実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.13
すかいらーくが生成AIで接客を補完、ガスト1店舗でタブレット会話を実証実験
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- セルフ化で客との会話が減った
- 待ち時間の体験を良くしたい
- 店の様子を日報にまとめる手間
どのようなAIの取り組み?
生成AIとRAGを組み合わせ、店内タブレット上で来店客と会話しながら商品を提案する仕組みを1店舗で試している実証実験の取り組み
業種
ファミリーレストラン運営(飲食サービス)
取り組み領域
店舗接客/メニュー注文・日報作成
使ったAI
Azure OpenAI Service(生成AI+RAG)
主な成果
1店舗での実証実験段階で、会話目的の再来店が発生
ファミリーレストランなどを展開するすかいらーくグループは、店内のデジタルメニューブック用タブレットを入口に、生成AIが来店客と会話しながら商品を提案する仕組みを構築しました。会話の土台にはAzure OpenAI Serviceを据え、「ガスト」で提供しているメニューのマスターデータをAzure Cosmos DBに格納し、Azure AI Searchで検索させることで、RAG(外部データを検索してAIの回答に使う仕組み)を成立させています。実装された機能は二つで、来店客と会話して商品をすすめる「AIロボ」と、会話などを要約して日報を自動生成する機能です。構想の開始は2023年12月、システム構築の着手は2024年3月、そして2024年9月から「ガスト」秋葉原駅前店の1店舗で実証実験が進められています。
出典:すかいらーくグループが生成 AI で新たな顧客体験を提供、Azure OpenAI Service を活用することで来店客とのていねいな会話を実現 | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
すかいらーくグループは2020年にデジタルメニューブック、2022年にネコ型配膳ロボットを導入し、ITによる店舗運営の効率化を積み重ねてきました。ただしその結果として、来店客と店舗クルーが顔を合わせる場面は少なくなっていきます。効率と利便性が上がるほど接点が細る、という反作用が生じていたわけです。
ここでの困りごとの本質は、接客する人手が足りないことではなく、注文というやり取りに付随して自然に発生していた会話そのものが、効率化の過程で削り落とされてしまった点にあったのではないでしょうか。会話は業務の一部として管理されていなかったぶん、失われても数字には現れません。だからこそ「クルーを増やして元に戻す」という解き方ではなく、削った側と同じ場所、つまり注文用のタブレットの上に別の形の接点を作り直す、という発想に向かったと編集部は見ています。
どうやって、うまくいったのか
会話の情報源を、生成AIモデルが学習済みの一般的な知識と、自社のメニューマスターデータの二つに切り分けた設計が、この仕組みを実店舗に出せる水準に引き上げたと考えられます。メニュー情報はAzure Cosmos DBに置いてAzure AI Searchで引き当てるRAGの構成とし、商品に関する具体的な回答は必ず自社データを経由させています。生成AIに対する漠然とした不安の中身は、多くの場合「商品の説明が事実と違ったらどうするか」という一点に集約されます。その部分だけをデータ参照に固定してしまえば、残る自由な会話は多少ゆらいでも実害が小さい。この線引きが、実店舗での運用を可能にしたのではないでしょうか。
キャラクター設定に相応の手間をかけた判断も、見逃せない要素です。クリオネに似た姿のロボットが「研修中」のバッジを付け、北極から光るタブレットに吸い込まれてガストで働くようになった、というバックストーリーまで用意されています。奇抜さを抑え、少しだけ抜けた雰囲気を残すという方向づけは、UI/UXを担当するチームが握っていました。AIの回答が完璧ではないことを前提に置いたうえで、その不完全さを欠陥ではなく親しみに変換する設計であり、機能の説明では埋められない「話しかけてよい相手なのか」という心理的な障壁を下げる役割を果たしています。
会話ログを毎日確認し、必要に応じてプロンプトを調整していく運用も、成立を支えた柱です。この積み重ねでプロンプトはかなりのトークン数まで膨らみ、現在は内容を整理してよりシンプルな形へ戻す作業が進められています。作り込んでから削るというこの往復は、実際の来店客の入力を見ないと必要な指示が判断できない領域で、机上の設計より現場のログを優先した進め方だと読み取れます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
会話の質については、日本語の微妙なニュアンスを汲み取り、来店客に失礼のない話し方ができる水準にあると評価されています。店頭では、AIロボとの会話を目的に再来店する人が現れ、互いにニックネームで呼び合ったり、クイズやしりとりを楽しむ場面も生まれています。ただし、これが顧客体験の向上に結びついたと結論づけるのは現段階では早い、という判断が示されており、成果の見極めはまだ途上です。一方で、店舗クルーから新たな活用提案が出るようになり、厨房での支援を狙ったキッチンバージョンの開発も始まっています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、客が触れる画面がすでに店内や自社サイトにあり、そこで案内すべき情報が自社のマスターデータで完結している場合です。商品説明や在庫、料金といった「間違えてはいけない部分」がデータベース側に揃っていれば、その参照だけAIに固定し、残りの会話は自由にするという今回の切り分けをそのまま持ち込めます。
逆に、回転率が最優先で滞在時間が短い業態や、会話が注文の流れを止めてしまう場面では、同じ形は噛み合いにくいと考えられます。商品改定が頻繁でマスターデータの更新が追いつかない場合も、参照先が古いままAIだけが饒舌になるという逆効果を招きます。会話ログを毎日読んで手を入れる担当を置けるかどうかも、現実的な分かれ目です。
始めるなら、全店展開ではなく1店舗・1画面から。そして「毎日ログを読む人を1人決められるか」を先に確かめてみてください。ここが決まらないまま作った対話AIは、公開初日が品質のピークになります。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社すかいらーくホールディングス
ファミリーレストランやブッフェレストラン、洋菓子および洋惣菜専門店などを運営するすかいらーくグループ。「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」をはじめとする20を超えるブランドで約3,000店舗を展開し、日本国内のほか台湾、マレーシア、米国にも出店。年間約3.5億人が利用している。2020年にデジタルメニューブック、2022年にネコ型配膳ロボットを導入するなど、ITを活用した取り組みも進めている。
出典・参考情報
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