実施 2024.01 ・ 更新 2026.08.17
JALの社内生成AI、間接部門の利用率が実質100%に至ったRAG改善
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内文書を探すのに毎回時間がかかる
- AIを入れたが回答精度が上がらない
- デスクのない現場でもAIを使わせたい
どのようなAIの取り組み?
社内文書を検索してAIに答えさせる仕組みの精度を改善し続け、間接部門のほぼ全社員が日常的に使う生成AIツールを育てたAI取り組み
業種
航空運送業(運輸)
取り組み領域
社内ナレッジ検索・空港業務支援
使ったAI
生成AI(RAGを用いた独自ツール「JAL-AI」)
主な成果
2024年度に間接部門社員の実質100%が利用
日本航空株式会社(JAL)は中期経営計画でDX戦略を掲げ、2023年4月に生成AIのワーキンググループを設置しました。ところが、自社データを参照させるRAG(社内文書を検索してAIの回答に使う仕組み)の精度向上で壁に突き当たり、計画の練り直しを迫られます。2024年1月、生成AIの導入・利活用支援を手がけるアバナード株式会社を新たなパートナーに迎えてプロジェクトを再始動。社内ナレッジの検索・活用、他システムとのAPI連携、議事録の自動生成、整備部門向けの文書検索という4テーマを定め、独自ツール「JAL-AI」の開発を進めました。社内に点在する多様な文書を取り込みながら複数のRAG技術を使い分け、評価と改善を繰り返して実用に足る精度へ引き上げています。利用対象はオフィス勤務者にとどまらず、タブレットを主に使う現場スタッフを含むグループ全従業員に広げられました。
出典:アバナード、JALグループの社内業務を自動化、効率化する独自の生成AIツール「JAL-AI」の開発を支援 | アバナード株式会社のプレスリリース 発行元:アバナード株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
ワーキンググループを立ち上げて外部パートナーとプロジェクトを走らせたものの、自社データを参照させるRAGの精度が思うように上がらず、進め方そのものを見直さざるを得なくなった——出発点にあったのは、この行き詰まりです。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「生成AIを導入できない」ことではなく、長年蓄積してきた社内の規定やマニュアルが、問いを投げれば答えが返ってくる形では引き出せなかったことにあります。一般的な話題なら生成AIは滑らかに答えますが、自社固有の手順や条件を尋ねた瞬間に、根拠のあいまいな回答へ転びかねません。しかも航空の業務は、それらしい回答では用を成さない領域です。精度が中途半端なままなら社員は二度と開かず、ツールは静かに使われなくなる。だからこそ精度の壁が、そのままプロジェクト全体の壁として立ちはだかったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
回答精度を一度きりのチューニングではなく、回し続ける対象として扱った設計が、最も大きく効いたと考えられます。社内に点在する多様な文書を取り込んだうえで、どこに課題があるかを見極めながらさまざまなRAG技術を投入し、評価と改善のPDCAを継続的に回す進め方が採られました。文書は種類ごとに構造も書き方も異なり、精度の崩れ方もそれぞれ違います。「どの文書で、どう外れるか」を突き止める工程を仕組みとして組み込んだからこそ、実用レベルへ届いたのでしょう。
用途を4つのテーマに切り分けた設計も見逃せません。何でも聞ける万能チャットを目指すのではなく、ナレッジ検索、他システムとのAPI連携、議事録の自動生成、整備部門向けの文書検索と、業務の単位で区切っています。この切り分けは、評価の物差しを具体にする働きを持ちます。議事録作成向けの機能追加やドライブ内のファイル高度検索の強化が随時進んだのも、狙う業務がはっきりしていた効果と読めます。
役割分担と利用環境の設計も、普及の下地になっています。アバナードが開発と利活用のコンサルティングで伴走し、JALのビジネス意図を汲み取る形で機能を形にする体制が組まれました。加えて、オフィスの端末を前提にせず、タブレットを使う現場スタッフまで含めたグループ全従業員が触れられる環境として構築したこと。使う人を最初から限定しなかった判断が、ツールを一部門の実験で終わらせなかったと見ています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
「JAL-AI」は2024年度に間接部門の社員が実質100%利用するまで普及し、社内業務の効率化に寄与しています。この基盤を応用した「空港JAL-AI」もリリースされ、チェックインカウンター等での危険物検索、イレギュラー時のアナウンス文章生成、ラウンジ入場条件の検索といったアプリとして使われています。実証実験のアンケートでは、グランドスタッフの90%以上がお客さまへの回答速度とアナウンス作成速度の向上を挙げ、ラウンジスタッフも70%以上が回答速度の向上を評価しました。今後は一つの窓口でさまざまな業務をこなせるAIを目指し、API経由の業務システム連携や社内ポータルの情報収集が予定されています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、規定やマニュアルなど参照すべき文書がすでに文書として存在し、かつ量が多くて探すこと自体が負担になっている職場です。製造業の設備マニュアル、インフラ設備の点検手順、多店舗展開の運用ルールなどは、この事例と課題の形がよく似ています。
一方で、そのまま持ち込みにくい条件もあります。この事例の肝は、AIを入れたことではなく、外れ方を評価して直し続けたところにあり、そこには「その回答が正しいか」を判断できる人の関与が継続的に必要です。判断の根拠が個人の経験の中にしかなく、文書として残っていない業務では、AIに読ませる材料そのものから作ることになり、話は別物になります。現場端末まで含めて全員に配る前提で考えるなら、デバイスや権限の整備も見込んでおく必要があるでしょう。
小さく始めるなら、現場から実際に寄せられる質問を20問ほど集め、既存の社内文書を材料にAIへ答えさせてみるところから。正解と突き合わせて何問外したかを数えれば、自社の文書がAIに読める状態かどうかが、その日のうちに見えてきます。
この事例は2024年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
アバナード株式会社
マイクロソフト ソリューション プロバイダーとして業界をリードする企業。マイクロソフト テクノロジーの専門家として、AI、クラウド、データ分析、サイバーセキュリティ、ERPの分野でソリューションを提供し、世界各国5,000社以上の顧客に利用されている。2000年以来マイクロソフトと緊密なパートナーシップを結び、グローバルSIパートナー オブ ザ イヤーを19回受賞。
日本航空株式会社
出典・参考情報
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