実施 2025.10 ・ 更新 2026.08.12
東京大学大学院の医学博士課程、手書き解答をAI監視でオンライン試験化
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- オンライン試験の不正が不安
- 手書きの答案をオンライン化できない
- 試験監督と答案回収の手間が重い
どのようなAIの取り組み?
2方向のカメラとAIによる監視を組み合わせ、数式や化学式の手書き解答を含む入学試験をオンラインで実施した取り組み
業種
大学・大学院(教育)
取り組み領域
入学試験の実施・試験監督
使ったAI
AIオンライン試験監視システム「スマート入試」
主な成果
手書き解答を含むオンライン入試を2025年10月に実施
東京大学大学院医学系研究科の医学博士課程が、株式会社サーティファイのオンライン試験監視システム「スマート入試」を用いて、入学試験をオンラインで実施できる環境を整えた事例です。受験者のPCに備わるWebカメラとスマートフォンのカメラという2方向から試験の様子をとらえ、複数のAI技術を組み合わせて監視する構成が採られました。厳格な本人認証と受験環境の制限によって生成AIを悪用した不正を抑え、これまでオンライン化が難しいとされてきた数式や化学式の手書き解答にも対応しています。試験監督者にはリアルタイムで画面を確認する機能とメッセージを送る機能が用意され、受験者を監視したまま解答用紙を回収する手順まで含めて組み立てられました。この仕組みのもと、2025年10月の入学試験がオンラインで実施されています。
出典:東京大学大学院医学系研究科医学博士課程のオンライン入試に「スマート入試」を導入、公正な試験環境を実現 | 株式会社サーティファイのプレスリリース 発行元:株式会社サーティファイ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
この課程は将来の国際的リーダーとなる若手研究者の養成を掲げ、多様な人材を受け入れる環境づくりを求められていました。ところが海外在住者のように来日が難しい受験者へオンラインでの受験機会を用意しようとすると、数式や化学式を手で書かせる出題形式が壁になり、加えて生成AIを使ったカンニングの防止、試験監督者の業務負担、解答用紙を安全に回収する手立てといった懸念が重なっていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は「オンライン化が技術的に難しい」ことそのものではなく、受験機会を広げようとするほど試験の厳格さが揺らぐという、二つの要請の衝突にあったのではないでしょうか。会場に集めるという方式は、本人確認も監視も答案の回収も、場所の力でまとめて担保してくれます。その場所を手放すと、これまで意識せずに済んでいた機能が一つずつ課題として立ち上がる。手書き解答という条件は、その衝突をもっとも先鋭に映し出した部分だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
PCのWebカメラとスマートフォンのカメラという2方向から試験の様子をとらえる構成が、この仕組みの土台になっています。カメラを1台増やすかどうかは些細な違いに見えますが、単一の視点では画面の外で何が起きているかを確認しようがなく、そこに複数のAI技術による監視を重ねても得られる情報は増えません。角度の異なる映像を前提に置いたうえで判定の仕組みを組む、という順序が効いていると考えられます。
生成AIの悪用に対しては、厳格な本人認証と受験環境の制限という組み合わせで臨んでいます。不正らしい振る舞いを後から見つけ出す方向ではなく、そもそも不正な操作が成立しにくい状態を先に作っておく発想であり、抑止に軸足を置いた設計と読めます。生成AIのように出力が自然で痕跡を残しにくい道具が相手であれば、検知の精度を追いかけ続けるより、入口を締める設計のほうが運用として持ちこたえやすいはずです。
手書き解答をそのままオンラインに載せた判断も見逃せません。数式や化学式は、キーボード入力に置き換えた時点で書く行為の中身が変わり、測っている能力までずれてしまいます。解答形式を試験の側で妥協せず、監視と回収の手順のほうを作り替えて条件に合わせにいったところに、この取り組みの性格がよく表れています。監督者がリアルタイムで画面を見ながら受験者へメッセージを送り、監視を続けたまま解答用紙を回収する流れは、会場で監督者が担っていた声かけと答案の受け取りを、オンラインの手順として置き直したものと言えるでしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
この仕組みのもとで2025年10月の入学試験が実施され、2方向のカメラ監視とAIの活用によって、受験者全員が力を発揮できる厳格な試験環境が用意されました。手書き解答のオンライン化により、来日が難しい海外在住の受験者にも安全に受験の機会が届いています。運用面では、リアルタイム監視によって試験監督者の負担が軽くなり、解答用紙の配布や回収といった紙を前提とした業務の負担が大幅に減って、セキュリティを確保した提出プロセスが確立されました。受験機会の拡大と運営側の省力化が、別々の施策ではなく同じ仕組みから同時に生まれている点が、この成果の性格を示しています。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、本人の確認と公正な評価が欠かせない試験、たとえば採用選考の筆記試験や社内の昇進試験、資格の認定試験のような場面です。とりわけ、解答形式を変えたくない事情がある試験ほど、この事例の考え方は参考になります。図や式、手書きの記述を評価対象にしている試験を無理に選択式へ作り替えると、測りたかったものが測れなくなるためです。
一方で、そのまま持ち込むのが難しい条件もあります。この方式はPCとスマートフォンの2台が受験者側で同時に動くことを前提としており、通信環境や機材が人によってばらつく集団では、当日の不具合が公平性の問題に直結しかねません。自室を撮影されることへの抵抗もあり、撮影範囲や録画の扱いをどう決めるかは、技術ではなく運用ルールの側で答えを出す必要があります。実技や対面のやり取りそのものを評価する試験も対象外でしょう。
まず試すなら、自社の試験問題を一問取り出して、受験者の手元まで写る2台構成で解いてもらう小さなリハーサルから。書きにくさや映りの死角は、実際に解答してみないと見えてきません。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社サーティファイ
ビジネス能力・技能に関する認定試験の開発・主催、実施主催試験に対応した対策問題集の開発・販売、オンライン試験サービス「スマート入試」の開発・提供を行う企業。資本金1億円、未上場。
東京大学大学院医学系研究科
出典・参考情報
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