実施 2025.08 ・ 更新 2026.08.14
分散した材料研究データをクラウドに集約、AI解析基盤を築いた国立研究機関の設計
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- データが担当者ごとにバラバラ
- 記録の基準が人によって違う
- 社外と安全にデータを共有したい
どのようなAIの取り組み?
国内に分散していた材料研究データをMicrosoft Azure上のクラウド環境へ集約し、高いセキュリティを担保した統合基盤とAI解析基盤までを整備したAI取り組み
業種
物質・材料科学の研究機関(公共・公益)
取り組み領域
研究データ基盤/材料開発
使ったAI
AI解析基盤・機械学習(Microsoft Azure上に構築)
主な成果
分散した材料データを集約する基盤とAI解析基盤を構築
国内で唯一、物質・材料科学に特化した国立研究開発法人である物質・材料研究機構(NIMS)は、材料開発の効率化・高速化・高度化を狙い、膨大な材料データを統合・解析してAIや機械学習による予測・設計につなげる「材料データプラットフォーム」の構築を進めました。背景には、大学・企業・官が連携する「マテリアルDXプラットフォーム」構想があります。基盤はオンプレミス環境からMicrosoft Azureのクラウド環境へ移し、研究データを管理・共有する仕組みに加えて、材料データベースや計算結果を収集・統合する基盤、そしてAI解析基盤が開発されました。構築を担ったのは入札で受注したSIerの伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)で、研究データを蓄積・共有するRDE、AI機能を備えた解析システムpinax、産学官連携による材料設計学の統合プラットフォームMInt、物質・材料データベースMatNaviに関わっています。
出典:Microsoft Azureを採用した国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 様の事例 | CTC - 伊藤忠テクノソリューションズ 発行元:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
これまでの研究現場では実験装置もデータも分散し、長期にわたる非効率なワークフローを個々の研究者が繰り返さなければ成果にたどり着けない状態が続いていました。新しい材料が市場に出るまでには長い歳月がかかり、航空機材料のように軽量化や耐熱温度の向上、コスト削減、リサイクル性が同時に問われる分野では、要求基準が年々厳しくなるにつれ開発と認証がさらに長期化しています。集めるべきデータは大量にあるものの、小さな塊であちこちに散っている、という状況でした。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は保管場所が分かれていたことそのものではなく、データが生まれた文脈——どんな条件で、何を重要な因子とみなして測ったのか——が個々の研究者の経験の中に留まり、他人が再利用できる形になっていなかった点にあります。文部科学省がデータを独占する傾向を改め、広範な共有ネットワークの構築を推進しているという文脈も、これが計算資源やAIの不足ではなく、共有の作法をどう設計するかという問題であることを示しているのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
誰もが簡単に使えるものを目指さない、と最初に決めた設計方針が効いています。利用にあたっては材料工学や物理学の専門知識を前提とし、便利ツールではなく、使う人がどれだけ頭を動かし深く考えられるかを促す仕組みと構成が選ばれました。想定利用者を論文という成果を求められる研究者に絞り込んだからこそ、画面の分かりやすさより、扱えるデータの粒度や解析の自由度に設計の力を注ぐという優先順位が成り立ちます。
研究者の経験や勘で行われてきた作業を数値に置き換えて標準化する工程を、基盤づくりの中心に据えた点も重要です。感覚的な判断をコンピュータに扱わせるには明確な定義と定量化が要り、同じ言葉でも分野や地域で解釈が割れる以上、統一した基準を先に置かなければ集めたデータは後から使えません。データの背景や文脈を読み解いたうえで基準を決めるという順序が、単なるデータの寄せ集めと蓄積を分けたと考えられます。
発注側とSIerが材料工学を共通言語にして議論する体制も、この規模の基盤では効きやすい形です。CTC側はシステムがどれだけ安定して動くか(ロバスト性)、どれほどの負担がかかるか(オーバーヘッド)といった観点を事前提案として持ち込み、NIMS側は材料の挙動にどの因子が効くのかという見立てを持ち込む。どのデータが重要でどれがそうでないかを両者が同じ言葉で判断できなければ、セキュリティレベルを引き上げるか否かも決められないため、この共通言語は保護の設計にも直結します。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
オンプレミス環境からMicrosoft Azureによるクラウド環境への移行が行われ、研究データを効率的に管理・共有するためのプラットフォームが構築されました。あわせて、高いセキュリティを担保した材料データベースや計算結果を収集・統合する基盤、そしてAI解析基盤が開発されています。削減率のような定量的な数値は公開されていませんが、今後はRDEとpinaxを連携させ、実験データに基づいてAIが材料特性を予測し最適な材料設計を支援する形へ、各システムの機能強化と相互連携を進める構想が示されています。
うちでも使える?
参考にしやすいのは、部門や担当者ごとに測定・検査のデータが散らばり、しかも記録の前提条件が人によって違う組織です。設備や試験の記録を持つ製造業、品質部門、検査を伴うサービス業などは、集約より先に「どんな条件で測った値か」を定義し直すという順序をそのまま持ち込めます。外部と共有する前提に立つなら、重要度に応じて保護の強さを変える判断も同じ流れで設計できます。
一方で、この事例のやり方がそのまま効かない場面もあります。利用者に専門知識を求める設計は、社内の幅広い人に気軽に使ってもらうことを目的とする場合には裏目に出ますし、データの解釈基準を決められる目利きが組織内にいなければ、標準化の工程で手が止まります。業務ドメインを理解した外部パートナーを確保できるかどうかも、実現性を左右します。
まず試すなら、いま使っている記録シートを一種類だけ取り上げ、数値の欄の横に測定条件と単位、判断のしきい値を書き足してみる。定義の空欄がどれだけあるかが見えれば、集約に進むべきか、その前段で止めるべきかの判断材料になります。
この事例は2025年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)
システムインテグレーター(SIer)。材料工学の知見を生かし、NIMSの材料データプラットフォーム構築を支援した。
国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)
出典・参考情報
Microsoft Azureを採用した国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 様の事例 | CTC - 伊藤忠テクノソリューションズ
発行元:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)
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