実施 2025.02 ・ 更新 2026.08.14
大学病院31診療科で生成AIが退院時サマリー下書き、3カ月で約1000時間短縮
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 書類作成に時間を取られている
- まとめ方が担当者ごとにばらつく
- 締め切り直前の事務作業が残業を生む
どのようなAIの取り組み?
電子カルテの診療記録から生成AIが退院時サマリーの下書きを作成し、大学病院の31診療科へ運用が広がったAI取り組み
業種
大学病院(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
診療科の医療文書作成(退院時サマリー)
使ったAI
LLM(大規模言語モデル)による文書の要約・生成
主な成果
運用開始後3カ月の累計短縮時間は約1,000時間、医師の92%が時間短縮・業務改善につながったと回答
藤田医科大学を運営する学校法人藤田学園と、クラウド開発を手がける株式会社FIXERが、退院時サマリーの下書き作成を生成AIに任せるシステムを共同で開発しました。医師が電子カルテ画面のボタンを押すと、患者基本情報や診療記録から必要な内容が抜き出され、数秒で文章の形にまとまります。2025年2月に藤田医科大学病院の6診療科で先行運用が始まり、3月には精神科等の3科を除く入院機能を持つ31診療科へ拡大しました。並行して、別メーカーの電子カルテを使う愛知県内の総合病院でも実証実験が行われ、汎用性が確かめられています。FIXERと藤田学園の100%子会社であるフジタ・イノベーション・キャピタルは2025年5月、全国展開を担う新事業会社「メディカルAIソリューションズ」を立ち上げました。
出典:医師の92%が業務効率化につながったと回答 生成AIを活用した「退院時サマリー作成支援システム」が実用化 ~医療DXへの貢献めざし新事業会社が本格始動~ - 株式会社FIXER 発行元:株式会社FIXER
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
退院時サマリーは、患者が退院したあとも他の医療機関や福祉施設で治療とケアが続けられるように、診断情報や治療経過、看護記録をまとめて引き継ぐ文書です。作成は主治医の手入力で、複数の記録から必要な情報を集め、取捨選択し、要約し、記載内容と誤字脱字まで確認するという工程を、退院が決まってから短時間でこなす必要がありました。1件あたり10〜15分という所要時間に加え、退院のタイミングは選べないため時間外業務が増える一因になり、さらに何を残すかの判断が作成者ごとに異なることで、記載内容の標準化や網羅性にも差が生じていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は入力の手間そのものではなく、カルテのあちこちに散った経過を頭の中で組み立て直す判断の負荷が、最も時間の取れない退院直前に集中する構造にあります。同じ組み立て作業を毎回ゼロから個人が担っていたからこそ、所要時間の問題と品質のばらつきが同じ根から同時に生まれていたと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
医師の作業導線をまったく変えないまま処理を差し込んだ設計が、この仕組みの土台になっています。サマリー生成は電子カルテに表示されたボタンから始まり、できあがった下書きは取り込みボタンでそのままカルテへ戻ります。別のアプリを開く、文章をコピーして貼り直すといった移動が発生しないため、忙しい現場でも使うかどうかを迷う余地が少ない。作業の場所を動かさずに中身だけを置き換えたことが、日常業務への入り込みやすさにつながったと見ています。
もう一つの柱は、AIの生成物を完成品ではなく「下書き」と定義し、最終判断を医師の側に残した役割分担です。生成された文章は自由に修正でき、確認して取り込むという一手間が手順として組み込まれています。文書の責任を持つのは誰かという線を動かさずに済むため、医療文書という慎重さが求められる領域でも導入の議論が進めやすい形になっています。
広げ方の順序も、この取り組みの性格をよく表しています。まず6診療科で先行運用して手応えを確かめ、そのうえで入院機能を持つ31診療科へ広げ、さらに他メーカーの電子カルテを導入する愛知県内の総合病院での実証実験を通じて、特定の環境に依存しない仕組みかどうかを切り分けています。加えて退院時サマリーで固めた型を看護サマリーや診断書へ横に展開する段取りが取られており、一度作った仕組みを別の文書へ流用する前提で設計されていたことがうかがえます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年3月に実施されたアンケート調査では、回答した医師170名のうち92%が時間短縮や業務改善につながったと答え、81%が満足と回答しています。運用開始後3カ月間の累計短縮時間は約1,000時間に及びました。適用範囲の拡大も進んでおり、看護サマリーは5月から現場での運用が始まり、診断書については6月からの運用開始が予定されています。
うちでも使える?
この形が向くのは、出力すべき文書の型がある程度決まっていて、元になる記録が電子的に一か所へ集まっており、最終確認を担う人がはっきりしている業務です。契約や申請にまつわる報告書、引き継ぎ書、点検記録など、毎回ゼロから書き起こしているが実は構成が似ている文書は、同じ考え方が当てはまりやすいでしょう。
一方で難しいのは、元データが紙や個人のメモ、担当者の記憶に散らばっている場合です。この事例で数秒の生成が成り立つのは、電子カルテという形で必要な情報がすでに一つの場所に蓄積されているからで、そこが欠けたまま生成だけを導入しても下書きは薄くなります。別メーカーの電子カルテで実証実験を重ねている点は、裏を返せば既存システムとつなぐ設計にそれなりの手間がかかるということでもあります。まずは自社で作成頻度の高い文書を一つ選び、1件分だけ、書くのに何分かかり、どの記録を見に行ったかを書き出してみると、AIに任せられる範囲と人が判断すべき範囲の境目が見えてきます。
この事例は2025年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社FIXER
クラウド黎明期の2009年に創業したクラウドネイティブカンパニー。Microsoft Azure の正式サービス開始と同時にエンタープライズシステムのクラウド化をプライムとして手掛け、クラウド開発と生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」の実績を持つ。今回、藤田学園と共同で生成AIを用いた「退院時サマリー作成支援システム」を開発し、フジタ・イノベーション・キャピタルと合同で新事業会社「メディカルAIソリューションズ」を設立した。
学校法人藤田学園(藤田医科大学)
出典・参考情報
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