実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.14
名古屋市上下水道局、庁内文書を扱う生成AI基盤を419件の質問で検証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 特定の部署に問い合わせが集中している
- 外に出せない社内文書でAIを使いたい
- AIを用意しても社員が使いこなせない
どのようなAIの取り組み?
自庁で管理するAWS環境内に生成AI基盤を構え、庁内文書を参照するRAGの実用性を419件の質問で検証したAI取り組み
業種
上下水道事業(公共・公益事業)
取り組み領域
バックオフィスの問い合わせ対応/庁内文書検索
使ったAI
生成AIとRAG(Amazon Bedrock、Amazon Kendra)
主な成果
419件の質問で実用性を検証し、問い合わせ対応の効率化の可能性を確認
愛知県名古屋市で上下水道事業を担う名古屋市上下水道局は、業務の多様化・複雑化に対応するため、2024年に生成AIの導入検証プロジェクトを開始しました。技術支援を担当したのはクラスメソッドです。入力データが外部へ送信されない形で行政文書を扱えるよう、局が管理するAWS環境の内側にAmazon BedrockとAmazon Kendraを用いたGenU(AWS公式の生成AIアプリケーション)を構築し、庁内文書をAIが参照して回答するRAGの実用性を、経理・労務・給与に関する419件の質問で検証しました。あわせて職員十数名が参加する実践型研修をオンサイトで2度実施し、市民向け説明文書の要約や議事録作成といった日常業務を題材に活用スキルの習得を図っています。
出典:名古屋市上下水道局が実現する生成AI活用基盤。セキュアな環境で広がる自治体DXの可能性|クラスメソッド株式会社 | AWS・生成AI・クラウドの技術支援 発行元:クラスメソッド株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
各課から経理・労務・給与を担う部門へ問い合わせが集まり、対応にあたる職員の負担が重くなっていたこと。これが検証の出発点でした。さらに、行政文書は外部の生成AIサービスに入力すると学習用に保存される可能性があり、情報管理の観点から気軽には持ち込めない状態にありました。
編集部の見立てでは、この二つは別々の困りごとではなく一続きです。問い合わせが集中していたのは答えが存在しないからではなく、規程や過去の取り扱いという形で文書のどこかにはあるのに、それを探し当てられる職員が限られていたからでしょう。しかも、その答えが書かれている文書こそ外部サービスへ出せない行政文書である。負担の正体は業務量の多さそのものより、知識の所在が特定の部門に偏っていた構造にあったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
安全性を利用ルールではなく置き場所で担保した設計が、この取り組みの土台になっています。局が管理するAWS環境の内側にAmazon BedrockとAmazon Kendraを組み合わせた生成AI環境を構え、入力した内容が外部のサーバーへ渡らない構成としたことで、行政文書をそのままAIに参照させるという選択が現実的なものになりました。基盤の上にはAWS公式のアプリケーションであるGenUを据えており、環境づくりに手をかけつつ画面や機能はできあいのものに任せる、という切り分けが読み取れます。
検証の組み立て方も見どころです。問い合わせが集まりやすい経理、労務、給与の領域に的を絞り、419件という数の質問をぶつける進め方は、「使えそう/使えなさそう」という印象論を避け、どの種類の質問で回答が崩れるのかを特定するための材料集めとして機能します。精度の課題はそこで原因分析へ引き取られ、参照させる文書の整備とプロンプトの改善という次の作業に分解されました。うまくいかなかった部分を失敗として閉じず、精度向上の入口として扱う姿勢が設計に表れています。
研修を庁内業務の実物へ寄せたことも、基盤構築と同じ比重で効いていると考えられます。事前に業務の特性を調べ、担当者と内容をすり合わせたうえで、市民向け説明文書の要約や議事録作成といった職員が日常的に手を動かしている作業を演習の題材に据え、指示文(プロンプト)の演習では行政文書特有の表現や形式を持ち込みました。基礎から実践へ段階を踏む構成は、道具を用意することと使い手を育てることを切り離さない考え方の表れでしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
試行利用では、読み込ませたデータから適切に情報を引き出せている、根拠を確認しながら庁内業務を進められる、といった手応えが挙がっています。とくに問い合わせ対応では、これまで担当者が手作業で行っていた資料検索や回答内容の整理を大幅に効率化できることが確認されました。定型文書の作成や報告書の要約でも作業時間の短縮が見込まれ、企画立案では意図せぬ着眼点が得られる可能性も見えています。一方、経理・給与関連の質問には精度面の課題が残り、実際に発生した事例への対応やプロンプトの工夫が改善点として整理されました。研修参加者からも、使い方を学べてよかった、もっと時間をかけて学びたいという声が寄せられています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、答えが文書として社内に存在しているのに、その所在を知る人が一部に偏っている組織です。個人情報や機密を含むため外部サービスへ持ち込めない資料を抱えている場合、自社が管理するクラウド環境の中にAIの実行基盤を置くという発想は、そのまま参考になります。
一方、この事例で経理・給与関連の回答に課題が残ったように、制度の解釈や例外的な運用が絡む問い合わせは、文書を読ませただけでは答えが定まりません。根拠となる文書が最新化されていない、担当者の判断が文書化されないまま口頭で引き継がれている、といった状態であれば、まず整えるべきはAIより文書のほうだと考えたほうがよいでしょう。
小さく始めるなら、直近の問い合わせメールを10件ほど手元に並べ、それぞれの答えが「どの文書の、どのあたりに書いてあるか」を実際にたどってみること。たどり着けない質問がどれだけあるかが、そのまま準備の量を教えてくれます。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
クラスメソッド株式会社
AWS・生成AI・クラウドの技術支援を行う企業。生成AIサービスの選定からインフラ構築、アプリ開発まで支援し、実績5,600社以上。
名古屋市上下水道局
出典・参考情報
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