家の抽出や価格査定も自動で行えるようにしました。画面側の開発はアナザーブレインが担当し、自治体職員が地図上で物件を選ぶだけで危険度や価格の目安を確認できる操作画面をつくっています。
出典:建物の老朽危険度を生成 AI で自動判定! Vertex AI を活用した実証プロジェクト|森ビル株式会社様の導入事例 発行元:KDDIアイレット株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
実証の舞台となった自治体では、空き家調査を職員の現地での目視確認に頼っており、工数がかさむうえに評価へ主観が入り、結果がばらつきやすい状態が続いていました。ではAIに任せればよいかというと、従来型の機械学習では数千から数万枚規模のラベル付き教師データが必要で、小さく試すことすら費用と時間の面で難しかったわけです。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は調査件数の多さそのものではなく、「どこを見て危ないと判断するのか」という基準が個々の職員の経験の中にしまわれたままで、外に取り出せていなかった点にあります。しかも教師データを集めるという従来の解決策は、その取り出せていない基準を大量の写真へ翻訳し直す作業にほかならず、入り口の負担が課題の重さを上回ってしまう構図でした。
どうやって、うまくいったのか
判断の根拠を、教師データではなく自然言語の指示に置き換えた設計が起点になっています。事前に学習済みの知識を持つマルチモーダルLLMを使い、「草木が建物を覆っている」「窓ガラスが割れている」といった状態を言葉で指定すれば判定できる形にしたことで、基準づくりの作業が写真の収集から文章の記述へ移りました。開発の過程では、一般的な言い回しよりも建築用語を明示的に指定したほうが正確な結果を得られることが分かっており、現場で使われている語彙こそが判定基準として機能するという発見も含んでいます。
問いの粒度を落として答えを安定させる進め方も、精度を支える柱です。一度に複数の判定を求めるのではなく1問1答の形に分けて実行し、窓が開いている状態を外壁の破損と取り違えないよう条件を足したり、写真の遠近感によって建物が傾いて見えるケースへ個別に対応したりと、誤りのパターンを一つずつ条件として積み上げています。AIの賢さに委ねるのではなく、設問の設計側で答えの揺れを抑えにいく判断です。
さらに、判定結果だけでなくその根拠を文章で返させる設計が、改善を回す仕組みとして効いています。誤判定が起きたときに理由を読めば、どの指示が曖昧だったのかを特定してプロンプトを直せるため、勘に頼らず修正できる。リクエスト制限に備えて並列処理とリトライ制御を組み込み、大量の判定をまとめて自動取得できるようにした点も、検証の回転数を上げるための土台と読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
従来の目視中心の調査と比べ、効率化の可能性を強く示す成果が得られています。写真のアップロードだけで老朽危険度を判定できる仕組みにより、評価の主観性を排して迅速かつ客観的に判定できる可能性が示されました。大量の教師データを準備せずに短期間でPoC(小規模な試験導入)まで到達できたこと自体も、この手法の裏づけになっています。自然言語で判定条件を足せることから、自治体ごとに異なる基準への対応も視野に入り、今後の自治体DXや社会課題解決に向けた活用可能性を検討していく段階にあります。
うちでも使える?
応用しやすいのは、熟練者の判断が「何を見て、どう評価しているか」を言葉で書き下せる業務です。写真や図面といった記録がすでに手元にあり、そこに写る特徴を言語で言い当てられるなら、学習用データを何万枚も揃える前に、指示文を書いて試すところから始められます。判定の理由を文章で返させておけば、外れたときに原因をたどれる点も心強いところ。
一方で、注意しておきたい条件もあります。今回の判定は最終的に自治体職員が地図上で確認する運用と組み合わされており、AIの出力がそのまま処分や課税のような効力を持つわけではありません。判断の誤りが直接不利益につながり、人が後から確認する余地のない業務では、同じ形での応用は慎重に考える必要があります。撮影の角度や写り込みで結果が揺れた事例からも分かるとおり、入力となる写真の質が一定しない現場では、条件を足し込む手間も相応にかかります。
まずは手元にある数枚の写真を前に、ベテランが見ているポイントを一つずつ短い質問文へ置き換えてみるところから。まとめて聞かず、一問ずつ分けて投げてみると、その業務が言葉で表せるものかどうかが見えてきます。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
KDDIアイレット株式会社(アイレット)
クラウド支援サービス「cloudpack」を提供する企業。AWS・Google Cloud・OCI の構築・移行・開発・運用保守や、生成 AI 導入支援サービスを手掛ける。本事例では森ビル株式会社の実証プロジェクトのバックエンド開発を担当した。
森ビル株式会社
出典・参考情報
建物の老朽危険度を生成 AI で自動判定! Vertex AI を活用した実証プロジェクト|森ビル株式会社様の導入事例
発行元:KDDIアイレット株式会社
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