実施 2026.04 ・ 更新 2026.08.15
教師データ不要で写真から空き家の傷み具合を判定、森ビルの生成AI実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 現地確認に人手も時間もかかる
- 担当者によって判断がばらつく
- AIに学習させるデータがない
どのようなAIの取り組み?
建物の外観写真から生成AIが老朽危険度を判定し、空き家対策への有用性を検証した実証プロジェクト
業種
都市開発・街づくり(不動産)
取り組み領域
空き家調査・建物の老朽危険度判定
使ったAI
マルチモーダルLLM(生成AIによる画像判定)/Google Vertex AI
主な成果
大量の教師データなしに老朽危険度の自動判定を実証
森ビルは、内閣府の「先端的サービスの開発・構築及び規制・制度改革に関する調査事業」として、地方自治体と連携した空き家対策の実証プロジェクトに取り組みました。水道使用量などの公的データから空き家を抽出し、外観写真をもとに生成AIが建物の状態を判定、さらに不動産価値の簡易査定までを一つの流れでこなすWebアプリケーションを構築し、その有用性を検証しています。バックエンドとAI部分はKDDIアイレットがGoogle CloudのVertex AIを用いて開発を担当し、マルチモーダルLLM(画像と文章をまとめて扱える大規模言語モデル)を使うことで、大量の教師データを用意せずに写真から老朽危険度を判定する仕組みを組み立てました。フロントエンド開発は株式会社アナザーブレインが担っています。
出典:AI 画像解析による空き家の老朽危険度判定システムで地方創生の支援を目指して|森ビル株式会社様の導入事例 発行元:KDDIアイレット株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
空き家の調査は、調査員が現地に足を運び、建物の傾き・基礎・外壁・屋根・使用状況という5項目を目視で確認する形で行われてきました。工数がかさむうえ評価者によって判断がばらつき、しかも調査自体が概ね5年に一度の頻度にとどまるため、次に見つかったときには老朽化が進んで手遅れになっている例も生まれています。空き家は増えているのに、移住希望者へ紹介できる物件は少ないという不均衡も残されたままでした。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは人手の不足そのものではありません。判定の基準が人ごとに揺れることと、調査の間隔が長すぎることが重なり、集めた調査結果が「どの空き家から手を付けるか」を決める材料として機能しなくなっていた点にあります。さらに、従来型の機械学習で自動化しようとすれば大量の教師データが要り、試すこと自体にコストと時間がかかりました。検証の入口が塞がれていたことが、着手を難しくしていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
大量の教師データを集めてから始める、という前提を外したことが、この取り組みの起点になっています。従来型の機械学習ではなくマルチモーダルLLMを用い、建築用語を明示的にプロンプトへ書き込むことで、写真から基礎や外壁の状態を読み取らせる設計を採りました。学習データの整備という重い初期投資を経ずに検証へ進める構成にした判断が、実証そのものを成立させたと考えられます。
判定結果から根拠へ遡れる設計を要件に据えた点も見逃せません。空き家の危険度判定は、明らかにおかしい結果が一つ出るだけでシステム全体の信用が崩れる性質を持っています。なぜその判定になったのかを説明できる形にしておく、いわゆる責任あるAIの考え方を最初から組み込んだことが、精度の議論を「当たり外れ」から「検証できる仕組み」へと移したのではないでしょうか。
人間とAIの境目を、走りながら決めていく進め方も効いています。撮影ルールを最初から厳密に固めず、いま手元にある写真や撮りやすい方法でまず試し、AIに任せられる範囲を後から広げる。実際、玉石基礎と呼ばれる石の上に柱が立つ古い基礎の判定や、窓の黒い影を壁の穴と誤認識するケース、植物に覆われて屋根の状態が読み取れないケースが現れ、プロンプトの調整と条件式の追加で一つずつ詰めています。フロントエンドとバックエンド・AI部分の担当範囲を切り分け、インターフェースを早期に確定させた分担も、この試行錯誤を止めずに回す土台になりました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本実証を通じて、生成AIによる建物の老朽危険度判定に有用性があることが確認されました。大量の教師データを準備せずに短期間でPoC(概念実証)を完了し、目視調査に付きまとっていた評価の主観性を抑えた、迅速で客観的な判定ができる形まで到達しています。水道使用量などの公的データと連携した空き家の抽出や価格査定の自動化と合わせ、利活用の検討に必要な情報を提供できる状態が整いました。今後の展望としては、ドライブレコーダーの映像やドローン撮影、住民がスマートフォンで撮った写真の活用といった撮影の省力化が挙げられています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、人が現地に出向いて目視でチェックし、その判断が担当者ごとにぶれてしまう業務です。設備や建物の状態確認、点検票のチェック項目のように、見るべき観点を言葉で書き下せるのであれば、その観点をそのままプロンプトに落とし込む形で試せます。学習データを何千枚も集める段階を踏まずに検証へ進めるため、AI活用の経験が浅い組織でも入口に立ちやすいはずです。
反対に、写真だけでは決めきれない要素が残る領域では、そのまま置き換えるのは難しくなります。角度や枚数の制約で写り込まない部分、影や植物のような紛らわしい写り方、人が周辺の状況から補って下していた判断は、条件式や運用ルールで別途埋める必要が出てきます。判定の根拠を説明できなければ使えない業務であれば、その説明可能性を最初の要件に入れておくかどうかが分かれ目になるでしょう。
手始めとしては、いま人が目で見て判断している項目を1つ選び、手元にある写真を数枚、チェック観点を書いた指示文と一緒に生成AIへ渡してみる。人の判定とどこがずれるかを眺めるだけでも、どこまで任せられるかの見当はつきます。
この事例は2026年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
KDDIアイレット株式会社
クラウド支援サービス「cloudpack」を提供し、AWS・Google Cloud・OCI の構築・移行や生成 AI 導入支援などを手がける。本プロジェクトでは Google Cloud の Vertex AI を活用したバックエンド開発と AI 部分を担当し、マルチモーダル LLM による建物の老朽危険度自動判定の仕組みを構築した。
森ビル株式会社
出典・参考情報
AI 画像解析による空き家の老朽危険度判定システムで地方創生の支援を目指して|森ビル株式会社様の導入事例
発行元:KDDIアイレット株式会社
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