実施 2023.07 ・ 更新 2026.08.15
JR東海がリニア実験線の車両システムを内製開発、CTC伴走で一部機能の運用開始
プロジェクト期間:2年 〜 3年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- システム改修に費用と時間がかかる
- データが機器の中に閉じて使えない
- 表計算での自動化が特定の人頼み
どのようなAIの取り組み?
外部パートナーと共同チームを組み、超電導リニアの車両運用システムを現場社員自身の手で開発する体制へ切り替えた取り組み
業種
旅客鉄道(運輸・物流)
取り組み領域
車両の状態監視・運用管理システムの内製開発
使ったAI
AI技術の記載なし(クラウド型の内製Webアプリ)
主な成果
状態監視機能の運用を2025年夏に開始
東海旅客鉄道(JR東海)は、超電導リニアの走行試験を行う山梨リニア実験線で、車両運用システム(VOS)の内製開発を進めています。実験線には2013年に車両管理装置が導入されていましたが、集めたデータは装置内に閉じており、バッテリーの電圧や残り容量を見たいときも、走行試験の終了後に抽出して変換・加工する手順が必要でした。そこで2023年7月、JR東海は伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)とアジャイル契約を締結し、CTCの伴走型サービス「build service」を使ってJR東海6名、CTC4名のスクラムチーム(少人数で反復的に開発を進める体制)を編成します。運用保守の経験をもつ社員自身が開発者となり、2週間程度の期間を区切って優先度の高い要件から作り込む進め方に転換しました。2025年夏には、その一部である状態監視機能の運用が実験線で始まっています。
出典:東海旅客鉄道株式会社 様の事例 | CTC - 伊藤忠テクノソリューションズ 発行元:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
出発点にあったのは、車両の状態を把握する作業の大半が現場の手作業に依存し、間接業務が膨らんでいたことです。2013年に導入された車両管理装置は安全性と安定性を重視して作り込まれていたぶん、修正や変更には多大な労力と費用がかかりました。データも装置の中に閉じていたため、リアルタイムの監視はできません。現場では表計算ソフトの自動化機能で可視化やアラーム発報の仕組みを用意していましたが、作った本人がいなければ手が出せない状態になっていました。
困りごとの本質は、作業量の多さそのものよりも、データと「直す権限」が現場の手元になかったことではないでしょうか。見たい値がすぐに見られないことと、仕組みを直せる人が限られることは、別々の問題に見えて根は同じです。さらにリニアは技術開発が進むたびに取得できるデータが変わっていく領域であり、要件を先に固めてから作るやり方とは噛み合いにくい。仕様を決め切れないのは計画の甘さではなく、対象そのものの性質だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
開発者を外部の技術者ではなく、山梨リニア実験線の運用保守を経験した社員や現に担っている社員に割り当てた人選が、この取り組みの土台にあります。何が見たいのか、どの値が異常なのかを判断できる人がそのまま作り手になるため、要望を仕様書に翻訳して渡す工程がまるごと不要になります。表計算ソフトで可視化の仕組みを自作していた経験も、そのまま設計の勘所として持ち込めた。現場と開発の距離をゼロにする配置が、要件のずれを構造的に減らしたと見ています。
技術指導と開発を切り離さず、同じチームの中で同時に走らせた体制も要因のひとつです。JR東海6名とCTC4名で組んだチームには、開発言語のTypeScriptを検索するところから始めたメンバーや、オンラインのコミュニケーションツールに不慣れなメンバーも含まれていました。研修を先に済ませてから開発に入るのではなく、実際のタスクをチケットとして分け合いながら基本を教える形をとったことで、学んだ内容がその日の作業に直結します。本格的なプログラミング経験が少ない組織に伴走型を選んだ判断は、この学習と実装の同時進行を成立させるための前提だったと言えます。
2週間程度で計画と実装を反復し、優先度の高い要件から順に完成させる進め方は、目的や納期を事前に想定しにくい対象への現実的な答えでした。反復のリズムを習慣にするまでの負荷は小さくないものの、区切りごとに動くものが増えるため、積み上げた成果が本人たちの目に見える形で残ります。技術が投入されるたびに前提が変わる環境では、完成度を一度に高めるより、変化に合わせて作り直せる状態を保つほうが有利に働きます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年夏、VOSの一部として状態監視機能の運用が山梨リニア実験線で始まりました。従来は実験線内のネットワークでしか共有できなかった情報を、専用端末があれば任意の場所から確認できるようになり、状況の変化への即応力の向上が見込まれます。人材面では、TypeScriptを調べるところから始めたメンバーが、開発開始から3か月ほどでミーティングの場で自ら手を挙げ、チケットを引き受けるようになりました。事例では、内製化によってデータを業務に使う裾野が広がった点が効果として整理されています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、装置やパッケージの内側にデータが閉じていて、外に出して使うたびに人手の加工が挟まる状態が続いている場合です。加えて、業務の内容を理解している人が社内にいて、その人が開発側に回れる余地があるかどうかが分かれ目になります。今回のように、仕様を先に固めきれないテーマほど、反復して作る進め方の利点が出やすいでしょう。
一方で、安全性や安定性が最優先で、変更のたびに厳格な検証を要する基幹の仕組みは、同じやり方をそのまま当てはめにくい領域です。今回も、既存の車両管理装置を作り替えるのではなく、その外側に新しいシステムを立てる形をとっています。伴走してくれる相手を確保できるか、現場の社員が本来業務と並行して開発の時間を取れるか、という体制面の制約も無視できません。まず確かめたいのは、今どこかの担当者が表計算ソフトで支えている集計や監視の仕組みが、その人が不在でも直せるかどうか。担当者本人に一言聞いてみるところから、判断材料は集まります。
この事例は2023年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)
システム開発、デザイン、品質管理など各分野の専門家が顧客と共同でチームを組み、技術指導を行いながらプロダクト開発を進める伴走型コンサルティングサービス「build service」を提供する企業。
東海旅客鉄道株式会社(JR東海)
出典・参考情報
東海旅客鉄道株式会社 様の事例 | CTC - 伊藤忠テクノソリューションズ
発行元:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)
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